【チャンスをつかめ!】 (Hindi,2009)

Indian Movies / インド映画の話
2003年の福岡でのティーチインにて。

昨夜、【チャンスをつかめ!】(Luck by Chance)を観てきました。
おもしろかったです。

しかし、豪華ゲストがたくさん出てたらしいけど、実際にすぐ見て分かった人は半分以下…。
(リティックとアビシェークとラーニーとカリーナとシャールク…。 あ!5人位しか分かってないじゃん。)

え、アーミル・カーン出てたっけ?ジュヒーいたっけ?状態。
家に帰ってから検索して、あー、あれがアーミルかー!あー、ジュヒー、確かにあのキレイな人は言われてみればジュヒーだった!…みたいな。

[解説]
ボリウッド・スターを夢見てムンバイにやって来たソーナー。俳優を目指し、同じ夢を持つ友人らと共にチャレンジの日々が続く…。有名俳優も多数顔を見せる、にぎやかなインド映画界バックステージもの。主演のファルハーン・アクタルは『DON 過去を消された男』の監督。

[あらすじ]
この映画は「ボリウッド」の世界を垣間見せる。そこでは、欲望や自分を売り込む有利な条件を模索し、それがある意味うねりのようになっているが、ここではさらに迷信や予言、宿命といった概念がことさらに強調されている。ソーナーは映画スターになることを夢見てムンバイにやってきた。自活しながら、友人たちと日々を過ごしているが、友人たちもまた大きな夢を追い求めている。ヴィクラムはデリーからこの街に引っ越してきたばかりだ。ソーナーはヴィクラムに心を寄せ、ふたりは恋愛関係になっていくが、プロデューサーのローリーが新作映画のオーディションでヴィクラムを選び…。 (映画祭サイトより)

映画業界ものだから、スターが続々登場しても自然ではあるんだけど、豪華スターのゲストを呼び水にするような映画は、【Om Shanti Om】でもう充分だよ、って感じがした。
リティックとシャールクはとってもいい役やってて、出る意義があったと思うけど。
アビシェークは【OSO】と同じ、笑わせるタイプのゲスト出演で新鮮味ないし。

おもしろかったんだけど、劇場を後にして帰る途中、ヒンディー映画界としてはニュータイプな意欲作かもしれないけどこういう業界内情ものって、ハリウッドや世界的にみたら、ありふれてる題材のひとつだと思うし、この映画を観て目新しく感じるものは何もなかったなあ、と。

(※以下、ちょっとネタばれも含みます)

ヒンディー映画では、二世じゃないと、ハリウッドよりもどこよりも主役スターになるのは難しい、ということを強調し、そこを敢えてコネなしでのしあがろうとするインドの若者を描いてるからインドらしい、と製作者たちは思ってるのかもしれないけど、結局、ソーナーは映画の主役になれないし、ヴィクラムの方はお調子者なのを武器にあくどくのし上がってるわけだし、こういう作り方をされると、「じゃあ、コネのない子たちはなんでそれでも映画界がいいの?演技をしたい、ということならテレビでも舞台でもいいじゃん」という素朴な疑問が湧いて、観た後にもやもや感が。
ヴィクラムが、演劇学校出身といいながら(舞台だっていいのに)どうしても映画界がいい!という理由付けと気迫もいまいち伝わってこなかった。

で、この映画は、「ヒンディー映画界はドロドロしてるんだよ。一般人は関わらないほうが無難だよ」って結論にも解釈できちゃうんですけど。。。
「チャンスをつかめ」なんて題名でも、そこまでしてつかむべきチャンスなんだか。

二世やコネの世界、ハリウッド映画のパクリな脚本が横行、映画の中のリティック演ずるスターが途中降板したくなるほどの筋に合わない脳天気なミュージカルシーンのごり押し挿入…これらヒンディーやインド映画界の問題を皮肉ってはいるけど、どうすればそれがよい方向に行くのか、的なものも感じられない。
問題点を暴露しているだけでは、自分たちの業界の首を絞めるような気がするんですが。
だからか、おもしろいんだけど、終わってみたら何かくいたらない。

実際のヒンディー映画界でコネなしでトップに昇りつめたシャー・ルク・カーンの出演が、何か唯一の救い。
スターダムにかけあがるヴィクラムが、苦難を共にした友人を切り捨てかねない態度になっているところを、やんわりと諭す、とても含蓄のある言葉をかける役どころ。
5分程度の短い時間の出演で、台詞も少なめだったけど、シャールクの言葉で、コネなしでトップにあがることについての話も聞いてみたかったかも。
この映画のおいしいところ、シャールクがほとんどもってっちゃってるかも!

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冒頭の方でリティック・ローシャンが降板する前に撮ってたミュージカルシーンが、ヴィクラムが抜擢されてそのまんま同じ振り付けで最後の方で出てくるところはかなりおもしろかった。
リティックって、やっぱりダンスすごくうまいし華があるねー!
(ただし、白い上半身スケスケの服は、布がおなかまわりでたるんでてあまりステキじゃなかった。)
抜擢されたヴィクラムの腰振りの鋭さがイマイチすぎだったのでリティックは余計にすげーと思った。

リティックがあまりにくだらない内容の映画だから我慢できずに降板してしまったところにヴィクラムが後釜で抜擢されて、その映画が大ヒットした、という筋書きになるんだけど、その映画は「くだらない内容」のままで完成されたのだろうか?
その辺気になる(笑)

あと、ステージママが「ボリウッドなんて言葉大嫌いよ!ヒンディー映画でいいじゃない!」ということを突然怒って大声で叫ぶシーンがあったのは、映画にぐっとしまりが出てよかった(この映画の中で、どのような意味合いで皮肉ってるのかまでは分からなかったけど)。

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最後に、お目当ての、ソーナー役のコーンコーナー・セーンシャルマー。
観たのはインド制作だけど英語だった映画【Mr.&Mrs.アイヤル】(2002年)以来だけど、いい女優さんになりましたねえ。
演技に女性の凄みとか弱さがよく出てた。
彼女だって、アパルナー・セーンの娘で立派な「二世俳優」だけれども、コネのない中でもがく女優さんを熱演してました。
(いいキャスティング。これが例えばカリーナあたりが演じたら、全く合わないだろうし。)

アジアフォーカス福岡映画祭2003で来日し、【Mr.& Mrs.アイヤル】についてのティーチインの中で、アート映画である【Mr.&Mrs.アイヤル】が、デリーなどで異例の4ヶ月以上のロングランになったことで、ヒンディー映画等の商業映画からもオファーが来ていることを匂わせていました。

「自分は駆け出しの女優で商業映画の経験もないし、作品をえり好みしている場合ではないけれど、【Mr.&Mrs.アイヤル】のような、意味のある映画、20年経っても自分がまた見てみたいと思う映画に出演したいと強く願っているし、その努力をしていきたい」というようなことを言ってました。

2003年の福岡でのティーチインにて。

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