Albert 2007.9.23 in Tokyo

Celebrity / インド映画界の人々の話

Albert

2007年9月23日(日)午後、東京・映画専門大学院大学で行われた、マラヤーラム映画界の新鋭監督・アルバートさんのデビュー作【Kanne Madanguka上映&質疑応答時の概要です。

質疑応答の前のコメント

Kanne Madanguka】は、インドの一地方の問題ではなく、多くの地域で起こっているものではなく、実話をもとに制作しました。
低予算で撮影期間も長く取れなかったので、15日で撮影したものです。

次の作品は、A.M.ナイル氏(ケーララ出身でインド独立運動参加、英国軍にマークされたことから約50年前に来日、銀座・ナイルレストランを創業。日印友好の功績により勲三等瑞宝章を受けた。⇒ナイルレストランHP内のA.M.ナイル紹介ページ)の生涯を日本やモンゴルを舞台に描きたく、計画を進めています。

(【Nairsan】~主役のナイル氏をモーハンラール、音楽をA.R.ラフマーン、ゲストにジャッキー・チェーンで予定。)

質疑応答

質問:拝見した【Kanne Madanguka】はインドの社会問題を取り上げていますが、次回作の予定は歴史物、ということですか?

Albert

私は現代物や過去の物、というのはこだわっていません。
A.M.ナイル氏は、モンゴルや日本と、多国でグローバルに活動したインド人で、インドでも著名人です。
(そのグローバルなところに)映画の題材としてとても興味を感じました。

質問:映画で、ヒロインは騙されて売春組織に送り込まれました。誰がその罠にはめたのかについて映画内で言及されていませんでしたが、犯人は出稼ぎ話の世話をしてくれた親戚のおじさんだったのでしょうか?

その通り。
窮地に陥ったとき、(普段付き合いがあまりないような)遠くの親戚がやってきて出稼ぎ話を持ちかけ、親戚の持ってきた話だからと信じてしまい、結局騙されてしまうことがよくあるんです。

質問:この映画のキャスティングについて教えてください。

父親役のムラリは(マラヤーラム映画界で)とても有名な俳優です。この映画にとても協力的でした。
彼のような経験豊かな名優が映画制作を引っ張ってくれてとても助かりました。
(ムラリ以外は、当時は有名な俳優ではなかったが、)ヒロインの娘役は、この映画でケーララ州の最優秀女優賞を受賞して、その後も活躍しています。
妹役も最優秀子役賞を受賞しました。

質問:この映画はアート系でしたが、インド本土での上映規模はどのようなものでしたか?

ケーララ州では2005年に15館で上映されました。
ドーハでもケーララのコミュニティがあり、そこで上映されました。
本日の上映が、海外で2ヶ国目の上映になりました。

質問:例えばタミル映画のマサラムービーならば、娘を陥れた犯人たちをアクションシーンで叩きのめして、ハッピーエンドで終わることが多いと思いますがこの映画ではそうはならず、哀しい結末でした。敢えてこういう形でアート映画を撮った理由は?

コマーシャル映画(マサラムービー)はお金がかかります。
この映画は280万ルピーの予算しかないので、アート系で撮ることにしました。
とにかく1本、低予算でもしっかりした作品を撮って、(とにかく監督のキャリアを作り、ある程度評価を得て)次につなげていきたいと思いました。

(アート系の監督になりたいとこだわってはいないが)この映画を撮ったことで、マラヤーラム映画界が誇るアート映画の名匠・アラヴィンダン監督の名を冠した「アラヴィンダン賞」(最優秀新人監督賞といったところの賞)を受賞することができて、とてもうれしく思っています。

また、タミルナードゥでは、元気でファイトしてポジティブな終わり方をする映画が多いですが、ケーララでは観客はリアリズムやナチュラルさを好みます。
このような映画でハッピーエンドだったなら、(こんなのありえない、と)観客も喜ばないです。

質問:牢屋に入った娘と家族の再会後の葛藤までを描かずに映画は終わっていますが、あのシーンで終わらせたのは意図がありますか?

映画を見た人に後を想像してもらう、ということもあるけれど、牢屋で「私はあんたなんか知らない」と悪態をついた娘と再会した母が、村に帰った後まで描くと、(娘が売春婦だという辱めで)家族全員が自殺して終わってしまうからです。

質問:この映画では誰を中心に設定していますか?(主役は誰になりますか)

犠牲者(victim)になる娘が主役です。

質問:先ほどの質問で、再会後まで描くと自殺をしてしまうから、ということですが、こういう場合は皆自殺をせざるをえないような社会なのでしょうか?

舞台は村であり、こういうことには過敏(sensitive)です。(家族から売春婦/犯罪者が出たという)噂はあっという間に広がり、外も歩けなくなります。一家心中する以外ないように追い詰められたりするのです。
(映画の前半ででてくるエピソードである)ラブレターを書いた、受け取った、というだけでも大問題です。
(日本では想像できないでしょうが、)インドではまだそういうモラルが生きています。

質問:モーハンラールを主役に起用して次回作を撮るということですが、それはアート系ですか? インド映画ファンとしては、モーハンラールが東京で踊っている姿が見られるとうれしいですが。

1945年の日本を舞台に、セミ・フィクション、セミ・ドキュメンタリー映画として撮るつもりです。
予算も大掛かりになり、アクションシーンも入るし、ソングシーンも3曲は挿入したい。1曲は日本、2曲はモンゴリアン・ソングで。

質問:アルバート監督は次回作を日本で撮影するとのことですが、今まで日本ではあまりインド映画は撮影されてきませんでした。日本でインド映画がヒットしたということは映画関係者内でも知られていると思うんですが、撮影場所に選ばれてこなかったのはどういったことが理由だと思いますか?

インド映画のソングシーンを海外ロケで撮影する場合、現地で観光プロモーションとして理解や費用面の協力を得られることが多いのです。
もちろんインドの関係者内でも撮影地として日本を候補地にすることに関心はありますが、日本ではその協力が得難く、費用も日数もかかってしまうことが原因だと思います。

次回作は今のところ日本で60日、モンゴルで75日の撮影を考えています。
モンゴルの方はサポートを得られる見込みがつきましたが、日本はなかなか難しいです。

質問:この映画ではきれいなケーララの村の風景などが描かれていましたが、今回来日して、日本ではどんな風景を映画に撮りたいと思いましたか?

たくさんいいところがありました。東京都庁などで、ソングシーンを撮ってみたいです。

終了後、アルバート監督を囲んで

終了後、アルバート監督を囲んで

日本を舞台にした次回作の実現、楽しみにしています!

← 学研くるみの木 2007年 11月号 第3号[雑誌]で、A.M.ナイルさんの6ページにわたる紹介ページがあるそうです。

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