Iraivi (女神たちよ)

「子どもは3人。夫とはずっとラブラブでいるの。おばあちゃんに叱られるし結婚前に恋愛はいいわ。おばあちゃんの選んだ人と結婚するの。カマルハーサンとタラ(アジットクマール)とタラパティ(ヴィジャイ)を足したような人と結ばれるんだから!」

と冒頭で女子学生が未来のダンナ様の恋バナをしている。

カマルとアジットとヴィジャイ?
(ラジニは入ってないんだな。)

アジットとヴィジャイは分かるとして、なぜ理想のダンナ様にカマルが登場!?
カマル、バツ2だよね。その他、内縁とか不倫の噂がほうぼう…。
ロマンチストでも【伝説の女優サーヴィトリ】での夫、ジェミニ・ガネーサンとも引けを取らない「恋多き男」の類、では。

(ただし、私はカマルハーサン大好き。以前、遠目に某コンサートの舞台袖でカマルが練習中のコたちを見守っているところを見かけたけれど、あのときの後輩たちにかけていた目や佇まいがとっても優しくてねえ。あれは女性側も惚れてしまうわ、と思ってしまった。
日本だと、斉藤由貴が目が色っぽすぎてその気がなくても共演者たちがイチコロになってしまう、勘違いされやすい人だという解説を読んだことがあるけれども、それと似たようなことなんだろうか。)

この文脈でどうしてカマルハーサンなのか、誰か教えてほしい!

…などと思っているうちに、この台詞を発した女の子ポンニ(アンジャリ)はヴィジャイ・セードゥパティ演じる「マイケル」に翻弄され、不幸を驀進。
マイケルは想う女性がいて、彼女しかいないとずっと引きずりながら親に言われるままに見合い結婚、ある意味純愛体質ながら誰も幸せにしていない。
でも彼の内面の世界から見れば、ひたすら苦しんでいて健気に生きている。そして何気に色気ありすぎ。

マイケルの親友のアルル(S.J.スーリヤ)。商業映画というよりは芸術系映画を志向する映画監督らしい(本人の台詞によると、イライヤラージャーの音楽は好きだが、音楽を映画に使うとそのへんの商業映画と同じに見られてしまう、と思っている)が、完成したはずの最新監督作がプロデューサーの手で公開を止められてしまっていお蔵入り。苦悩のあまり、アルコール依存症。
S.J.スーリヤ、この映画では主演俳優だけれども、もともと監督で、この映画の出た頃までは大スランプというか、10年位ほとんど話題が無かったかも。 そのせいもあるんだか、悲壮感や焦燥感に現実味があふれ出ているというか、狂ってた。
狂って踊ってるS.J.スーリヤ、ファニーでかわいい。最高。

(そうだ、2012年のヴィジャイの【Nanban】に特別出演していたのをスクリーンで目撃したときは、おお久しぶり~!と彼のおかしげな演技にも興奮したっけな。あの頃もスランプな時期だったのね。でもあの演技などがあるから、その後も繋がってるんじゃないかという気はする。)

でも、世に出ない映画を「我が子だから」と必死に守ろう・世に出そうとするのに、ホンモノの我が子とカミさん(反対する両親を説得して、彼のもとに嫁いだのに)のことは二の次。最低。
 
S.J.スーリヤを見ていて、自分の20年ちょいのインド映画ファン人生の中で見聞きした事件とか、成功していない(成功した日々から離れた)映画人が描かれて印象に残った映画だとか、メジャーな映画で振り付けるチャンスがつかめないでいるダンスマスターと会って話したときに感じたこととか、いろいろ思い出していた。

マニラトナム監督の兄で、著名なプロデューサーだったG.ヴェンカテーシュワランの自殺(2003年)、華々しいプロデューサーと世間で思われたのと裏腹に実は闇金借金地獄だったらしいという報道
【Power Pandhi】のスタントマスター、老齢で引退後の第2の人生(ラージ・キラン)
【Avvai Shanmugi】のなかなか出世できないダンスマスター役(カマルハーサン)…

映画に見入りながら、同時に、忘れかけていたことも含めいろいろ自分の経験値からの関連事項があふれ出てくる、という鑑賞経験も珍しいな。

あっと驚く役どころが、アルルの弟・ジャガン(ボビー・シンハー)。甘ったれなようでホラーな表情がよい。

ムトゥのアンバラ様(またはサルカールのレンドゥおじさん)こと、ラーダーラヴィが、いいお父さんのようでいてやっぱりワルだ。
奥さん役のヴァディヴッカラシが切ない。【アルナーチャラム 踊るスーパースター】で「怖いおばあちゃん」で強烈だったヴァディヴッカラシが、この映画では切ない。(【伝説の女優サーヴィトリ】も寝たきりだったので、切ない。)
冒頭以外、寝たきりだったけれど、寝たきりなのにずっと切ない存在感があった。
(病室で寝たきりの彼女の周りで繰り広げられる、家族の男どものグダグダ話シーンなど、大変印象的。)

すごく引き込まれたんだけど…
女神(女性)たちの自立を呼びかける歌の割に、どうやって自立すればいいのかの解決策を探るわけでもない。
ダメダメ男たちが魅力的に描かれすぎて、対して女神側はその男たちにすがるか許すしかない(自分で開眼していくことはない)状況におかれたような展開。
もっと女神側の事情や内面も描いてくれや。(せっかく冒頭では女性側が語っていたのに…)

タイトル負けでは;;;

(…それとも、わざと?)

2016年のタミル映画での、女性への言及がこんな感じか。(当時、タミルの現地ではどういった評判だったのだろう。)
2019年の【ビギル】は、それなりに進化したってことだろうか。

でも、【ビギル】でさえ、男社会の目からの女性の自立で、女性のエンパワメントを主題にする割には食い足りないところがある。
発展途上。
その辺はこれからもオープンな論議があって、発展していくといいのかな。

そんな気がしました。

見入ったし、考えさせられたし、エンディングが自分には納得できないけど、面白かったです。
カンナギの物語「シラッパディハーラム」、もう内容忘れちゃってるので、そのうち読み返そう。

シラッパディハーラム―アンクレット物語

Title – Iraivi இறைவி
Release - 2016.6.3
Producer – C. V. Kumar
Director – Karthik Subbaraj
Music – Santhosh Narayanan
Starring – Vijay Sethupathi, Bobby Simha, S. J. Surya, Anjali, Kamalini Mukherjee, Pooja Devaria, Karunakaran, Cheenu Mohan, Radha Ravi, Vadivukarasi
Director Of Photography – Sivakumar Vijayan
Editor – Vivek Harshan
Studio – K E Gnanavelraja’s Studio Green, Abinesh Elangovan’s Abi & Abi Pictures, C V Kumar’s Thirukumaran Entertainment
Lyrics – Muthamil, Vivek Velmurugan, Mani Amuthan
Stunts – Hari Dinesh
Choreographer – Sheriff
Stills – Anand

(2021年6月9日、キネカ大森「インディアン・ムービー・ウィーク」にて鑑賞)

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