【インド映画における女性性の表象】シンポジウム備忘録

Event / インド系イベントの話

3月21日の日記のとおり、行ってまいりました、神戸・ポートアイランドでのシンポジウム

インド映画における女性性の表象

(ポートアイランド行ったの、大学時代以来だなあ。
それに、ついゴダイゴの「ポートぉピアぁー♪」CMソングが頭をぐるぐる回る。古い。)

rohini-nithya

正直なところ、御三方(赤井教授、ローヒニ、ニティヤ・メーネン)の話す話題や情報量が多すぎて、この話題の結論は何だっけ?このコメントは誰によるものだったけ?そもそも今何の話題なんだっけ?と頭の中が「?」だらけになるほどで、レポにまとめるのは私には大変むずかしいぃ。

しかもシンポジウムがとっても大掛かりで、イヤホンによる同時通訳(日→英、英→日、と二人通訳さんがいた)。
便利なのではありますが…英語を聞いて、一拍おいて日本語訳を聞いて。。。のようなポーズがあるものではなく、どんどん話が進んでいってしまう、ほんとに情報の洪水状態だったのでした。
ほぼ英語の和訳は正しいと思うのですが、俳優名や映画名の言及があると、通訳通すと何言ってるのか分からないので、なるべくオリジナルの英語での語りを聞いた上で、和訳も聞いて頭整理したかったんですけどね。
イヤホンつけて聞いてたり、英語で直に聞いたほうが分かるなと思うとはずし、でも早口でついていけないからまたイヤホンつけて…ということもやってて、もたついて更に混乱(爆)

ただ、それだけに、今まで他の講演会や映画祭・映画公開初日舞台挨拶等では、絶対に聴くことのないような話題がてんこ盛りで、貴重でございました。

自分が今までネット等で目にしてきた情報の真否を、女優さんお二人の肉声で確認できた部分もあります。

まとめにくいからといって、後日に伸ばしても書けるものではないので、自分の理解を記録しておくことにいたしましょう。備忘録。レポートではないですよ。
思い出したことがあれば、随時追記予定。


男性に較べて短命または活躍する場を限られがちな、インド映画界の女性たち

・インド映画のフォーマットは、ヒーロー映画が多く、圧倒的に男性優位。
・男優に較べて女優がヒロインを張れる期間は半分以下
・監督/ダンスマスターは少ないながらも女性も以前からいるが、スタッフ部門では衣装に若干女性がいる程度。ヘアメイクに至っては、女性が正式に担当することができず、それを違憲と判決が出たのが、何と2014年のこと。(ヘアドレッサーはOKだった)

 ※例として、【ボス その男シヴァージ】(2007年)でラジニの色白メイクを担当したBanuさんが、パーミションなしながら、シャンカル監督×ラジニの強い要望で登用された話。ローヒニがそれを力説。(ローヒニのダーリン・ラグヴァランの最後のラジニとの共演作だったので、そっちについても語ってほしかった☆)
 ※ただし、(映画本編でメイクを女性がした、という)一例であって、Banuはソングシーン限定ながら、1990年代からタミル映画界で活躍していた様子。このインタビューによれば、【ザ・デュオ】でのアイシュのメイクもやってたそうですよ。
 ※ローヒニはもうすぐ、商業映画初監督作品の【Appaavin Meesai】が公開されるということもあり、女性監督は過去に(俳優から監督に転じた女性で)こんな人たちがいた、という例でアパルナー・セーン(【ミスター&ミセス・アイヤル】のタイトルも言ったような?)、スハーシニー(【インディラ】)、レーヴァティ(【フィル・ミーレンゲー/また会いましょう】など)あたりの名前もあげていた。(と思う。) 
(ローヒニはレーヴァティと仲良しだったと思うし、刺激されてたんだろうなあ。)

◎男性優位なインド映画社会ではあるが、女性ならではな利点もある。

・インドは多言語であり、字幕は好まれず、地域ごとにそこの言語で映画が作られ、地域ごとにヒーロー(スター)がいる。
→ご当地スター映画が熱狂的に支持されることから、ご当地のスター男優が他言語映画界に進出するのはかなり困難。
→逆に、女優はそのボーダーを超えて、インド映画界を渡り歩いて活躍することが可能

・ニティヤは母語がマラヤーラム語(ケーララ系)だが育ちはバンガロールでカンナダ語が一番馴染みがあり、タミル語、テルグ語、ヒンディー語もでき、南インド映画界全域で自分自身の声で演技ができて活躍している。歌も歌える。(アカペラ実演あり☆)

※同じ内容でタミル/テルグ映画同時制作(バイリンガル制作)というようなものがよくあるが、その場合、リップシンクが合ってないと観客は納得しない。周りのセットもローカライズされていないと納得しない。
そのため、同じシーンもタミル語版・テルグ語版で撮影し直しで、俳優もタミル語とテルグ語で別々の口パクをして何度も同じ演技をしなければならずハードである。(ニティヤの南のシッダールタくんと共演バイリンガル制作映画を例に。)
・南インド4言語をあやつれるニティヤだが、個人的にはどの言語が好きか、という問いに、「一番キレイだなと思うのはテルグ語(場内大拍手が起きる)、思い入れが一番あるのは育った場所のカンナダ語。」

・ローヒニはテルグ系だがチェンナイ育ちでテルグ語もタミル語も堪能。マラヤーラム語もOK。
声の演技が確かなので、ヒロイン役を外れても、ヒンディー映画界などからやってくる女優がタミル語等をできない場合、ヒロイン役の「声」を吹き替えすることで今も活躍中。

※ここで、ローヒニが(先日京橋フィルムセンターでも上映された)【ザ・デュオ】(Iruvar)でアイシュワリヤー・ラーイの声二役両方を演じたことについて言及。
マニラトナム監督直々のご指名での出演だったこと。まず現代っ子女優・カルパナ役のオファーがあり、テストの末、村娘のプシュパ役もやることになり、演じ分けが大変だった、という話。
声だけの出演といっても、口パク(リップシンク)のタイミングを合わせながらの演技で、この人は他の人が吹き替えていると思わせない自然な演技を心がけている(=逆に、気付かれてしまうようではダメ。)。
時には俳優が演技しているのと同様のアクションをしながら吹き替え録音もしている。
雨の中ずぶ濡れで台詞を言うようなシーンでは、家でシャワーを浴びながら滑舌をしっかりさせて話す練習をしたりする。ぜえぜえ息を切らしながら話すシーンでは、走り回ってからブースで台詞を録音したり。
結構ハードなのである。

・ローヒニはもちろん吹き替え声優だけじゃなく、女優でもやっていますよという例(?)で、2004年の彼女の育児休業からのカムバック作【Virumaandi】(カマルハーサン主演)が紹介されていた。刑務所を取材するジャーナリスト、という役でしたね。

女性が監督をして作品を出す意義、のような話と関連して;

・(ローヒニは社会活動に積極的であるが、)映画にそのようなメッセージを込めて発信していくことが可能であると思っている。
・デリーの女子学生のレイプ事件に関し;
あの事件までも、インドではレイプ事件はたくさんあったし、連日国内で報道がある。
それでも、あのデリーの事件はインパクトがあった。
それまでもレイプ事件に抗議する運動はあったが、フェミニストだけのもので(一般人が抗議するアクションをするようなことはあまりない)あった。
しかし、あの事件を境に、人間全体の闘いになったと感じる。
そういう流れを変えていく役割も、映画が果たせるのではないか。

(ある程度の年数が経過すると使い捨てになってしまう女性映画人が)インド映画界に生き残っていくには、という話の流れで;
・ニティヤが自分の映画界における「スペース」を意思を持って作っていくこと、を連呼、力説していた。

ニティヤの語る「スペース」、そして黒澤明監督の話題;

・質疑応答でローヒニに、黒澤映画も観るんですか?のようなやりとりがあり、
「当たり前よ! 私だけじゃなく、インド映画界、世界中の映画界の者にとってバイブルよ。
もちろん【羅生門】も好きで。。。 三船敏郎とか。。。 でも私が特に印象に残っているのは、タイトル忘れちゃったんだけど、ミフネじゃない主人公が癌になって、若い女の子といろいろあって。。。(その映画の映像についていろいろ語る)」

これは、志村喬主演の【生きる】でしょう。たぶんコメントに出てきた件の映像のシーンはあのラスト直前のブランコ一人乗りのあたりじゃないかと。

きゃー、これは言わずにはいられない!
てなわけで手をあげて質疑させていただいちゃいました。ローヒニが「そう!それそれ!」って顔をしてくれて嬉しかったなあ(笑)

それに加えて、【生きる】の志村さんも、周囲と口を荒げて対立したりせず、自分の持ち場で淡々と自分の生きた証として公園を作っちゃうんだけれども、これってニティヤの言う「スペース」のことと相通じるのではないか?とコメントした。
男性優位の世界で女性映画人としてスペースを作るというのは並大抵のことではないと思うが、周りと対抗しながらということではなくて、淡々と強い意志をもって仕事をこなしていくということかな、と。

ニティヤが「そう!」と言ってその後「スペース」論を熱くまくしたててくれたのですが、圧倒されちゃって、実はあんまり内容覚えてないのだけど。

ニティヤは、口論だとか対立はしないけれど、自分がそうしたいという方向に行くようにさりげなく周囲に対応してるようなことを言ってましたね。そして、(周囲の言いなりになったりせず)映画は選んで出演している、それは元々自分は女優志望ではなかったし、(自分に不本意な映画に出演してまで)どうしても女優でトップに昇りつめたいというような気持ちとかがないからでしょうね、でもそういうことがうまく作用していると自分では感じてる、と。

スペース、そして強い意志。
ローヒニが「総てはyour choiceなのよ」と加勢。

今置かれている環境、これからの環境は結局「私の選択」次第なのよね。強い意志をもって生きていくってことなのね。
映画論というよりも、自分にも当てはまる人生論だなあ…。二人の女優さんにいっぱい励まされちゃった気分です。

シンポジウム終了後。

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ローヒニに、ナショナルアワード(国家映画賞)受賞の主演映画【Stri】DVDにサインいただきました。
せっかくなので、この映画はテルグ映画なことだし(彼女の母語でもある)、テルグ語でもサインしていただきました♪

(でも、読めない…。昨年受けたテルグ語入門講座を復習しなきゃー!)

今日の気分であなたの一番のお気に入りの自分の映画は何ですか?とたずねたら、「ひとつだなんて難しいわよー」と言いながら【Marupadiyum】だと答えてくれました。
そして、ラグヴァランとあなたの共演作品で一番のお気に入りは?とたずねたら、【バーシャ!踊る夕陽のビッグボス】と答えてくれました!
アントニー。マーク・アントニー。きゃー♪♪♪
ラグの奥様だったローヒニも、これが大好きだったんだー!
(でも、共演作品ではナイ)

いやいや、ラグ単体じゃなくて、ラグ様とあなたの共演作品のお気に入りを、と念を押したら、【Kakka】とのことでした。

ちなみに、ニティヤの今日の気分での一番のお気に入りは、数ヶ月前にリリースされたばかりのテルグ映画【Malli Malli Idi Raa Ni Rosu】、とのことでした。

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タミル語でもサインくださいな、とローヒニにお願いしたら、彼女のお名前はもちろん、こっちの名前まで全部タミル語で書いてくれた♪

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自分の名前の綴り方、いろんな人に聞く度に諸説あったんですけど、ローヒニに書いてもらった書き方で今度から書こう。

Romba Santhosham! Nandri!

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