屋台の定番料理〜炒め物

 屋台料理の定番でもある炒め物について書いてみよう。炒め物は、なにもマレーシアに限らず各国に存在する。マレーシアで炒め物は、何々ゴレンと名が付く料理のことである。よく目にする米を使ったナシ・ゴレン、麺を使ったミー・ゴレンといった食べ物は、まさに定番中の定番。その他、海鮮ものを使った、いわゆるおかずの類も多数存在する。今回は、これらの炒め物にスポットをあててみよう。
ナシ・ゴレン
 ナシは米のことで、それを炒めたもの。つまり簡単に言ってしまえば炒飯のことだ。ラクサのようなものと違い、なじみの深い料理であることから、日本人の誰にでも抵抗無く受け入れられやすい料理の一つと言える。味付けの香辛料や具の違いは、マレーならびに中華系の違いなどは確かにあるが、米を食べる料理ということに変わりはない。
 日本の米と違い、アジア諸国の米はさまざまな種類のものが存在するが、大きな特徴の一つには、日本の米は粘り気があるのに対して、こちらはそれが無い。
粘り気がないため、パラッとした仕上がりになるのが特徴で、その食べ口は軽やか。そして実に美味い。いくらでも食べれてしまいそうだ。日本の米だと、粘り気が食感を損ねるようで、このようにはいかない。やはりこういった料理は、こちらの米のほうが美味い。それから当然ながら値段も違う。たいてい1〜2RMぐらいで食べれてしまう。
 ペナン島の食事は結構満足しているが、実はナシ・ゴレンに関しては不満だった。パラッとして軽やかな食感が無いのだ。初日に行った屋台で注文し、レンゲでライスをすくおうとした瞬間のことだ。粘っこいまではいかないが、パラッとした感じがないのである。それは実際に食べてみてもそうであった。日本で食べたものだったら、なかなかのものだっただろうが、やはり過去にマレーシアで食べたものと比べるとイマイチという感は拭えない。他の人も同様の印象を持っていたようで、この店はハズレだなと一様に思った。
 ところ、2日目、3日目と別の場所のホーカーセンターで、ナシ・ゴレンを注文し、食べても初日のときと同様の結果となった。たかが5日ぐらいの滞在で、行った店の数も知れているものの、過去にマレーシアに来ていたときでも、このようなことはなかっただけに、この結果にはちょっと驚いた。
ナシ・ゴレン
ナシ・ゴレン
ちなみに過去食べた中で最高に美味かったナシ・ゴレンは、コタ・キナバルのとあるホーカーセンターの屋台で食べたもの。これは1998年当時の写真だが、コタ・キナバルに来るとかならず立ち寄るところで、マレー人のおばちゃんが一人で切り盛りしている。パラッとした食感で、絶妙な味付けはピカ一だった。それまで油濃い海鮮料理に飽き気味だったのに、締めのナシ・ゴレンは奪い合いになるぐらいだったほどだ。
ナシ・ゴレン
ミー・ゴレン
 これまた定番中の定番。ミーは麺・ヌードルを指す。マレー風の焼きそばという言い方はぴったりであろう。これまた具が多いものや、具がほとんどなくシンプルなものまでさまざま。麺のコシは、私が食べた限りでは、あまりなく柔らかめというのがほとんどだった。
 見た目が日本のソース焼きそばによく似ているが、ソースはドロッとしたものではなく、醤油系のもので、実際食べてみると比較的あっさりした印象(中には日本のそれとほとんど同じようなものもあったが...)。  そして、忘れてはいけないのが、ゴレン系のものを注文したときに、どこからともなく出現する小口切した唐辛子に油付けが添えられた、サンバル・ブラチャンというものがお供として出される。これをお好みで加えて食べるのだが...アタリを引くとかなり辛い。まさにアジアン・テイスト。
サンバル・ブラチャン
サンバル・ブラチャン
 さて、以下の写真を見てもらいたいのだが、片方はコタ・キナバルのホーカーセンターで食べたもの。もう一方がペナンで食べたミー・ゴレン。比べてみると、ペナンで食べたものは、やけにソースたっぷりという感じ。ナシ・ゴレン同様他のホーカーセンターで食べてもこんな感じだった。なんとも妙な感じだ。こちらのほうでは、汁気たっぷりなのが主流なのだろうか。まぁ汁気たっぷりでも、見た目よりもあっさりしているので、食べ口はなかなかイケる。 
コタ・キナバルにて
ペナンにて
ペナンにて
イカン・ゴレン
 ナシ・ゴレンやミー・ゴレンの他にも、いろいろな炒め物を食べたのだが、いかんせん皆食べるのが早くて写真を取り損ねたものが多く、レポートに使用できる写真がとてもすくなく、どうしたものかと困りもの。そういったの中、ちゃんとした形で写真が残っていたのがこの料理。そして特に印象に残ったイカの辛味炒め、イカン・ゴレンを紹介しておくとしよう。
 コラム1でも書いたが、過去のマレーシアのでの食事で良い印象を抱かなかったのが、こういった海鮮モノの炒め物。どれも基本は油濃く甘ったるい味付け。具体的な調理はわからないが、XO醤を使いすぎという感じ。最初のうちはいいが、後で確実に飽きがくる。胃もどこか重たい...こういうものが何品もあると、いくら美味しいミー・ゴレンやナシ・ゴレンを食べても全体的にあまり良くない印象となる。とまぁこのようなイメージが擦りこまれていたのだ。
 ラクサやロティ・チャナイといった料理を食べてご機嫌なところに、誰かがどこかの屋台からこういうものを注文してくると、ちょっと遠慮がちになりかける。しかし、食べてみないことには味はわからないし、ここはペナンということで恐る恐る箸を伸ばす。まるであの味付けを確認するかのように...
 美味い。見た目は今まで食べてきたものに似てはいるものの、油っぽくなく甘さも控えめ。小口切りの唐辛子がちりばめられていることから、辛さもあって全体の味のまとめかたがよい。この甘辛の感じは、四川料理における宮保に似たニュアンスがあるとも感じた。こうなってくるとしめたもの、どんどん箸が伸びる。過去の嫌なイメージは払拭されたことは言うまでも無い。
イカン・ゴレン
イカン・ゴレン