まるでパイ生地のような

 ラクサも無事食べることができたし、あとはロティ・チャナイを食べれば当初の目的は達成できる。そしてしっかり食べてきました。それで、レポート書くために過去のマレーシアの写真なんかを見たりしていてわけだけど、その中の一枚の写真を見たとき少々驚いた。
 クアラルン・プールでもコタ・キナバルでもタミル人の屋台は、見かけたことがなかった。一応最初に行ったクアラルン・プールの原っぱでは、たしかにあったのだけど、そこで食べたのはロティ・テラーというやつ(網目状に生地を鉄板の上にたらして、上からタマゴをからめたもの)。なので、いままでずっと食べたことがないと思っていた。ところが...食べている写真があるではないか。しかもホテルの朝食で...。
1998年のときの写真だが
1998年のときの写真だが
 ご丁寧に綺麗に4等分されたロティ・チャナイを皿にならべている。今この写真を見て、はっきりと思い出した。そうかあれはロティ・チャナイだったのか...。
ロティ・チャナイ
 練りこんだ小麦粉の生地を、伸ばしては折りたたむ行程を繰り返し、鉄板で焼き上げる。出来上がりは何層にも折り込まれたやわらかなパイ生地のような感じ。熟練した技術を要するのは、はたから見ていても感じる。KLやコタ・キナバルでは、なかなかお目にかかれなかったが、ペナンの屋台ではいたるところで普通に食べれる。
 このロティ・チャナイの語源について少々。ペナン関係でいろいろとWebの徘徊をしてたところ、それにまつわる内容が書かれているサイトがあった。それによるとロティとはマレー語で「パン」を意味する(インド料理においてロティがパン系の総称としているので、そこからきているのかな)。さてチャナイだが、これは「種なし」の意味らしい。直訳すれば「種なしパン」。そして、別名をロティ・コソンとも言うのだそうだが、このコソンというのはマレー語で数字の0を指す。種無しだから0か。なるほど。「種なし」というからには、何も入っていない。ということは逆に何か入っているものもあるわけだ。たとえば、私が一番初めに食べたロティ・テラーがまさにそれ。この場合は卵入りのロティということになる。
 ロティ・チャナイは、そのまま食べても美味いが、たいてい好みのカレーをつけて食べる。だから屋台にもさまざまなカレーが用意されている。チキン、マトンといった肉系のものや、ダルや野菜たっぷりのカレー等々。
 さすがに中華系のホーカーだけは、タミルの屋台がなかったのでロティ・チャナイを食べることはできなかったが、それ以外では、探せばかならずやってるところはあった。そういうわけでさっそく注文に行くと、出てきたのは、まだ少女のようなあどけなさがのこる、年は20歳前後ぐらいの女性。どうやらオーナーらしく、一人で切り盛りしているようだった。どんなふうに作るのかなと、脇から作るのを見ていたが、手馴れた手つきで空中で生地を綺麗に伸ばしていくようすは、まぎれもなくプロの仕事だった。たしか1枚90セントぐらい。屋台の中では、最も安い部類に入る。そして出来上がったロティ・チャナイは、まるでパイ生地のようにやわらく弾力に富んで、味わいが格別だった。やわらかな味わいは、それまで刺激のある料理が続いていたのでほっとする。周りの人も、なんだか懐かしい感じがするねと、好印象。このときは、チキン、マトンをを一緒に注文したが、こちらの味わいも良い。味がよくでており、香りよく格別の美味さだった。
ロティ・チャナイ
ロティ・チャナイ
チキン・カリー
マトン・カリー
ムルタバッ
 こちらもロティ・チャナイと同じく人気の高い有名な料理だ。焼き目の付いた厚めの生地の中にいろいろな具が詰まっている。ナイフでカットすると、野菜や肉の具がたんまり。見た目にもボリューム満点。肉が入っているものは、辛めだったりして、これがビールにあったりする。手軽に食べれるスナックといった感じ。さすがにこれをマレーシアで食べるのは初めてだ。
ムルタバッ
ムルタバッ
 上の写真はノンベジタイプのムルタバッ。たしか2〜3RMぐらいだったと思われる。具がたっぷり詰まっているので、2〜3人で結構満足な量だろう。意外にもあっさりしている。生地がとても香ばしく、焼き目のついてるところはパリッとした食感。外側のふちはしっとりやわらかかったりする。辛めなので、ビールの進み具合もはやいときている。
おばちゃんの店
ムルタバッ
ムルタバッ
ベジタブル・マサラ
 もう一方は、ベジタブルタイプ。タミル人のおばちゃんの屋台で注文したものだ。具は野菜しか入っていない。こちらは4RMぐらいだったと記憶している。つけタレとして、具がほとんどないカレーが付いてきた。かすかにニンジンが見えるぐらい。一瞬サンバルかなとか思ったりしたが、グレービーの味わいがまるっきり違う。グレービーのトロッとした感じと味わいから、いわゆるベジタブル・マサラといった趣。  ムルタバッはそのまま食べると、具が野菜だけなのか、とてもあっさりして軽やか。これだけで食べても美味しいが、つけタレのカレーといっしょに食べるとさらにイケる。ロティ・チャナイと同じく、何か少量つけて食べるのがより美味しい感じ。

 ところで、ロティ・チャナイにしてもムルタバッにしても、値段はそれほど高くないが、カレーの類やトッピングされたロティ等となると、値段がグンと上がる。チキンやマトンといったカレーは、おおよそ7〜8RMする。たいてい1つの料理が2〜4RMで食べれることから、かなり高い部類に入る。日本円に計算すればたいしたことないが、こちらの金銭感覚に慣れてくると、結構するなぁと思ってしまったりする。安く上げるならば、そういったものを頼まず、他の料理の残ったソースなどをつけた食べるといったことも、それはそれでいいが、日本で食べるよりは断然安いわけだから、いろいろなものを食べるのをお勧めしたい。なんせ味はさほどたいしたことがなくて、さらに高いピザとか(16RMとかする)に比べれば絶対食べたほうがいいと思うが。
 もう一つ思い出したことがある。大部分の屋台は、料理はせいぜい2〜5品といった、ほとんど片手で数えるぐらいの料理だけの専門屋台なので、屋台にでかでかと料理が書かれているだけなのがほとんど。ところがインド系の屋台では、なんとメニューが存在する。しかもちゃんと印刷されたメニューが。ロティの種類もさまざまで、カレーも多数そんざいするのでメニューが必要になってくるようだ。しかしながら、そこに書かれているものが全部あるわけではない。食べたい料理がなかったりするのはざらである。
 ちょっと残念だったのが、屋台の看板にも堂々と書かれていたドーサは、どの屋台でもないと言われた。あれば食べてみたかっただけに残念で仕方がない。