Kesari (ケサリ 21人の勇者たち)

Indian Movies / インド映画の話
ケサリ

21人vs1万人。絶対絶命のシク教徒部隊の、誇りをかけた戦いのお話。2018年以降、出演作が続々と公開されているアクシャイ・クマール主演のインドで伝説となっている1897年の戦いの実写化!【マッドマックス 怒りのデス・ロード】のスタッフも絡んでいる、ということでどんな戦いが繰り広げられるんでしょう!?

2019年8月16日~ 新宿ピカデリー、川崎チネチッタ他、全国公開!

なぜジャージでご挨拶?なアッキーのご挨拶と日本版予告編

Starring Akshay Kumar & Parineeti Chopra
Directed by Anurag Singh
Produced by Hiroo Yash Johar, Aruna Bhatia, Karan Johar, Apoorva Mehta, Sunir Kheterpal
Co-Produced by Amar Butala
Written by Girish Kohli & Anurag Singh

あらすじ

1897年、イギリス領のインド北部(現在のパキスタンとアフガニスタン国境付近)には、辺境部族を警戒する砦が築かれ、英国軍とシク教徒が警備していた。下士官イシャル・シンは、英国人将校の命令を無視して部族の女性を救ったことで、僻地にあるサラガリ砦の司令官を命じられる。そこには実戦経験の乏しいシク教徒20人が配属されていた。部隊を鍛え直すイシャルだが、その頃1万人に及ぶ部族連合が一斉攻撃を企てていた…!

日本公式サイト あらすじより

感想

(有名な史実ということで、ややネタバレです。)

死に様の美学映画。

かっこいい、美しい死に様しかいない21人(+シク教徒兵士じゃないけどもうひとり)なので、人がじゃんじゃん死ぬ悲惨映画の大部分が苦手なわたしでも、とても見やすい映画でした!
ああやっぱり最後にはみんな死んじゃうんだ、でもタダじゃ死なないんだ、相手は何倍死んだんだ?という、よく分からない、自分でもどう感情を説明すればいいのか分からない、謎の爽快感はありました。思ったより怖くなかったし、面白かった!とも言える。

野郎どもの 踊りが入ってるのも、よかったね、ほのぼのして。

アッキーのクライマックス、【マガディーラ】の100人斬りより多くね?
と思いながら見てましたが、史実上21人で百数十人をやっつけたということなので、最後のあれは100人よりは少ないのね、たぶん。

シク教徒側が「インド人(シク教徒)の誇り」をかけて死に向かって戦えば、一方でパシュトゥーン人側(ムスリムの中でも過激派なリーダー)にも彼らなりの誇りがあって、その主義のもと、教義に反した女性や、誇りを汚すものを全て処罰しようとしている。「誇り」がもとで、みんな死んでいる。

それを淡々と描くこと自体は構わないけれど、2019年の今、戦争ができるような憲法改正の危機にさらされている日本で、ただただ「誇り」かっけー!ってな感じでこの映画が到来しちゃうと、これでいいのかな。。。と思わずにはいられない。

ヒンディー映画界は、実話ものを脚色して映画化するのが流行っているようだけど、この映画でシク教徒がかっこいいことは分かりました。で、今のご時世にこれを映画化し、「誇りによる死」を感動巨編(?)にしたてて描くのはインドにおいてもどうなんだ?と率直に思う。(【パドマーワト】も、しかり。)

だって、今でも「誇りを汚されたから自殺」、とか「誇りを汚されたから名誉殺人」とか、まかりとおっているインド(パキスタンも含む)じゃないか。(パキスタン映画【娘よ】なんか、まさに現代でそれが起こっている、女性が苦しんで逃げまくる映画じゃないか…)映画はアートだから、といえばおしまいだけどもね。

それと、すべてのムスリムがあんな過激で野蛮ではない、というところを、もう少し補足して描いてほしかった。

(映画終わった後、ばったり会った昔からのインド映画ともだちとも、この点について語り合いまくっちゃった)

「インド人の誇り」と、何かといって胸をはって堂々といえるインドっていいなあ、すごいなあ、とは思う。日本でそれを言ったら、嘘くさかったり、バッシング案件につながる可能性高いよね。
いつの時代だろうと、誇りで命を捧げたり奪ったりしたかないけど、特に今の内閣のために「日本人として」戦死を肯定なんか、絶対したくない。

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アッキーがターバン巻いてるのを見たのは、私は【Singh Is Kinng】以来? (10年前にSingh is Kinngを観たころ、まだターバンの男性がかっこいいという感覚がなかったけど、【しあわせへのまわり道】でサルダール萌えして以降、今は割と見慣れてカッコいいと思う。) 渋みが増したターバン姿はかっこよかったし、エアー奥さんとしょっちゅう会話してるのかわいいし、殺伐とした主題の映画の中でもほっこりなシーンを自然に演出できる、味わいぶかい俳優さんになったんだなと改めて。

すごく印象深いのは、モスクの修復を手伝った御礼におばあちゃんにアーモンドをもらって、(被差別階級かアウトカースト出身で、今まで虫けら同然の扱いを受けていたところ初めて)人間として扱ってもらったことにフリーズしてしまっていた兵士さん。
カーストというか階級に縛られているのは、ヒンドゥー教徒だけじゃなく、平等をうたうシク教徒に改宗しても(?)、なんだな、とびっくりした。この映画の時代の1800年代終わりの時代に、ヒンドゥーからシクに改宗した人たちがいる、ということなのかな。(ヒンドゥーからキリスト教・仏教に改宗した方たちの話は時々聞くけど、シク教徒については知らないので。。。)シャーム・ベネガルの【ゴアの恋歌】でも、クリスチャンになってさえ階級差別が存在していることをはっきり描いていて、驚いたことをよく覚えているんだけども。

ケサリは薄いけど、読み応えのあるパンフレットが発売されてます。映画の後で読むと、そういうことだったのか!と思うシーンがたくさん出てきて、ありがたいです!(アルカカットさんの文章) あと、アーモンドの件などなど、髙山龍智さんのブログに詳しいです。

それからターバンをとってこれを布として巻け、と自分の誇りを仲間に差し出した兵士さん。(みんな、シンさんという名前で、誰が誰だか分からず、半分以上顔の見分けもつかなかったので、これ以上は、カンベン!)

映画館に観に行けてよかったです。ひっかかる点・もやもやする点を忘れずに、どうすればそれが解決されるのかとか、ただ受け止めるだけではなく一歩深く考えたりしてみる時間を持ったり友だちと語れたりすることを含めて、映画を観た!という実感が大アリだったのがよかったです。こういう映画をただ、面白かったー、だけで終わらせるのも、ね。

ともすると、自尊心や自己肯定感が薄れがちな日本人のひとりとして、こういう誇りの映画をインドは作れるのはやっぱりすごいなあと思いました。いいもの見せていただきました。配給会社さん、ありがとうございます~。拡大上映になると、いいですね!

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で、化粧してたスナイパーって、結局何者?
なんで戦場で化粧してるの?

(2019.8.17 川崎・チネチッタ Screen 7 18:10の回で初鑑賞。)

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