Mudhalvan (ムダルヴァン)

Indian Movies / インド映画の話


Title : முதல்வன் Mudhalvan (ムダルヴァン/州首相) (1999年 Tamil)
Director : S.Shankar (シャンカル)
Music : A.R.Rahman (A.R.ラフマーン)
Starring : Arjun (アルジュン:プガレンディ役), Manisha Koirala (マニーシャー・コイララー:テンモーリ役), Raghuvaran (ラグヴァラン:州首相役)
DVD:AYNGARAN(字幕:英語)

日本ではTVで数回放送され話題になった、【NAYAK~真実のヒーロー(後に、【スラムドッグ・ヒーロー】に改題)】(2001、Hindi)のオリジナル版であるタミル映画。TVインタビューをきっかけに「一日州首相」になった主人公の、正義感あふれる大改革とその後の騒動。
シーソーゲームのような元州首相とのせめぎあいで、全編にわたって緊張感たっぷり。ラブストーリーの部分もとても甘くて切なくて、まさにマサラムービーのすべての感情が詰まった、1990年代タミル映画の傑作中の傑作!

共演者

Vadivel (ヴァディヴェール) Palavesham(プガレンディの親友。コメディロール)
Vijayakumar (ヴィジャイヤクマール) (テンモーリの父親)
Laila (ライラー) Shuba(QTVのレポーター)
Fathimababu,
Manivannan (マニヴァンナン) Mayakrishnan(州首相の第一秘書)
Sushmita Sen (スシュミター・セン)(1曲目〔Shakalaka Baby〕ダンス),

スタッフ

原作・脚本・監督: S.Shankar (シャンカル)
台詞:Sujatha
アクション監督:Kanal Kannan (カナル・カンナン)
振り付け:Chinni Prakash, Tharun Kumar, Ahamathkhan
作詞:Vairamuthu(ヴァイラムットゥ)
プロデュース:Shankar, R.Madhesh
制作 / 提供:S Pictures
美術:Thotta Tharani,
編集:B.Lenin-V.T.Vijayan,
撮影監督:K.V.Anand,
音楽:A.R.Rahman
音楽版権:Five Star Audio,

Songs

♪ Shakalakka Baby (Vasundara Das, Pravin Mani)
 1曲目。プガレンディがTVカメラマンでミュージックビデオを撮影しているという設定。スシュミター・セーンがこの曲でゲスト出演。後にロンドンのミュージカル【BOMBAY DREAMS】でも使用された、A.R.ラフマーンの代表曲のひとつ。

♪ Azhagana Rakshasiyea (S.P.Balasubramaniam, Harini, G.V.Prakash)

♪ Kurukku Siruthavalae (Hariharan, Mahalakshmi)
 ハリハランの優しくて甘い声がたまらないです。

♪ Ulunthu Vithaikayilae (Swarnalatha, Srinivas)
 村でのびのびとしているテンモーリを、優しい視線でプガレンディが見ている曲。

♪ Uppu Karuvadu (Shankar Mahadevan, Kavita Krishnamurthy)
 首相になったアルジュンとマニーシャーが、人目を忍んでデートする場面の曲。曲もダンスも、むんむんのお気に入り中のお気に入り。2002年7月のTamil Star Nite in KL コンサートで、アルジュンがこの曲をナマで踊るのを観たときには、トリ肌ブルブル、涙出そうでした!

 2003年12月のA.R.ラフマーンのマレーシアコンサートでも、シャンカル・マハーデーヴァンが熱唱、途中で私たちに向かって「ジャッパーン!」と叫んでくれたのが宝物のような想い出です。

♪ Mudhalvanae (Shankar Mahadevan, S.Janaki)
 王様ルックスやりすぎで爆笑、CG使いすぎで気持ち悪い(笑)。(ラグヴァランのCGで変身ぶりにも要注目!)
 しかし、州首相になってしまって言葉を交わすことさえ困難になってしまったプガレンディに対するテンモーリの心の不安を如実に表現している重要な曲。

 A.R.ラフマーンは、シャンカルと組んだときは、すごく気合が入ってて、実験精神に溢れた若々しい曲を作り上げてます。
 そして、こうした曲をバックにしたダンスも、(ちょっとCG多用しすぎだけど)大変楽しい。アルジュンもマニーシャーもダンスはそんなに上手じゃないけど、ダンスはテクニックじゃなくて、ハートね!とこの映画を観てると改めて思います。

見所

●アルジュンのラグへの緊迫したインタビュー場面。(1977年のフロスト-ニクソンインタビューに、インスパイアされたものだそうです。)
●アルジュンとマニーシャーのダンス〔Uppu Kalvadu〕内での、キスシーン。(こんなタイプのキスシーンは初めて見た!)
●衝撃のクライマックス。アルジュン vs ラグ。
ラグの最後の台詞、その後のアルジュンの台詞が、とんでもなく印象的。
●エンドロールを最後まで見ること!
●州首相は一般的に、「Mudhalvar」という敬称で呼ばれるが、この映画では敢えて「Mudalvan」という敬意を含まない単語のタイトル。この意味を考えつつ映画を観ると、余計に見応えアリ。(後日、しろうとタミル語講座でこの辺、とりあげてみたいです)
→ しろうとタミル語講座「むだるばん」Part 1 / Part 2

あらすじ

 プガレンディ(アルジュン)はテレビ局(QTV)のカメラマン。
 ある日地方取材に出かけた際、タミルナードゥ州首相(Chief Minister=CM)・アランガナール(ラグヴァラン)に勇気を出して村の窮状を直訴する少女・テンモーリ(マニーシャー・コイララー)に、ファインダー越しに一目惚れ。
 早速アタック開始するが、彼女の父(ヴィジャイヤクマール)は、「娘の相手は公務員かエンジニアじゃなきゃダメだ」と反対した。

 ある日、チェンナイで起きた大暴動に居合わせたプガレンディは、自らカメラを回しながら現場を走り回り、血まみれになった学生を背負って救助にあたった。
 その一部始終はプガレンディのカメラからテレビで生放送され、QTVの大スクープとなった。

 プガレンディは功績を称えられ、テレビ局内でシニア・レポーターに昇進。更には昇進後の初の仕事で、州首相と対談するインタビュアーに大抜擢された。
 先日の暴動の際に、州首相の悪徳ぶりを聞き知ったプガレンディは、突然の大舞台に緊張しながらも、番組内で州首相に鋭い切り込みの質問を浴びせた。 のらりくらりとかわしていた州首相であったが、番組が進むにつれ、劣勢に。
 ついには、暴動事件の際にプガレンディが見聞きした証拠をつきつけられ、逆ギレした州首相は、「首相は大変なんだ!何ならおまえも一日首相をやってみろ!」と啖呵を切る。

 躊躇したものの、成り行き上、プガレンディはタミルの一日州首相を務めるハメになった。
 しかし、一旦引き受けたなら、腹を据えて迷うことなくプガレンディは州首相である「たった一日」で、悪徳な役人、大臣たちを次々にリストラし、市民の声に耳を傾け、民衆の大喝采を浴びる。
 この模様が全てテレビ中継され、「プガレンディを本当の州首相に!」と世論は加速していくのだった。
 しかし、その一日州首相を勤め上げた帰り道、プガレンディは暴漢に襲われる。もちろんそれはアランガナール陣営のさしがねだった。

 州首相ではなく、一個人としてテンモーリと幸せになることを望むプガレンディ。
 政治家になることを何度も断り続けたものの、プガレンディに一筋の希望を託して押し寄せるスラムの民衆。
 腐敗したこの社会で、民衆の想いを痛いほどに感じた彼は、断りきれず、ついに選挙に出馬することになる。
 そして選挙も大勝で、ついに本当の州首相に就任した。

 公務員と結婚させたい、と言っていたテンモーリの父だったが、公務員どころか州首相になってしまったプガレンディに、娘と一緒にとまどうばかり。
 そして、次々と改革を進めるプガレンディに、元州首相を始めとする反対勢力が黙っているはずもない。執拗な妨害、脅迫、ついには両親と住む家を爆破され…。

制作あれこれ

●ラグヴァラン~Cinema Express誌1999年度の最優秀悪役賞を受賞。
●シャンカル監督は、ヒンディー版【NAYAK ~真実のヒーロー】をアニル・カプール主演で制作。(当初は、シャー・ルク・カーンでやりたかったらしい。)
●もともと、シャンカルはラジニカーントを主役に想定して脚本を書いた。しかし、ラジニには結局出演を断られた。
その後、ヴィジャイに企画が持ち込まれたがヴィジャイ側のスケジュール調整ができず、最終的にアルジュンで決まった。
●ヒロインは当初、ミーナのつもりだったが、アルジュンとミーナは、同じ頃制作されていた【Rhythm】で共演中。同じペアでは新鮮味がない、とボリウッド女優のマニーシャー・コイララーに白羽の矢が立った。
●シャンカルの当時のインタビュー 〔Sify.com
DVD版権者Ayngaranサイト内のスチール写真特集
●テルグ吹替版:【Oke Okkadu】(1999)

むんむん’s コメント

【2003/12/11記】
 目下、私が観た(多くないけど)タミル映画の中ではベスト5に入る作品。
 日本でもそうですが、政治好きのタミルの人なら、一度は「オレが政治家だったら、こんな風に世直しするのに」みたいに妄想したことがあるんじゃないでしょうか。そんな夢がこの映画の中で実現します。
 きっと観客みんなが、(現実にはあり得ない話の映画だけど、)映画のアルジュンに感情移入しまくったんだろうなあ。 映画を観た後、この映画について友人たちと話が弾んだんだろうな、と容易に想像できるほど、テンポよく見応えのある作品。

 前半は、一日州首相になったアルジュンが、バッサバッサと悪徳役人たちを切り捨てていく様が爽快で楽しい。
 後半になるにつれて、逆にアルジュンや彼の家族の命が狙われ、家は爆破され…と事態はどんどん深刻に。(でも、大げさに爆破されたりするので、これまた爽快?だったり。)
 そして、怒りに湧き上がったアルジュンと陰謀を仕掛けたラグヴァランの対決のラストシーンへ。
 何ごともまっすぐに実直にコトを進めてきたアルジュンが、最後には『政治家』らしくラグをハメる、どんでんがえしな展開は、緊迫して、息を飲みました。
 でも、オバカなシーンもたくさんあって、一級の娯楽大作に仕上がってます。

●●●

 ラジニにオファーが来たものの、政治色が強いので引き受けなかった、という話ですが、ラジニはハマりすぎちゃうかもしれないです。確かに。(ラジニが出演していたら、ラジニVSラグヴァランの最強タッグだったんだよね、観てみたかった。)
 でも、アルジュンもラジニにはない、若さと勢いのある素晴らしい演技をしてました。もはや、アルジュンを置いて他に演じられる人はいないだろう、と思えます。
 マニーシャーは、厚化粧で、顔のアップのシーンなんかでは、化粧の粉でも溜まってるんじゃないの?と思っちゃうような小ジワが目立ち、素朴な村娘の役、からはどうも外れてた気はします。 が、アルジュンとのダンスシーンは、ほとんどがよかった。すごくかわいらしい。野原で踊ってるところとか、本当に牧歌的で可憐で、都会に住んでるアルジュンが、村に住むマニーシャーに恋するのも充分に納得です。
 あと、脇役では、マニーシャーの父役・ヴィジャイヤクマールの演技がすごく印象的でした。アルジュンが州首相になることを決意した瞬間、なんともいえないさみしそうな表情で、マニーシャーを連れてひっそりとその場を立ち去るところは、涙モノ。

 最後にシャンカル監督。多作な監督ではないけど、いつも、映画を通して表現したい、何かを伝えたい!という衝動が伝わってくる映画を撮る、稀有な才能を持っていると思う。ずっと活躍して欲しいです。

★ラグの役★ 悪徳州首相役。徹底的に汚い政治家を演じている。実年齢よりかなりの老け役だからか、めずらしくかつらをかぶっているけど、そのかつらがなんとも…(笑)。(もちろん、本人も気に入ってはなかったらしい。) 本人談「とても難しい役で、やりがいがあった。声も変えなくちゃいけなかったしね」

(2001/12/29、アインガラン製DVDで初鑑賞。2003/12/11記)
★大傑作

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