Thalaivaa – Time to Lead (タレイヴァー) | ヴィジャイ サティヤラージ アマラ・ポール

Indian Movies / インド映画の話

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Title : தலைவா Thalaivaa (タレイヴァー/タライヴァー)  (2013年 Tamil 182分)
Director : A.L.Vijay (A.L.ヴィジャイ)
Music : G. V. Prakash Kumar (G. V. プラカーシュクマール)
Starring : Vijay (ヴィジャイ), Amala Paul (アマラ・ポール)、Sathyaraj(サティヤラージ)

オーストラリアのシドニーで普通の暮らしを営んでいたタミルの青年が、運命に巻き込まれてインド・ムンバイのダラヴィ(ダーラーヴィ)スラムで「ゴッドファーザー」になっていくまでを、ヴィジャイが熱演。
ヴィジャイの父役を演じたサティヤラージの重厚な演技ぶりが圧巻。かっこいー♪
アマラ・ポールちゃんの制服姿を拝めるのも◎。

(2018.6.20追記 ラジニカーントの【Kaala】も同じダラヴィスラムを舞台とした作品! どっちも観ると、よりダラヴィのことが分かるかも!)

あらすじ

物語は1988年のムンバイ(当時はボンベイ)のダーラーヴィ地区のスラムからスタート。
この地区はムンバイのあるマハーラーシュトラ州の外部からの移民も多く、タミル人も多く住む。異なる出身州のコミュニティ同士で昔から衝突が絶えなかった。
ある日、タミルコミュニティのリーダーがマハーラーシュトラのリーダーに殺害され、騒乱となった。
ラーマドゥライ(サティヤラージ)は勇敢に闘ったが、夫をかばって妻が凶弾に倒れた。
妻を殺した集団にラーマドゥライは乗り込み、そのリーダーを殺害した。
その妻に命乞いをされたラーマドゥライは、幼い息子・ビーマーに手をかけるのをやめて立ち去る。

この騒乱を機にムンバイを去る者もいたが、ラーマドゥライはコミュニティに「あなたが新しいタミルのリーダーとなってこの場所を守ってほしい」と懇願され、残ることを決心した。
ただ、ひとり息子のヴィシュワには、この物騒な環境や自分の立場とは無縁の所で平和に育ち、息子が歩みたい人生を歩んで欲しい。
そこで、チェンナイに戻ってそこから海外に行くと告げたラトナム(ナーサル)に、ヴィシュワを託した。

25年後、シドニーでヴィシュワ(ヴィジャイ)はラトナムの息子ローグ(サンターナム)とボトル飲料水販売の会社を運営し、その一方で「タミル・パサンガ」(Tamil Boys)というグループのリーダーとしてダンスに情熱を傾けていた。

路上でゲリラパフォーマンスした「タミル・パサンガ」は口コミで話題沸騰となり、ダンスコンテストに出場できることになった。

ある日、ヴィシュワとローグは水を注文先に届けに行く途中で、シドニーで開店予定の南インド料理店のオーナーの娘ミーラー(アマラ・ポール)と出会う。
二人ともミーラーに夢中になり、彼女のレストランを手伝ったりして親交が始まった。
ミーラーはヴィシュワのダンスグループに関心を寄せ、一緒に踊らせて欲しいと申し出た。

紆余曲折のうえ、タミル・パサンガはダンス・コンテストで優勝。
その夜、ミーラーはヴィシュワに恋心を告白。
ミーラーの父親も即座に結婚を賛成し、ヴィシュワの父親に挨拶したいと言う。

父はビジネスで忙しくてなかなか会えないとヴィシュワは言うが、ミーラーたちは面会を強く要求する。

父・ラーマドゥライは今やダーラーヴィで「アンナー」と慕われるゴッドファーザー。
そして、アンナーへの恨みを胸に成長したビーマー(アビマンニュ・シン)が事ある毎に妨害や復讐の機会を狙っていた。

ムンバイでの父の実像を知らないヴィシュワは、ミーラー父娘に押し切られてオーストラリアからムンバイに飛んだが、そこでは今までの生活とはまったく想像ができない現実と試練が待ち構えていた。。。

いろいろ

この映画はフィクションだと製作側は強調したものの、実在の人物をモデルにしているとモデルとされる側の身内から苦情が出され、脅迫・裁判沙汰となり8月9日(8月8日の地域もあり)に一斉公開の予定が、本拠地タミルナードゥ州で上映できない事態となった。

ただし、隣の州(カルナータカ州、ケーララ州、アーンドラプラデーシュ州)や海外では予定通り公開。

タミルで観られないからと出かけたケーララの映画館でソールドアウトのためにチケットが入手できず、初日にヴィジャイ映画を観られなかったことを苦に20歳の男性ファンが自殺するという事件も起きた。

結局、タミルナードゥ州では8月20日から公開となった。

むんむん’s コメント

マレーシアで観ましたが、英語字幕が最初から最後までついてました!
しかも(Confusion)とか(Caos)とか表示され、いわゆる「ト書き」?まで細かく書いてあったりして。

(ヴィジャイ映画でいうと【Velayudham】(2011)までは、シンガポールやマレーシアで観ると、英語字幕がついてないか、ついていても途中までとかマレー語字幕がまじってきたりでワケ分かんない状態だった。
2012年の【Nanban】、【Thuppaki】ではバッチリ付くようになってきたので、これからは英語字幕をデフォルトで期待してもいいのかな?)


さて、私はあんまりゴッドファーザーもの映画を観てない人です。
インド映画で傑作と言われている、マニラトナム監督×カマルハーサン主演の【Nayakan】もまだ未見です(><)
なので、その手の映画を語るには鑑賞経験が足りない人間の感想、ということをまずお断りしたうえで。。。

「Thalaivaa」(Thalaivar)という単語。
タミルやラジニに関心のある人ならほぼ全員知ってるであろうこの単語。

そう、「Thalaivaa」はスーパースター・ラジニカーントの愛称のひとつで、「leader」という意味
タミルでタレイヴァーと呼んだなら、それはほとんどラジニのことでしかない単語を、敢えて映画のタイトルにしているという時点で、意味深。

(【Thalaivaa】と同時期に公開となったヒンディー映画【Chennai Express】のエンドロールで、シャールク・カーンがラジニの写真をバックに「タレイヴァー」と連呼して「ルンギ・ダンス」を踊っていたのも奇妙な偶然で、意味深?)

タミル映画界の歴史で、大スターの流れが説明される際、「MGR-シヴァージ・ガネーシャン」
→「ラジニカーントカマルハーサン」という対比が必ず登場し、ではラジニカマルの次の世代を受け継ぐスターは誰だ?というのが、タミルのみんなの関心事。

で、ラジニの後継者最有力候補としてファンも騒いでいるし、当人たちも意識しているのが、アジットクマールヴィジャイ

VijayシャイなIlaya Thalapathi(イライヤ・ダラパティ~若大将=ヴィジャイの愛称) ヴィジャイがどこまで乗り気だったか知りませんが、ヴィジャイ陣営やヴィジャイで映画を撮ってみたい人は、そろそろ40代を迎えることだし(若大将のイメージを超えて)早くラジニの後継者っぽい映画に挑戦させたいんだろうなあというのは想像に難くなく。
アジットクマールが近年どんどん年齢以上に重厚感のあるルックスになっていくのに較べると、まだまだヴィジャイは近所に住むかっこかわいいあんちゃん、みたいなところもあるもんね。

そして、今回の監督は、A.L.ヴィジャイ。昨年、大阪アジアン映画祭でグランプリを受賞した【神さまがくれた娘】の監督。
映画祭を観に行って、ゲストで来日した監督にサインももらったりして親近感が湧いたし、ヴィジャイがヴィジャイを監督したらどうなるのかな、とか、ヴィジャイ監督はアジットより先にヴィジャイに「タレイヴァー」に取り組ませたいのかなとか想像してたら、ゴッドファーザーには興味はないんだけど、かなり楽しみになったのでした☆
しかも、ヒロインは【神さまがくれた娘】に出てた、アマラ・ポールちゃんよ♪


ということで、まず、ヴィジャイのタレイヴァー度の感想。

ヴィジャイには、(想像はしていたけど)。。。時期尚早でした(笑)
目ヂカラはあるけど全体的に、社会のリーダーとしては頼りなげ。
スチール写真も、ムンバイ編のヴィジャイはワタシ的には一枚もカッコいいものがない!
(シドニー編は、ウキウキするのがいっぱいあるけど!)

でも、アンダーワールドと無縁な場所で育った、ダンス好きで素直な青年が、とまどいながらも、尊敬する父が守ろうとした場所を見捨てることができない!と踏みとどまって、父の道を歩んで行く、という役。
これぐらい、頼りなげな感じでも、いいような気がする。
というか、ただ腕っぷしの強さで一直線にのし上がって行くのではなく、放心状態になったり迷いながらも成長していく感じが、逆に好感もてました。
(ヴィジャイファンだからそう思うのかもしれないですがっ)

Sathyaraj父役のサティヤラージが、めちゃくちゃかっこいいんですわ。
ご本人は、映画の中以外では、ラジニカーントと同様、かつらを付けずに地毛でメディアに登場するような方で、髪の毛が薄かったりするのですが、ラジニと同様、かつらをかぶると豹変しますね。
その豹変ぶりが、映画冒頭の25年前と中盤の25年後で1本で2度美味しい、というか楽しめます。冒頭のもじゃもじゃかつらもかっこよかったけど、ゴッドファーザーになった25年後の少し薄くなった感じのルックスが、めちゃくちゃかっちょええのです!!!
これ観ただけでも、私は満足しました。
この父と同じような威厳を息子が身につけるまでは、まだ10年20年かかるんだろうな、という感じ。サティヤラージ推しです!
ちなみに、サティヤラージは、ラジニと同様、悪役やチョイ役でキャリアをスタートさせていますが、現在はタミル映画界の主役級の大スターです。
めったに助演をしなくなっていた彼が、ヴィジャイ映画でどんなアシストをするのか興味深いところでもあります。
前年のヴィジャイ主演の【Nanban】(タミル版の【3 idiots】)での、サティヤラージのバーコード頭の校長役も、もう最高でした!!!

※同時期公開のヒンディー映画【Chennai Express】でも、サティヤラージはディーピカの威厳ある父親役を演じてます(こちらの頭も注目~♪)。ぜひ【Thalaivaa】と両方観て、サティヤラージ萌えをしましょう(爆)

ネタバレすることは避けながら書くと、息子が父の道を継ぐきっかけとなる大事件のシーンが、カタルシスがバリバリですごくよかった。
(ラジニの【バーシャ!踊る夕陽のビッグボス】をちょっと彷彿とさせる。)
事件の直前に見せる、サティヤラージの表情がグッときたと思ったら、うわあああああああああああ!って感じ。

前半は、ダンスに賭ける青春!みたいなのだとか、ラブロマンスとか、海外でタミルアイデンティティを大切にしながら暮らすタミル人たちの暮らしだとか、テンポよく描かれています。サンターナムとヴィジャイの掛け合いコメディも楽しい。
特に、1曲目の(上のあらすじに動画を貼ってある)「Tamil Pasanga」はヴィジャイの持ち味がすごくよく出ててカッコいいです。
この1曲で、もうブルーレイが出たら買う、と決意しました(笑)

そして、いっぱい裏切り者がいて、どんでん返しが続いて、どんどん人が死にますが(苦笑)後半もスリリングで楽しめました。

それから、ヴィジャイ映画として特筆すべきなのは、ヒロインとの恋愛が最後までちゃんと描かれていて、映画のストーリーにちゃんと絡んでいたことです。
ヴィジャイのアクション系映画は、制作のみなさんがヴィジャイに集中しまくっちゃってるというか、ヒロインのことを途中で忘れちゃってるのか!?みたいなロマンスとしては尻切れトンボ感が強いものが多いですからね~
アマラ・ポール、よかったです、かわいいし、(ネタバレ防止のためにここでは言わないけど、)某制服姿もなかなかイイ感じ。

タレイヴァーの本家・ラジニカーントはこの映画にどんな感想を持つのかな。
(ヴィジャイの前作【Thuppaki】は、何回も観て賞賛していましたが。)


ただねえ、後半、ヴィジャイが笑うシーンがないの。
あんなに前半で踊っていたのに(ダンサーだもんね)、後半ではストーリーの都合上もあるのだろうけど、あんまり踊らないの。バランスがイマイチよ。
何もそこまで封印しなくても~!

↑ 後半唯一のヴィジャイダンス。踊ってるし笑ってもいるんだけど、めっちゃ抑えめ。
(踊りたくてうずうずしてたのをこらえてたところ、酔いにまかせて踊っちゃうというシーン)
セカンドヒロインのガウリにミーラーをかぶってきたり、ストーリーの流れ的には非常によくて、見所ではありますが!(あと、ヴィジャイ自身が歌っているということもネ。)

(後半のセカンド・ヒロインさんRagini Nandwaniの存在が、唯一ホッとするような明るさを放ち、彼女が入ったダンスシーンなどが緊迫した後半に緩急をつけていてよかったんだけれども。※左は彼女の【Thalaivaa】のインタビュー動画。)

せっかくインド映画なんだからさー、アンダーワールドに飛び込んじゃっても、妄想や夢の中でぐらい、ババーンと踊って欲しかったナ。
(【バーシャ】のラジニだって、ドン時代もいっぱい踊ってたゾ!)
とはいえ、昨年の映画祭での【神さまがくれた娘】上映後の質疑応答の様子から想像するに、A.L.ヴィジャイ監督は音楽シーン自体は重要視しても、ダンスの中身に凝りたいタイプでもなさそうかな。。。ちょっとシリアスなサスペンス映画だからと後半を生真面目に作りすぎちゃってるのかもしれない。

この【Thalaivaa】という映画は、ゴッドファーザーになった男の映画、というよりは、「これからゴッドファーザーになっていく男の序章」みたいなものかなと解釈しました。

もし、続編がいつか作られることでもあるのなら、
今までのアンダーワールドから復讐の連鎖を断ち切り、人々も自分も開放して笑顔になれる新しい社会を作るゴッドファーザーになっていってほしいなあ。
それから、やっぱり、ヴィジャイが演じるのならば、「歌って踊れるゴッドファーザー」になってほしいです、まじ。
スラムでみんなにダンスを教えちゃう、とか。
再びシドニーでダンスコンテストにゴッドファーザーなのに出場しちゃう、とか。

踊ったっていいじゃん、ねえ(笑)。

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それから、【Thuppaki】、【Thalaivaa】と、タミル人だけどタミルが全く舞台になっていない映画が続いたので、そろそろバリバリタミルな土臭~い土地の話の映画にまた戻ってきて欲しいです。
タミルな要素を少し封印したって、ヴィジャイが魅力的なことは十分分かりましたから、タミルっ子ヴィジャイを前面に押し出した映画をまた見せてください♪♪♪

また、バイオレンスシーンがあるということで、マレーシアでは「18」指定が入っちゃってます。子供を連れて観に行くのが困難になるので、指定されない工夫をしてほしいものです。

で、バリバリにはっちゃけたクーットゥ(タミルダンス)を踊って欲しいです。
なんてたって、「Azhagiya Thamizh Magan」(ハンサムなタミルの息子)だからね、ヴィジャイは!

鑑賞1回目:マレーシア・クランのショー・センターポイントで 8月25日(上映3週目)
鑑賞2回目:マレーシア・クアラルンプールのセントゥル・シネマで 8月27日

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