「本気」のインド映画

先日観に行った【その名にちなんで】の映画プログラムが、結構いい感じの内容で気に入ったのだけど、そういや今まで日本で公開されたインド映画、それもマサラムービーのプログラムって、内容充実してないやつが多いよなあと思いました。

たぶん配給するのに低予算で取材ができなかったんだろうけど、もう少しこの映画の背景はこうだとかインドの文化がこうだからこの映画でこうなんだとか、この出演者はいったい誰なんだという、観客の知的好奇心をくすぐるような内容を盛り込めんのかね、みたいな。

お面だとかコラージュだとかの加工系や「B級映画です」、的な扱いのコピーとかもそれはそれでおもしろいけど、私はそういう内容がないものや自虐的な宣伝文句のものにお金を使うのはあんまり好きではないのだ。

(私、インド映画を「B級映画」だとも思ってないしネ。)

そういう意味では、【ムトゥ踊るマハラジャ】、【ボンベイ】、【ジーンズ】あたりの映画プログラムは素晴らしかった!とても丁寧な仕事をされていますわ。

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なんとなく、1998年7月のキネマ旬報に2回に分けて掲載されていた、【ムトゥ踊るマハラジャ】の公開への道のりについての記事を読みました。

配給会社・ザナドゥーの社長・市川篤さんの談話。
仕掛人・江戸木純さんの話はいろんな媒体で読めるけれど、市川さん側の話はそんなに多くはないので、今読んでみてもとても興味ぶかかったです。

なかでも、以下のくだりに感動しましたよ。

「幅広い観客層を集めて」成功したが、裏では「インド映画のスペシャリスト、インド文化の学者らにアドバイスを求め、間違った宣伝はしない」という地道な努力があった。それだけに市川氏は、マサラ・ムービーの今後について危惧を抱く。 「これからマサラを配給する会社が出るかもしれませんが、その時は半端じゃなく本気でやってほしいですね。そうでないと一過性のブームで終わっちゃいますよ。僕はブームを作るのではなく、上映作品のパターンが決まって行き詰まりつつあるミニ・シアターの作品選択肢を広げようと思ったんですから」


...今となっては、アドバイスを求めるにはもっと他に適任のインドのスペシャリストがいたかもしれないねぇとか思う方もいらっしゃったりはするけれど、【ムトゥ】の映画プログラムはすごかったし、配給会社側の「この映画を届けたい」、という心意気はシネマライズの館内の雰囲気でもビシビシに伝わってきたものでした。

それにしても、市川さんが【ムトゥ】を封切った時点でこのようにコメントしているのにもかかわらず、その後ブームとなったインド映画は雑多に何本も公開され、しかし真剣な紹介のされかたをした映画は多くなく、(言い換えれば、半端な配給が多かったということだ)ほんの1年ちょっとぐらいで日本のインド映画ブームはしぼんでしまったわけで。

う〜ん、含蓄のある予言めいた談話だ...。

ラジニの映画だって、【ムトゥ】以外のプログラムはあまり出来がいいものがないもんね。
(【アルナーチャラム】は、まあまあだったけど)
映画館はラジニへの愛に満ちてて、映画もおもしろくて、さあプログラムを買って持ち帰って自宅でも余韻にふけろう♪と鼻歌口ずさみながらプログラム読むと、おいこれだけかよっ!とがっかりしたり。

今年はラジニの【Sivaji】、日本に来ますかね?
そのときには、配給会社さんにぜひ「本気」を見せていただきたいものです。

いくら映画がそのものがよくたって、日本に紹介する方々の映画への愛や本気もみえないと、映画館に行くのが億劫になっちゃうもの!