3 | ダヌシュ

Indian Movies / インド映画の話
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どうして彼はかわいそうな役が多いのかしら。

2012年のタミル映画。 ダヌシュとシュルティ・ハーサン主演。シュルティの母親役にローヒニ。
ラジニカーントの長女にしてダヌシュの妻である、アイシュワリヤー・ダヌシュの初監督作品。音楽はアイシュワリヤーのいとこ、アニルド。
ダヌシュが歌った「Why This Kolaveri D」が映画公開前にyoutubeから全インド的に大ヒットした(下の動画。再生回数がタミル映画としては半端ない!)とかで、本編公開まで盛り上がったが、公開されてみたらアベレージまたはフロップで終わったと言われてる作品。

ラジニは大好きだけど、ラジニは娘に甘いというか、キャリア釣書のチャンスをあげているだけで出来はイマイチそうな気がして、どうも食指が動かなかったの。
それでもDVD購入してたけど放置すること数年。

しかし、今日になって、3月に神戸のカンファレンスに呼ばれているというローヒニがこの映画に出演していたことに今ごろ気がついて、それならばとっとと観なければ!と見ました。
どんな映画か、ヒロインは誰かとかも何にも情報を仕入れずに家帰って夕飯食べたらすぐ鑑賞開始!

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。。。あの、ネタバレでも何でもなく、のっけから、ダヌシュが死んでるんですけど。
シュルティ・ハーサンがさめざめと泣いてるし。
げ、(【Raanjana】や【Kadhal Kondain】あたりと並ぶ)悲劇もの系か、これも!

(こういう、最初から「救いのない映画」、と想像させてしまう演出は、私は盛り下がるのだよ!)

そして、ラーム(ダヌシュ)の突然死を理解できない妻ジャーナニ(シュルティ)が、理由を知りたくて人を訪ね、回想シーンに突入していく。

10年前の、16〜17歳頃の二人の出会い。制服姿のシュルティはノーメイクに近くて清楚でかわいい。(でも肌艶が足りないなあ。)
ダヌシュが、「マドラス・ブルース・リー」の面影を随所に見せながら、インド映画王道のこっ恥ずかしいストーカー行為でヒロインに近づいていく。
いや、ほんとに見てて恥ずかしいわ。


こんなのを夫に、演じさせちゃうなんて、ちょっと理解ができないわあ♪

何これ、少女まんがの世界ばりばり。アイシュワリヤーさんは、こういう恋に憧れていたのかしら。(ダヌシュと結婚する前、ずいぶんと浮き名を流していた方だから、理想と現実が噛み合わなくてパートナーを定められなかったのかな?と映画観ながら想像してしまった。)

ローヒニは、シュルティのお母さん役。
家があまり裕福ではないけど娘をちゃんと教育を受けさせてチャンスを与えて幸せにしたいと、アメリカ移住を夢見てビザ申請に長年努力している役。
ローヒニ自身、インドでの女性の地位の確立について大きな関心をもっていることが窺えるので、なるほどねえと思う役どころ。

だけど、単なるダヌシュとシュルティが離ればなれになるかもしれない、結婚を反対されるちょっとしたエピソードのひとつとして終わってる感じ。

なぜインドに留まっていてはいけないと感じてるのかが弱い。
それどころか、ダヌシュの家はお金持ちなんだから、ダヌシュと一緒にアメリカに行けばそれで済むし、インドに残っていてもお金持ちに嫁げるんだから結婚反対する理由がシュルティ家側にあるのか?とつっこみたくなるゾ。

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そして回想から立ち戻って友人とか訊ねているうちに、ジャーナニは、ラームが実は重い「躁鬱病」にかかっていて苦しんでいたことを知る。
ラームが、ジャーナニに見捨てられたくなくて、病を知られないよう口止めをしていたのだ。

後半はダヌシュの苦しみの演技がたんたんと、ひたすら続く。
楽しいときは最高に幸せそうなのに、ちょっとイヤなことがあると耐えられなくて周りを破壊し傷つけまくる。
そして我に返って、恐ろしくて泣く。
薬を飲むうちに、幻覚が見えて怯える、また暴れる。

これ、ヒットしなかったの、分かるわー。
ダヌシュファンなら数回は映画館に押し掛けるだろうけど、映画が重くて、楽しい盛り上がりがあるわけでもないし、何度も見てられないわ。
ずっとシュルティは笑わずに顔をしかめてるか泣いてるかだし。
(キレイではある。ここで肌艶がないのは、心労が多いからだね、と納得できるか。)

なんで自分のデビュー作に、こんな暗いテーマを持ってきたんだろう、アイシュワリヤーさん。
なんでこんなかわいそうな役、ダーリンにやらせたんだろう、アイシュワリヤーさん。

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なんか、インド映画界でたまに女性がメガホンを取ったり、新々気鋭の監督として名をあげたい場合に、気合いが入りすぎるのか、社会的だかのメッセージ性をこめた映画を作ることが多い気がする。
ところが志はよろしいが、もっとリサーチしてください、病気を取り上げるなら慎重に取り扱ってください、っていうほころびが多い出来になることも多い気もする。
飲酒シーンなどで、ずっと画面下に警告テロップが表示されっぱなしというのもね、リアリティみたいなものを語りたいのかもしれないけど、テロップ出してまで表現したいシーンかね?と思うことがしょっちゅう。

この【3】も、その典型的な例のひとつだといっていいかな。
サイコ・サスペンスとか言ってれば、聞こえはいいかもしれないけれども。
ラジニの娘が監督ということで、周辺がすごく頑張ってフォローしたんだろうな。
何よりもダヌシュが、カミさんのためにか、すごい熱演ではないか。
狂気と心の弱さの狭間を、いったりきたり。

でもね、ダヌシュが死ぬという未来のない結論、しかも最初からそれを提示しちゃうのはよくないよ。
周囲の理解を得て病気を克服する話だったら、よかったのになあ。

とはいえ、ダヌシュファンならぜひ、一見の価値はあると思います。(シヴァー・カールティケーヤンのファンもね!)
ご興味のある方はぜひ、観てみてください☆

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最後に。
ローヒニは、昨年だったか、ダヌシュの新作を観て「(亡き夫)ラグヴァラン以来の素晴らしい才能を感じた」とFBに綴ってた。
(こういう狂気の役、ラグもきっと似合ってたね。)

この映画で共演したときからそう感じてたのかしらね。
ラグヴァランの遺作の際の主演も、ダヌシュだったし。
ラグも生前最後のインタビューで、ダヌシュのことをいい感じにコメントしてたんだよな。。。

しみじみしちゃうな。

(LOTUS FIVE STAR製 英語字幕付DVDで鑑賞。)

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