【Nerkonda Paarvai】ネールコンダ・パールヴァイ(2019, Tamil)

【Nerkonda Paarvai】ネールコンダ・パールヴァイ(2019, Tamil)
Nerkonda Paarvai DVDジャケット

アジットクマールが、シヴァー監督と【Vedhalam】【Vivegam】【Viswasam】と3作続けてコッテコテのマサラムービーを送り出したその次に撮った映画は、アミターブ・バッチャンが演じた【PINK】のタミルリメイク。
ヒンディー映画の、しかも重いテーマでマサラじゃない映画のリメイクかあ、と腰が引けかけてたところ思い切って見てみたら、すごく面白かったんです。 で観終わった後にGoogle検索の旅に出たら、何と、アジットが自分からこのリメイクを望んで、当初リメイクを嫌がっていた監督を説得して作っちゃった、という。
だからかあ、「とことんクソ重い映画になるかといえば大間違いだぜ、俺がやるんだからな!だから見ろ。そして社会について考えろ。」というアジットの声が聞こえてきそうな熱さと勢い。
漢気・心意気と、志がめっぽう高いアツい映画。

‘No means no’.
「彼女がNoと言ったのなら、それはNoという意味だ」

【あらすじ】
3人の女性が男性グループに食事・2次会に誘われ、レイプされそうになって防衛のために男性の1人を負傷させてしまいます。後日、富裕層の男性側に「殺人未遂・恐喝」の罪状で訴えられ、弁護士演じるアジットは3人の弁護を引き受けることになり…
アジットは娘たちの「正当防衛」を法廷で認めさせ、「無罪」を勝ち取れるのか。

プロデューサーが、ボニー・カプール。シュリデヴィの旦那様。おそらくタミル映画は初制作。シュリデヴィは晩年、【English Vinglish】(マダム・イン・ニューヨークのタミル語吹替版)で、ヒンディー版でアミターブ・バッチャン演じた役をアジットが演じたため、久々にタミル映画のスターと共演しました。(アジット出演は、シュリデヴィ直々の指名だったとのこと。その次に出演したのが、ヴィジャイの【Puli】だったので、シュリデヴィは、ラジニカーント&カマルハーサンの次の世代のタミル映画界2大スーパースターと共演した、ということになります。) その折に、旦那様のプロデュース作にアジットが出てくれたら!と言っていたそうで、ボニー・カプールは「妻の夢のひとつを叶えることができた」と本作公開の際にコメントしています。

ボニー・カプールのインタビュー(13th August 2019,New Indian Express)によると、タミル出身のシュリデヴィが【PINK】を見て、タミルでもこのリメイクが作られるといいな、アジットが演じたらいいのに、とまで言っていて、アジットの方からこのリメイクを作りたいと申し出があったので嬉しかった、と。
(もしシュリデヴィが生きてたら、この映画にも、きっとゲスト出演位はしていたんだろうなあ…)

特別出演のヴィディヤー・バーラン。彼女が出演してると認識なしに観てたので出てきてびっくり。何だかアジットとのペアがとても素敵で、二人で写真を撮りまくる曲が可愛すぎたのです。

彼女のインタビューを見つけて読んでみたところ、ヴィディヤー・バーランも、実はリメイク嫌いで、普段なら出演承諾しないところ、ボニー・カプールがシュリデヴィの夢をしょって口説きに来たことが決め手となり、そして【PINK】のような主題であれば、やる意義があると思って出演したのだとか。

H.ヴィノード監督のインタビューも読みました。

当初【PINK】のリメイクをやりたいとは毛頭思っていず、アジットの強い願い(+シュリデヴィ)だったから。【PINK】を見てみて、自分が書く脚本とあまりに違っていて、どう取り組んだらいいか分かりかね、何度も何度も見直した。するとある日、自分の妻に対する見方が変わっていたことに気付いた、そして女性全体に対する視点が変わっていた、と。

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あるフェスティバルでのステージから始まり。武富士ダンサーズ(古い。)みたいないでたちの女の子たちが歌い踊る。センターを務めているのはカルキ・ケクラン(特別出演、タミル映画初出演! かっこいいね~。)、本作の3人のヒロインのうち1人はこのダンサーズとして出演。

舞台終了後、旧友の男の子に声をかけられ、事件は起こる。

アジットクマールは不審者なおじさんとして登場、でも実は実績のある弁護士で、とある過去で精神を病み、うつ病の治療中。 しかし、裁判が始まる前に、敵方の手下連中に公園で襲われると、おいおい【Vedhalam】かよ!強すぎるアジットおじさんに変身・タミルパワー大爆発。(いよー待ってました!)
その後、敵陣に乗り込み、決着は法廷でつけろ!と啖呵を切るアジット。
ぎょは~!かっこいい。かっこよすぎる。パチパチパチ。

そして後半はスリリングな法廷劇。

映画の中で、ごたくを並べまくって、拡大解釈しまくって被告の女性を売女扱いして法廷で非難する、原告側弁護士団。(権力のある富裕層なので、雇った弁護士は口が立つし、警察には内通者がいるし、証言者なども買収済み)
もう、とんでもなく意地悪すぎて、その追及を聞いていられないというかしんどいったらありゃしない。
女性警官も、自分と同性の、レイプされた女性(警察にも何度も相談に来ていた)に対してこうも意地悪なのかい、般若の顔で怖すぎる。
(女性警官たちは、男性社会でいじめられて自分たちも意地悪になっちゃったんだろうか。。。と日本の与党女性政治家の例を思い出しながら考える。この意地悪さは、有力者の原告側に脅されたり買収されて意地悪、というとは違う気がする。)

久しぶりにあった男友達たちが食事に誘ってきたからついていった、というのを、そんなことをするからあんたたちが悪い、2次会まで行ったんだからやるつもりだったんでしょ、扱いなのだ。悪いのは襲った男どもの方だろうが。胸糞悪い追及が延々と続く。

タミルナードゥ州では、「良家の女性は決してお酒を飲まない」という伝統が北インドに比べると今でもまだまだ強いようです。(ヒンディー映画では、今どきのハイソサエティの女性は、パーティでワインなども口にする描写がありますよね) この映画ではこの辺もネチネチ法廷で言われ続けます。そんなこと語っててこのグローバル社会の時代に、恥ずかしくないのか?と思う位。

そして3人の女の子のうち、1人の父親は娘を恥とし、法廷後に落ち込んでいる娘に「家には戻ってくるな」とまで言う。実の娘より家の名誉。ひどい。(3人の女優さんたち、初見ですが皆素晴らしかった。見ていて一緒にどんどん辛くなった…)

女性の尊厳どころか人間の尊厳までも否定する勢いの相手方を、被告側の弁護士(精神の病で治療中)のアジットが何と言って反撃するのか。
もう、アジットのようなドスを効かせられるスーパースターが発する言葉のひとつひとつに、励まされまくりなのでした。

‘No means no’.

#MeToo案件です、タイムリーです。 日本での伊藤詩織さんの問題とも被りまくってます。2019年は、夏にアジットが本作【Nerkonda Paarvai】、秋にライバルのヴィジャイが【Bigil】で、共に女性の権利や尊厳を訴える主題の映画を公開。さすがの二人、というか、何とも感慨ぶかいものがあります。

見るの、しんどいですが、傑作です。
見た後に、「Nerkonda Paarvai」とはどういう意味か、しみじみ考えちゃいます。事象を歪曲することなく解釈することなのか、(あれこれ悪く解釈する第三者の言い分を聞く前に)当事者の彼女達をまず見て話しを聞け、ということなのか。きっと複数の意味なんでしょうね。

監督も話していますが、ラジニやヴィジャイ、アジットのような、ファンをたくさん抱えた大スターがやるからこその意義がある。

映画が出た後も、インドではレイプ事件(しかも大抵がその後に惨殺されてしまうことが多い…)の報道が後を絶たないですが、映画界でこういった主張がもっと増えていけば、少しは社会は変わっていくのかも。少なくともアジットのファンやこの映画を観た人の見方は変わる。そのアクションこそが重要ですね。

天晴、アジットクマール!

作品データ

Nerkonda Paarvai
நேர்கொண்ட பார்வை
(意味:ストレートな視点・見解、直に見ること)
2019年8月8日インド公開

監督:H.ヴィノード
音楽:ユヴァン・シャンカル・ラージャー
出演:アジットクマール、シュラッダー・スリーナート、アビラーミー・ヴェンカターチャラム、アンドレア・タリアン、アルジュン チダンバラム、アディク・ラヴィチャンドラン、アシュウィーン・ラーオ、スジート・シャンカル、デリー・ガネーシュ
ゲスト出演:ヴィディヤー・バーラン、カルキ・ケクラン

【英語クレジット】
Starring: Ajith Kumar, Shraddha Srinath, Abhirami Venkatachalam, Andrea Tariang, Arjun Chidambaram, Adhik Ravichandran, Ashwin Rao, Sujith Shankar, Rangaraj Pandey, Delhi Ganesh, Jeya Prakash, D. Ramachandran, Dinesh P Nair, Kodhanda Raman, Kalpana Sri, Kumara Gurubharan & Mai.Pa. Narayanan
Guest Appearance: Vidya Balan & Kalki Koechlin
Director: H. Vinoth
Produced by Boney Kapoor
DOP: Nirav Shah
Music Director: Yuvan Shankar Raja
Art Director: K. Kadhir
Editor: Gokul Chandran
Stunts: Dhilip Subbarayan
Choreographers: Kalyan & Brindha
Costume Designer: R. Poornima
Costumer: Perumal Selvam
SFX: Hariharan, Synccinemas
Audiographer: Rajakrishnan M.R
Pro: Suresh Chandra & Rekha D’one
Production Team: Jayraj P Pichaiya , Sp. Chockalingam, S. Ganeshan, R.Anbazhagan, E. Suersh Nambiraj
Music on Zee Music Company

(2020/7/18 Ultra Records版DVDで鑑賞。機械翻訳日本語字幕にて。)

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