Nadigaiyar Thilagam(伝説の女優 サーヴィトリ)

Movies / 映画の話


映画公式Facebookより写真引用

IMO(インディアン・ムービー・オンライン)で見ました。

MGR映画のヒロインも務めたこともあるから、かろうじてお名前+αを存じていた、1950~1960年代頃の女優・サーヴィトリ。彼女の伝記的(フィクションもあり)映画だそうです。テルグ語版がオリジナル、タミル版は吹替え版で、日本の映画祭(IMW)に来たのはタミル版の方。

MGRのカウボーイ映画(?)1964年【Vettaikaran】のヒロインです。

MGRが「君が自分のことを知ったなら~♪」と馬に乗って歌いかけているのを横目にサーヴィトリがフンって感じで歩いてる↑の曲は、【Mersal】(2017)の冒頭でヴィジャイが腕立て伏せをしてるときに部屋に流れていました。それだけ、今どきの世代のタミル人にも何か訴えるものがある有名な曲みたいね。それから、アジットクマールの【Ennai Arindhaal】(2015)のタイトルもこの曲からインスピレーションを得ているのかも…

逆にいえば、サーヴィトリは【Vettaikaran】のヒロインだということ、ジェミニ・ガネーサンの第2夫人だったらしい、という程度しか知らずに観ました。 もっとつっこんで言えば、この【Nadigaiyar Thilagam】ではMGRも登場するのかな!と期待して観ました。 ジェミニ・ガネーサンが往年の「タミル映画界御三家」の一人と言われるのだから、たぶん、御三家のあと二人である、MGRやシヴァージ・ガネーサンも出てくるのだろうと。

おうっ。ジェミニ・ガネーサン役はドゥルカル・サルマーンか。色男ぶり、似合ってる。
うおっ。今の時代にジェミニ・ガネーサンがいたら、徹底的なクズ男だな。

映画観た後に確認したけど、サーヴィトリとジェミニの出会いは彼女が12歳の頃で、二人の結婚は1952年、彼女が15か16歳の時!? で彼の立場では28歳位で出会って32歳位で結婚(第一夫人がいるので、第2の結婚として)!!!
1956年まで、ヒンドゥーの男性側は重婚OKだったそうな。
昔って、今の人より精神年齢が高かったんだろうとは思うけど、これってロリコンじゃね?(しかも妻子・愛人も有りで10代の子にさらに手を出すなんて!)
彼女だって、俳優になって成功したかったのに16歳で結婚しちゃう?
(14歳でデビューしたけど21歳で結婚引退した山口百恵をつい思い出したけれど。)

…意味が分からない。

数秒考えて。ああ、だからか。私が2000年前後でチェンナイで撮影現場などに遭遇したときは、主演級の若い女優さんのそばには、ほぼ必ずお母さんか身内の人が付き添っていた。悪い虫がつかないようにそうしてる、という話を聞いていたけど、サーヴィトリとジェミニ・ガネーサンが典型的なその反面教師事例なんだろうな、と。

それから、サーヴィトリが活躍していた1950年代のあたりは、今と時代がホントに違うんだね。結婚しても、女優の存在価値は大きかったんだ。私がインド映画にはまりだした2000年前後は、タミルの女優さんは結婚したらほぼ主演女優のキャリアはおしまい、だもの。
サーヴィトリのような時代があったのならば、これからでも、女優の立場はもっと復権する可能性があるような気もした。

MGR?
映画の中で名前は出てきたけどMGR役の人は登場しなかった。
シヴァージ?
サーヴィトリがプロデュースしたけど2作コケた、というエピソードが読み上げられた程度だった。
(南インドの人が見れば、それでもシヴァージ・ガネーサンは大俳優だと分かってるからいいけど、知らない人が見たら、失敗作だけの俳優とも誤解されかねないような?)

ジェミニ・ガネーサンとの関係がチェンナイで繰り広げられたということで、最低限のチェンナイが描かれてはいるようですが、テルグ映画界の人がテルグに重きを置いて作っているのは一目瞭然ですね…ちょいとサミシイ。
ならばタミル語版なんて作らなくてもいいぞ!と機嫌の悪い日ならば思うね。(笑)

【踊り子】などヒンディー映画界で大活躍だったレーカー(1954年生まれ)が、ジェミニ・ガネーサンの愛人との子どもだと知っていたので、この愛人さん(プリュパヴァッリ)とのエピソードなんかも登場するのかなと思っていたけど出てこなかった。(ジェミニが愛人・浮気だらけの人だというニュアンスは映画の中で語られていたけれども… ちなみに、プシュパヴァッリはなぜジェミニと入籍していないかというと、彼女にも夫がいたので、女性側は重婚できなかったから、という事情らしい。極秘結婚をしていた、という説もある。)

サーヴィトリ演じたキールティ・スレーシュは、サーヴィトリが晩年に借金かかえて役を選ばず仕事に向かうシーンだとか、やつれた姿がとても艶やかさがあった。
キールティより実年齢がだいぶ上の役作りだと思うけれども、でもサーヴィトリって45歳で亡くなってるから、晩年といっても若いのよね。

男尊女卑だの、しみじみしみじみ辛いと感じるようになった私。南インド映画で女性がメインになる映画が作られるだけでも気分が高揚するし、女優さんの伝記的映画ができるのは嬉しいし関心もとてもあるけれど、それだけにキールティたちの熱演に心動かされるシーンも多々あれど、どうも盛り上がり切らなかった。かな。

取り巻きに言われるがままに女性ばかりが主人公の映画を監督・プロデュースしたりするのをはじめ、次々に資金出資をして(シヴァージ・ガネーサンの2作も出資して失敗したというのも含め)破綻していった…という映画の描かれ方だったけど、出資するばかりで成功はしなかったの?
彼女自身の監督の能力であるとか、プロデュース力についての評価への言及はないの?
まるで女優しか能がないみたい。そしてひたすら翻弄されるだけの悲劇の人生? アルコール依存症の人の更生施設を作るのが夢であっても、搾取される一方? 

人生のどこを切り取るかで、感じ方は大きく変わるもの。この監督は、サーヴィトリの大ファンだったのだろうか。で、晩年は太って糖尿病でアルコール依存症で2年近く寝たきりで生涯を閉じた女優にも、素晴らしいところがあったんだと知らせたかったのかな。(サンジャイ・ダットを擁護する【SANJU】のような。)
でも、やっぱり男性が撮る(男性より下位のものとしての)女性、の域を超えていない感じがする。

この映画をもし女性が監督していたら、どうなっていただろう。

この映画でサーヴィトリの生涯を追うジャーナリストを演じたサマンターは、結婚してからも活躍しているね。北インドに比べると、まだまだ「結婚したら主演は終了」な南インド映画界の風潮を、ぜひどんどん、ぶっ壊していってほしいと思います。サーヴィトリの人生を、映画のネタにして消費するだけじゃなく、彼女の功績を認め彼女の映画界界隈での苦悩を消化して、映画界が発展していくことを、願っています。

余談。
サーヴィトリのおじさん、誰かに似てる、誰だっけ?と思いながら見ていました。終わった後に確認して、【Quick Gun Murugan】の彼ではないか!(ムルガンは化粧濃かったから、こっちの映画と同じ人だと気づかなかった~)
どうりで、いい味だしてるはずだ。 Mind it!

作品情報

インド公開:9 May 2018
Starring: Keerthy Suresh, Dulquer Salmaan, Samantha Akkineni, Vijay Deverakonda, Prakash Raj, Krish Jagarlamudi
Music by Mickey J Meyer
Directed by Nag Ashwin
Produced by prestigious banner Vyjayanthi Movies & Swapna Cinema

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