【夢の花びら】(Sri Lanka,2008)

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アジアフォーカス・福岡国際映画祭鑑賞2本目は、スリランカ映画の【夢の花びら】(Flowers of the Sky/Akasa Kusum)。
スリランカ映画界の内幕もの。(公式サイト

映画界を引退したある大女優は自宅を芸能人の密会場所として提供、細々と生計を立てていた。ある日、人気女優の不倫スキャンダルをきっかけに、彼女の封印したはずの過去が明らかになってくる。デビュー時に捨てた娘が風俗嬢となり妊娠とHIV感染だとわかる。
プラサンナ・ヴィターナゲー監督による、5年ぶりの新作。エイズや同性愛、マスメディアの影響力など、今日のスリランカが抱える社会問題を背景に、映画に翻弄された母と娘の真実の愛を描き出す。

「自宅を芸能人の密会場所として提供」だなんて、この夏、日本の芸能界ニュースでもずいぶん取沙汰されたようなトピックじゃありません?
タイムリーだな!なーんて。
映画界の内情ものは、インド映画でシャーム・ベネガル監督の【ミュージカル女優】などを観たことあるけど、【ミュージカル女優】は実に救いのない、退廃的な映画だった。
こっちのスリランカ映画はどれくらいドーロドロしてて救いがないのかな!なんて変な期待をして観に行ったんですが、救いはありました。
救いはあったし、主演女優のおばさまマーリニー・フォンセーカが凄みのある演技をしていて、とても格調高い映画に押し上げてました。

家でほとんどすっぴんで淡々と家事をこなす時の仕草や表情(ほんとうにおばあちゃん、という感じ)と、久しぶりのスポットライトを浴びたときの大女優(女は歳とったって女だよ!っていう位美しいおばさまに。)としてのカメラを意識した目線や仕草の豹変ぶりというか演じ分けがとにかく圧巻。

スリランカのスナック「パティス」を作る場面が結構長く映されてて、ああこうやって作るのね〜、と感心するとともに、映画界を引退して地味な日常を大切に丁寧に生きるヒロインを静かに力強く演じてました。

なんで密会場所をふしだらな人に提供するのさ!と責めながらも生活費をせびりにくる妹の不条理が、映画のストーリーにスパイスを加えてました。

娘の自堕落ぶりとHIV感染を知るくだりのシーンはそれに比べてちょっと雑だなあと思ったりもしたけれども、娘役の方も熱演。
観たことある女優さんだな、としばらく考えてたら、そうだ、2003年のアジアフォーカスのときに【灼熱の夏】で主演してゲスト来日してた方だ!
映画終わった後にプログラムとか読んで、監督も【灼熱の夏】と同じ方だったと気がついた。
(インド映画以外の俳優さんたちの名前を、どうもなかなか覚えられなくてね。。。)

August Sun
 ↑ 2003年の映画祭のティーチインで。ブラサンナ・ヴィターナゲー監督と女優のニンミ・ハラスガマ。
 今年も監督は来日してたようだけど、ティーチインは先週だったので残念!

【灼熱の夏】は6年以上前の映画だけど、今回の【夢の花びら】の方がずいぶん若く見えた。役作りの違いかな?

【灼熱の夏】はスリランカの内戦で何年も行方不明になっている夫を探しに危険地帯に乗り込もうとする妻と海外からきたジャーナリストのやりとりを軸にした話で、すごーく重い映画だった。
暗くて暗くて、今白状するなら、こーいう映画はあんまり観てられん!と思ってました。

でも、【夢の花びら】も決して明るい話ではないけれども、こっちはまた観たいなと思いました。ヴィターナゲー監督は、こういうタイプの映画も撮れる方だったのね。
よい映画をじっくりスクリーンで鑑賞することができて、福岡に来た甲斐があったってもんです。


最後に。
この映画を観ていたら、スリランカ映画も、インド映画と同様にミュージカルが入るものなんですね。
アジアフォーカスで今度、そういうタイプのスリランカ映画も紹介してほしいな!