【マルガリータで乾杯を!】(レーヴァティが演じた母親役を中心に。)

Indian Movies / インド映画の話
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margarita with a straw

シネスイッチ銀座で飾られていたサイン入りポスター

10/24から日本公開されている、【マルガリータで乾杯を!】(Margarita, with a straw)。
主人公が脳性まひ、ということでカルキ・ケクランさんの迫真の演技が話題になっているようです。
確かに、カルキさん、本物の障がい者に見えるほどだったよ。彼女の挑戦は、実ににスゴかったと思う。

とはいえ、宣伝文句と映画の内容が、ずいぶんと、かけはなれすぎ。
初日に観に行って、ぽかーんとしちゃって、なかなか感想が思い浮かばなかった。(1週間、これについてツイートもしなかったもんね。)

二十歳前後は、性のことを含めて何でもかんでも好奇心でいっぱいだったと、自分もその年齢を通過しているからもちろん実感として共感できる。
だからカルキ演じる女の子ライラが、イケメンや美人に言いよられればその人を愛してるとかそういう感情の前に、好奇心で突っ走っちゃってもおかしくないと思うし、ほんとのところ、彼女はバイセクシャルなんだろうか?って思う。この映画の後の彼女の人生では、普通に男の人と結婚しているかもよ。

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さて、映画館で観て一週間以上経って、カルキの役うんぬんよりも、むしろそれを支える人たちの役作りだとかキャラクターの方が、だんだん、じわじわと来ている。

そうか、ライラと同居した目が不自由なハヌム(サヤーニー・グープター)は、毎日あの子のトイレのお世話をしてたんだな、とか。
ライラとえっちしちゃったイケメンの金髪の彼(ウィリアム・モーズリー)も、(性欲あったにしても)彼女の世話を嫌がらずにしたんだよな、とか。

Revathy

そして、母親役のレーヴァティ!

実は、娘が失恋してデリー大学に行きたくないと言ったからといって、ニューヨーク留学の許可を取ってくる母親って、ずいぶんミーハーというか軽くないか?と最初は思って、あまり共感できずに観ていた。だって、デリーにいたほうが父親や弟のサポートも受けられるし、大学に行かなくともライラを受け入れてくれる友だちだとか少なからずいるじゃない。それをわざわざ?

だけど、後半、ライラが母親に「私、バイなの」と告白するシーンのところで、一気に腑に落ちた。

母が切り返す言葉が、「私だって、バイ(使用人)よ。インドでは大学を出たって女性はいつまでたっても使用人扱いなんだから」。
ああ、そうか。大学も出たのに、女性だからと差別を受けている、とずっと感じてきた人なんだ。
インドを出たら、女性だってもっとリベラルに生きられるかもしれないのに、と思っていたから、娘に機会があれば海外に飛び出させたかったんだ。
ましてや、ライラは「健常者ではない」「女性」で、インドで生きていくよりも、バリヤフリーが進んでいる国に行かせてあげたかった。

それから、願書を出している時点で、ガンは小康状態であっても、母親本人は自覚していて、自分がもしいなくなったらライラは自立できるのか、文才があるのなら早く自立できる可能性のある場所で勉強をさせてやりたい、と思っていたんじゃないのかな。

だからこそ、告白された後、「気持ち悪い」と理解を示してない言葉を言っていても、後日入院中に「お前はニューヨークに帰りなさい」と、インドに戻らずに学業を続けよ、と諭していたんじゃないのかな。

配給会社側からのあらすじで、母と娘の溝が埋まらないまま母は他界した、みたいに書かれていたけれども、
母親はレズやバイについては言及していないにしても、ライラを人間として自立させようとしていたことには違いなくて、溝が深いどころか、どこまでも深い母親の愛じゃないの。

アンジャリ】でのレーヴァティは、障がい者と暮らすなら、このマンションを出て行け!と住民に嫌がらせまでされる目にあいながら「障がいがあると、生まれてはいけないの? 生きていったらいけないの? 生まれてきたあの子は悪くないのに」と訴える、必死で一途な母親役だった。でも、アンジャリの場合は、生まれても持って半年ぐらいだ、と医者に言われていた虚弱体質の女の子で、母親よりもほぼ確実に先に死んでしまうのだ。 

【マルガリータで乾杯を!】でのレーヴァティは、娘を支えていきたいのは山々だけれども、いつガンで自分が死ぬか分からないし、早く娘に自立のための道筋をみつけてやりたいと願っている。

自分も今、子育てをしているから、自分の寿命がつきるかもと考えたときに、子供のために何を残すのかな、と少し考えるきっかけに、なったかも。
レーヴァティも、【アンジャリ】で幼くして死んでしまうアンジャリがもし生きて大学生になっていたら?みたいなこともふまえながら演じていたのではなかろうか、という気がした。

現に、レーヴァティはインド現地での公開時のインタビューで「アンジャリに出演した経験がこの映画にも活きた」という主旨のことを語っている;

“I enjoyed playing a role like this after a long time which is very real and in every way good. I have been waiting for such role for a long time. Though it was nothing new for me, as in the past I did a film like ANJALI, where I had played the mother of a disabled child, it was refreshing to do this film. From that point onwards I have also been supporting an organization. I know so many parents who have children suffering from some disease. I have grown up on them,”

Revathi: I don’t want MARGARITA WITH A STRAW type of films to happen on regular basis

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これを監督したショナリ・ボースさんも、子育てをしていたからこそのあの母親像を作り出したのでは。

監督がこの映画を撮った背景、障がい者のいとこがいたから、という以外にも、映画に深みのある部分がいろいろあったと思う。

インタビュアーやライターのフィルターがあまりかかっていない状態の監督の発言とか、もっと知りたいな。

来日時の発言映像とか、後でちゃんと見てみよう。

監督:Shonali Bose
出演:Kalki Koechlin, Revathy, Sayani Gupta
インド公開:2014.4.17

2015.10.24(土) シネスイッチ銀座初日3回目に初鑑賞。

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