Vettaikaran (ヴェーテカーラン) ※1964 MGR

Indian Movies / インド映画の話

Vettaikaran

Director : M.A.Thirumugam (M.A.ティルムガン)
Music : K.V.Mahadevan (K.V.マハーデーヴァン)
Starring : M.G.R, Savithri (サーヴィトゥリ)

1960年代のタミル映画界が贈る、「西部劇もどき」なMGR主演映画。
狩人を演じるMGRは全編ウェスタンなルックスで登場。(女性はサリー……。)
彼のコスプレのお似合い度は他の追随を許さないところがありますが、対する悪役、M.N.ナンビアールもウェスタン・ルックでキメキメ。どっちも麗しい!(笑)
若いマノーラマーとペアダンスを踊るナーゲーシュも、必見!(彼がメインのダンスシーンは大変珍しいかと。)
released: 1964.1.14

Story

バーブ (M.G.R.)は大地主でハンターでもあった。しょっちゅう森に入っては、動物をしとめてくるので母親を苛立たせていた。母は息子を早く落ち着かせるべく、結婚することを願っている。

ある日バーブは、森でラター(サーヴィトゥリ)に出会い、一目惚れ。動物に襲われそうになったラターを助けたことから、ラターも親近感を覚える。

バーブとラターは結婚し、ほどなくラターは懐妊。
しかし、出産の際、ラターは結核にかかっていることが判明し、授乳することももちろん、子を抱いたりすることさえ当面禁じられた。
バーブがラターに心配ないよ、と励ましつつ、自ら育児を積極的にしていくが、結果として息子のラージャーは父親べったりになり、ラターの言うことは聞かない、という状態に育ってしまった。

悪党・マーヤヴァン(M.N.ナンビアール)も、ラターの美貌に惹かれ、バーブとの結婚後もラターを思慕し、バーブに憎悪を募らせていた。

あの手この手の策略を使い、ついにマーヤヴァンはラターとラージャーを欺いて森に連れ出し、バーブに土地の所有権を要求する。

ラターと母になついていないラージャーの危機を、バーブは救えるのか?

コメント

DVDのカバージャケットや、ネットで出回っているこの映画のMGRは、カウボーイのスタイル。
だからといって、インド映画じゃミュージカルシーンのストーリーに関係ないコスプレがスチールになっていることも多いので、ジャケット写真をもって西部劇とは言い切れません。
さてこの映画は、タミルのウェスタン映画なんでしょうか?

この映画が公開されたのは1964年。(ビートルズが世界制覇をする年だ。)
60年代頃に、西部劇を真似するのは多いにありうると思うけど、じゃあその場合、舞台はインドなのか?
インドだったら、どうやって西部劇として展開するんだ?

なーんて、観る前にいろいろ妄想してみるんですけどね、
映画が始まってみれば、登場する女性は、サリー姿…。
カウボーイなカッコをしてるのは、MGRとM.N.ナンビアール、あとナーゲーシュが数場面だけ。
その他の男性は普通な洋服とか、シャツにドーティとか、インドの所謂な男性が着ているもので登場。

という訳で、時代考証だとか辻褄を考えるだけ無駄な(笑)、MGRのカウボーイコスプレが全編で楽しめるタミル映画でした。
ちょっとぽっちゃりのMGRが、どうしてこれだけ何でも似合っちゃうのか、知りたいよ!!!

タミルのカウボーイ映画を観たい方は、コチラの記事を参考にしてください。
Kollywood Cowboy

半端じゃなく、MGRがカウボーイハットが似合ってます!
(意味のない)両手で銃を撃つシーンもたくさん!
M.N.ナンビアールもちょいとセクシーでワルで、しかも二役でカウボーイと不動産管理人を熱演。

おそらくこの年の頃にデビューしたばかりのナーゲーシュが、ものすごく軽い身のこなしで、スピード感があるコメディを演じてます。(MGRの弟役)
Ulagam Sutrum Valiban】の比ではない!

そしてこれまた、若くて細い、マノーラマーがナーゲーシュに迫られて、二人で踊っちゃったりします!(この二人がメインで踊る曲って、他の映画にはあるんだろうか!?)

MGRは、女性に惚れられて追いかけられる映画の方が多いはずですが、この映画では珍しく自分から惚れるので、恋するMGR・迫るMGRのお顔がたくさん見られます!
(「ハンター」だから??? これが結構セクシーなんだなあ。)

ハンター(vettaikaran)のMGRは、森で虎や豹を銃で撃ち殺すけれど、森の王者のライオンが怪我して倒れているところにとおりかかると、薬草を塗って介抱。
vettaikaranって、職業なんだろうか、趣味なんだろうか???ナゾがナゾを呼びます。

(vettai=hunting, karan=名詞に接続して、「(その名詞に従事する)人」の接尾辞。)

また、この映画で珍しいと思うのは、結婚後が長く描かれていて、しかもヒロインが結核にかかってしまって子育てができないというもの。
でも、実際に当時はこんな事例が多かったりしたんじゃないだろうか。
妻が子どもを育てられず、夫が子育てに奮闘するというは、当時の妻の夫への願望の現われだったのかも。

そして子どもが妻になつかず、夫の言うことしかきかない!なんてオチ。
MGRはそれでも子どもを溺愛し、カウボーイルックスをさせ、子どもが自分さえ好きならいいんだ!という感じで暴走していきます。

その夫婦のちょっとしたすきま風の吹くところにつけいった、悪役・ナンビアール!
(1980年代のマイケル・ジャクソンみたいな髪型をしていて、これまた色っぽい。)
ナンビアールの素手で豹と格闘するシーンもすごい。
そしてナンビアールの最後。あんなことをわざわざして落ちてくか!?

なんか、いろいろ見どころがありますねー。
白黒だけど、ダンスシーンも激しくもなく群舞もないけど、いろいろ言いたいことがてんこ盛り(恋愛、息子への愛、結核患者をもった家族の接し方、インドの狩人のプライド?、森の王者は恩義を忘れない、悪は滅びる、それからそれから。。。)なんだなと感じる、映画でした。
(はい、何がメインテーマなんだか、分かりませんでした。でも全編退屈せずに見られました。)

ええ、時代考証や辻褄は考えず、
とにかくカウボーイなMGR(とナンビアール)を楽しみましょう!

MGRや古いタミル映画をまだ観たことがない方には、MGRだったらやっぱりまず日本ロケ作品の【Ulagam Sutrum Valiban】や【Adimai Penn】あたりをおススメしますが、少し見慣れてきたならば、この【Vettaikaran】もおもしろいと思います!

っていうか、【Ulagam Sutrum Valiban】を観た後でこちらを観ると、MGRたちがこんな役も演じてたのか!?と衝撃受けること間違いなし。
特に【Ulagam Sutrum Valiban】で出っ歯の空手マスターを演じてたナンビアールが、こっちの映画ではこんな(かっこいい)役だったなんて!
タミルの脇を固める俳優たちの芸域の広さに、唖然、呆然です。。。

vettaikaran audio release poster1.jpg

2009年、ヴィジャイがこの映画の題名を借用して映画を製作中。
ヴィジャイのMGRやこの映画へのリスペクトが、どんな形で現れるのか、楽しみです♪

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(2018.9.29追記)
2017年ヴィジャイの【Mersal】の冒頭で、Unnai Arinthalを聴きながらヴィジャイが筋トレしてます☆

(2009年10月12日、Pyramid社DVD[英語字幕つき]で鑑賞。)

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