ナトゥ 踊る!ニンジャ伝説 |2000年 日印合作

Indian Movies / インド映画の話
ナトゥ 踊る!ニンジャ伝説 ちらし

ナトゥ 踊る!ニンジャ伝説 ちらし


ナンチャンの日印合作映画プロジェクト、【ナトゥ】の第2弾! 1作目が38分だったのに対し、2作目はその約3倍の長尺。ダンスは3曲→6曲へ。スタジオだけで5日間で撮影→スタジオを飛び出して世界遺産なロケ地での豪華な撮影も含む3週間(インド)の撮影。2作目はウリナリオールスターズ総出演、その上、名優・宍戸錠の忍者姿が灼熱のインドで見られるという、最高にレアなマサラムービー!ドーティ(腰巻)ファンにもきっと、満足していただけるに違いありません。ナンチャン、いつかまたインドで何かやってくれないかな!

「ニンジャ・フォース!!!」

灼熱の南インド、タミルナードゥ州の世界遺産観光地・ママラプラム(マハーバリプラム)で、大真面目に宍戸錠さまが叫び、ナンチャンが必死に特訓を受ける。しかも宍戸錠様は全身を覆う忍者姿(ものすごく、暑そう。)、その忍者衣装は錠さんの自前!!! なぜだ! なぜ、名優・錠さんはわざわざ自前の忍者スーツを持って、とんでもなく熱いインドに来て「ニンジャ・フォース!」と叫んでいるんだ!

2000年末の公開後何年か経ち、この映画について考えると、宍戸錠さまの忍者姿が真っ先に頭に浮かんでくるほどになりました。公開当時に観に行った時は、自分が初めて旅行したばかりのインド・タミルナードゥが舞台だったんで(しかもその初旅行の2日目に、このナトゥ撮影初日ロケに遭遇したので、それがどう映っているのかをまず観たかったんですよ)その風景に感動し、ナンチャンのインド映画へのリスペクトに感謝し、単純に楽しく鑑賞して、錠さんのことは後回し(?)だったんですが。

それが何年か経って見直してから、俄然「ニンジャ・フォース!」の彼の存在が気になりだし、2005年公開の【花と蛇2】、杉本彩の相手役の錠さんが「長い俳優人生で初めて前張りをした」と語ったものだから、つい劇場に観に行ってしまった程度には、宍戸錠さんが好きです。

これを書いてる2020年、86歳で錠さんが天に召されました。【ナトゥ 踊る!ニンジャ伝説 】が彼のキャリアの中では290作目(メイキングで錠さん本人がそう語っていた)、どんな位置づけだったのかは分かりませんが、ナトゥに錠さんがいたおかげで、バラエティ番組色の強い本作に締まりが出てよかったな、としみじみ思います。
66歳の時、何でわざわざ、な要素がいっぱいのナトゥに出演したのか、出てどうだったのか、インドはどうだったのか、インタビューはないのか!読みたい!日本テレビさん、あったら蔵出ししてください!お願いします!

ナトゥ2作目の、見どころや1作目との違い

【見どころ、興味ぶかい点】

●私が2002年~2006年頃、インドムービーダンスを習っていた師匠、ニラ&バラが振付&出演している。バラは前作【ナトゥ】でシヴァシャンカルのアシスタントダンスマスターとして従事。ナトゥでの仕事を買われ、日本に招聘され、ニラと共に南々見組に加入。2作目のナトゥで、初ダンスマスターに。
●当時、セカンド・ヒロインや脇役ながらタミル映画に多数出演中だった、Lavanya(ラーヴァンヤー)が、実はこの映画でも脇役出演。日本では、彼女が出演した【パダヤッパ いつでも俺はマジだぜ】(1999年)がナトゥよりも後に公開だったので、全く日本で知名度なかったのは惜しい。 ラーヴァンヤーはタミル映画では悪女を演じることはほぼなかったので、このナトゥではミステリアスな使用人を演じていたところも面白かった!
●日本の名優宍戸錠が、わざわざクソ暑いインド、しかもマハーバリブラムの世界遺産(海岸寺院&バターボール)で暑苦しいニンジャの格好をして熱演している
(彼をそこまで駆り立てたものは、なんだったんだ!)
●本作が映画デビュー作だった、ネハ(ネハー)・ドゥピア。後年はセクシー女優系に突き進んだ感がありますが、ナトゥでは実に初々しい。2019年に日本公開された、【ヒンディー・ミディアム】にもハイソな家庭の奥さま役として出演してましたね。
●ナンちゃんの相棒役は、やはり当時いろんなタミル映画に出まくり、ラジニやヴィジャイとももちろん共演していたDhamu(ダーム)。 ダームの出ている他の映画【バーシャ!踊る夕陽のビッグボス】(1995年)が日本公開されたのは、ラーヴァンヤーと同様、ナトゥの後の2001年だったのは惜しい!
メイキングビデオを見ると、ナンチャンたち日本人は台詞を日本語で言い、ダームはタミル語で言っていた(日本公開版では日本語に吹き替え)のが興味深い。パンフなどを読むと、撮影現場ではタミル語、ヒンディー語、英語、(「アジア交流・友好」をテーマに結成された南々見組らしく、メンバーの出身地である)韓国語、北京語、日本語が飛び交っていたそう。
どうやって意思の疎通を図っていたんでしょう。。。

【1作目との違い】

●1作目はオール・タミル語吹替えで日本公開、2作目は歌以外オール・日本語吹替えで日本公開。
●1作目はオール・インド映画スタッフの現場にナンチャンとケディの二人だけが乗り込んでの撮影のため、仕上がりもインド映画そのもの。
2作目はナンチャンの希望もあってか、日本人スタッフがたくさん投入され、日本ロケもあり。2作目の方がロケ期間が長く、世界遺産の前でアクションシーンなど、斬新な試みも見られる。ウリナリオールスターズ総出演の勢いのため、インド映画っぽさは薄まっているが、逆に日本とインドのコラボにチャレンジという点では面白い。ダンスも6曲で盛りだくさん!

インド映画っぽさ、というかインド映画ってどういうもの?ということを味わうのであれば、1作目のナトゥの方が圧倒的に面白いです。でも2作目の踊る!ニンジャ伝説の方は、ナンチャンが1作目の体験を経てエンタテイメントの可能性を発展させようという世界観が伝わってきて清々しいんですよね。それが成功しているかどうかは別として。
そういうのを感じられるだけで、幸せな気分を運んでくれる、というか。

ナンチャンが日本で多忙なのに3週間インドでのスケジュールを空けて取り組んでいることもすごいのだけど、その結果、いろいろ落ち着いて(現場はバタバタしていたでしょうが、1作目に比べて)ナンチャンのインド服のバリエーションだったり、スタジオを離れて世界遺産前での演技だったり、ステキな一面もたくさんある。

ナンチャンのドーティ姿

ナンチャンが白いシャツ・白いドーティ(腰巻)というタミル男性の正装で、ママラプラムの海岸寺院前で、ドーティをめくってヒロインのネハをリフトするところなど、背景きれいだしかわいい!(3曲目ダンス「あいのうた」)
ナンチャンはドーティをめくってパンツが見えないか気にしてて、その上で長身のネハを抱き上げるのに苦労してNGを何度も出しているところがメイキングビデオに出てました。

ドーティをめくる(気合入れたりする際にまくって膝上の丈にもってくる仕草)タミル映画ならよくあるけれど、それを日本人が挑戦するというのはなかなか難しいんだなと、ナンチャンの様子を見て改めて分かりました。

あと、やっぱり何と言っても、宍戸錠でしょ、宍戸錠が世界遺産前でニンジャ・フォース!
こんなことを発想したスタッフの方、すごい。マサラだよマサラ。

映画公式ムック

ナトゥ踊る!ニンジャ伝説フォトストーリー&メイキングBOOK

メイキング本が、日本語で読める、インド映画の資料としてヨイです。表紙下部に、忍者姿の宍戸錠もいます!!!(←それを見せたくて、画像を大きく載せましたw)
メイキング本をめくっていたら、ロケ地が結構きちんと記されてる。
(インドに行ったら、行こうと思えばこの映画のロケ地めぐりができるということである)

日本で出版された他のインド映画解説本ではまずお目にかかれないのが、「SONG!& DANCE!映画の系譜」という2ページのコーナー。インド編、アメリカ・イギリス編、ニッポン編として概要が紹介されている。エノケンや美空ひばり、クレージー・キャッツなどの日本映画タイトルがぎっしり紹介されています。それがインド映画と一緒に並んでいる、って素敵ですなあ。

撮影時のランチの写真とか載ってて、
ワダ、イドゥリ、チャトニとか、ちゃーんと現地南インド仕様な食べ物が写っているんである。
じゅる、うまそう…。
ロケは3週間続いたと聞いているけど、じゃあナンチャンたちは、3週間、毎日この素敵な南インドごはんを食べてたんですね?
いいなあ。(その後、南インド料理ファンになった日本人スタッフはいないのかな???)
ニラ&バラの撮影時のインタビューも載ってる。インド映画は普通こんなふうに撮影する、というようなコメント群はかなり興味深い。

(惜しむらくは、宍戸錠のインタビューが載ってないことだ。
なぜ、こんな映画に出演したのか。ニンジャの格好をしたかったのか、インドに行ってみたかったのか…)

初インド旅行で、ナトゥのロケを目撃した体験記

2000年8月27日、私の初インド旅行(チェンナイ旅行)2日目の、お昼前の出来事。

ガイド・Aさんが唐突に、
「ミーナさんが今日はチェンナイでロケをしているようです。行きますか?」
ミーナちゃんだって!? 行きます行きます行きますよ~!

バスは、お屋敷の裏手のような所で止まった。
「私の知り合いがいます。見学して大丈夫です。」とAさん。

お屋敷といっても、裏手は廃墟みたいな暗さ。
通路で舞台小道具らしきものを作っている人がいたりする。

外に出ると、おお!【超アジア通】で小林聡美ちゃんが遭遇したような、石炭?の入ったアイロンで衣装をアイロンがけしている人とか、ミシンをかけている人とか。

衣装作りのバス

これが映画撮影現場か…とドキドキしてきた。

撮影クレーン!

で、ミーナもいるんだよね?キャー。

しばらくすると、何故か怒った形相の人が現れた。
「関係者じゃないのに勝手に入るな!」
アレ?Aさんの知り合いの口利きでここに入ったのではないの?
入場許可をもらっているのに、それが周知されてなかったのかな?

・・・結局一行は、追い出されました。
しかも、この現場、なんだかミーナの映画じゃないらしいよ。

???

敷地外に出て、塀の外からさっき階段を降りてきたお屋敷正面を見ると、なんか日本人らしき人が歩いている。

よくよく見ると、たくさんいる。

今まで、チェンナイの道中で全くまだ日本人とすれ違ったりしていなかったので、なんか不思議な気分。

ナンチャンが出た【ナトゥ】パート2の撮影ならしい、と情報。しかもこの日が、この映画のクランクインだったそうです。

日本とインドのスタッフの仕事の仕方、考え方の相違などにより、準備段階から結構難航していたそうです。この日の撮影初日も、日本人、インド人ともに少しピリピリしたムードでした。
(インド映画撮影現場を見たのがこれが初めてでしたが、後日他のインド映画の撮影現場をいくつか見学した時の様子と比較して考えても、ピリピリしていたと思います。)

映画スタッフの日本人の一人が、「普通の映画なら少し見学したって構わないんですが、こんな状態なんで、ごめんなさいね。外からなら大丈夫です。」と説明してくれました。

日印のスタッフはそれぞれ、英語表記と日本語表記が並記された名札をつけていました。その名札が、親近感が湧いて相手に呼びけてみたくなるようなかわいらしいレイアウト。
これ一つをとってみても、日印のスタッフの意志疎通のために、現場でいろいろ工夫していることが伝わってきた。(写真を撮れなかったのは残念。)

タミル映画じゃないけど、有名人が出てる映画には違いない!せっかくだからナンチャンを見たいね!と同行の皆で背伸びして、塀ごしに中を覗いた。
ナンチャンはこのときは出演場面ではなかったよう。
「天山だよ!」天野さんがお屋敷の階段上に見えた。
(といっても、そのころ私はテレビを全く見てなかったし、「ウリナリ」の番組も知らなかったので、誰が誰だか、さっぱり分からなかったのですが…)

塀の上から撮影見学

↓↓↓ 拡大!!! おお、写真撮ったときは気付いてなかったけど、天山演じるザキールの父親・ランビア役のラジーヴが見えているぞ(映画に出てた服の色で判別、ですが)

しかし、一向にナンチャンが登場する気配はなく、撮影シーンに大きな動きもなく、長時間見てても退屈しそうな雰囲気。暑かったので、へばったという方が正しいかも?
根を上げて私たちはここをおいとましました。

旅行を終えて日本に帰国後、ナトゥ撮影隊がその後ママラプラムにも遠征して、タミルの新聞などでも大きく取り上げられたのを知ったり、当時ママラプラムに住んでいた日本人&タミル人のご夫婦が撮影隊たちをアテンドした体験談がWEBに出ているのを見かけました。

「ナトゥ踊る!ニンジャ伝説」は公開初日に、そのインド旅行で同行した方と観に行きました。自分が目の当たりにしたチェンナイや、
マハーバリブラムの風景がふんだんに織り込まれていて、グッときました。

完成試写会時写真。ネハも来日してたのね。
(シネマトピックス記事より)

●●●

馬車がいる!

ロケ地で現物を見たとき、あまりに原色ぎらぎらな赤の馬車で、「大きなおもちゃみたい」と実は思った馬車、ナトゥで実際に使われてました!ナンチャンもネハーも乗ってたよ。

作品情報

監督:大森一樹
監督補:ナンダクマール
助監督:中村隆彦
音楽:シルビー/山下康介
美術:ゴビカーント
アクションマスター:ホース・バブー
スタント指導:山田一善
ダンスマスター:ニラ&バラ
主題歌:ブランニュービスケッツ[partner “s”]
配給:日本ヘラルド映画

出演
南々見狂也:ナトゥ
ミーナ:ネハ・ドゥピア
ザキール:天山
ラジーヴ:ランビア
ケディ:ケディ
ダーム:ナトゥの相棒 アジャイ
モーハン・ラージ:カーン
ラーヴァンヤー:ラタ
宍戸錠:サイゾー
シンシア・ラスター:キョウコ
ビビアン・スー:ペンキ屋主人
ジニー・リー、ユニー・ハン:カフェ店員
ウリナリ・オールスターズ

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