インドダンス

わなっかん!
マサラムービー系であれ、アート系であれ、程度の差はあれど、インド映画には欠かすことのできないダンス。

近頃、「インドダンス」「インドムービーダンス」といった検索ワードで当サイトにお越しの方が増えているため、このサイトの中で散逸している「インドのダンスについて書いている」日記や記事をここでは整理したりしてみます。

私はタミル人のダンスマスター・バラ先生から「インドムービーダンス」(フィルミーダンス / ボリウッドダンス)を習ってました。 ⇒ むんむん's Diary内 インドムービーダンス アーカイブ
また、タミル映画のダンスの振り付けが、南インド古典舞踊をベースにしていることが多いので派生しましてタミルナードゥ州発祥の「バラタナティヤム」(バラタナティアム / バラタナーティヤム)も習い始めたところです。

ものすごく、簡単な、インド映画を観る上でのインドダンスの解説。

 インド古典舞踊 | インドムービーダンス | インドムービーダンスに現れる古典舞踊 | インド民族舞踊(フォークダンス)

インド古典舞踊

「インド古典舞踊」の由来には諸説があり、例えばインドのバラタナティヤムは世界最古の舞踊だ、という解説もみかけるのですが、少なくとも現在踊られているバラタナティアム・ダンスは、1930年代以降に編み出されたシステムによるものであり、セミ・クラシックのダンスであると唱える方々も多いです。

どちらが正しいかという話はおいておいて、とりあえず「インド古典舞踊」と記載する方が現時点ではイメージしやすい気がするので、このサイトでも「古典」という言葉を用いてます。
(「インド伝統舞踊」という言い方でもいいかもしれませんね。)

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インドの古典舞踊と言いましても、地域によって様々なものがあります。
主な古典舞踊の流派としては、一般的にはよく次のような紹介がされています。
◆インド四大古典舞踊〜カタック(北のラクナウ発祥の宮廷舞踊)、カタカリ(ケーララ州発祥)、マニプリ(北東のマニプール州発祥)、バラタナティアム(南のタミルナードゥ州発祥の寺院へ奉納する舞踊)
◆インド七大古典舞踊〜上記の他に、クチプディ(南のアーンドラプラデーシュ州発祥)、オリッシー(東のオリッサ州発祥)、モヒニアッタム(南のケーララ州発祥)

古典舞踊は、長い年月に培われたそれぞれの流派による、踊りや表情、服装、装飾などについて厳格な型や決まりがあります。

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← 日本に駐在中のインドの子供によるバラタナティアム

ちなみに現在の古典舞踊、例えばバラタナティアムは、良家のお嬢様のたしなみで習わせる、という風潮があるようで、バラモン階級でない庶民は「バラタナティアムのバの字も知らない」と言ってもいいくらいだ、と聞いたことがあります。

日本でも、日本舞踊や歌舞伎や能などの伝統芸能が大衆にはなじみにくい部分があるわけで、インドでもそれに近いといえるでしょう。踊る側はもとより、鑑賞する側にも知識や経験が必要とされます。
最初はとっつきにくいかもしれませんが、鑑賞経験を積めばどんどん味わいが増してくるものかと。

もっとお知りになりたい方は、日本にいるインド舞踊家の方々のサイトがたくさんありますので検索してみてください。
インド古典舞踊全体については、延命寺さんの「インディカ舞」が特に親切で分かりやすいと思います。

ところで、バラタナティアムは、「芸術的なヨーガ」という解説も目にします。
きちんと型にのっとってポーズを決めるよう意識して練習をすると、とてもキツイのですが後で心身ともに爽快です。
ヨーガか、なるほどなあ、と思います(笑)。


インドムービーダンス

インド映画の中で踊られるダンスは、いわゆる「コンテンポラリー・ダンス」に属するかと思います。
様式美が完成されていて、逆に様々な制限がある古典舞踊とは対極で、ムービーダンスはルールはなく何でもあり、です。
インドの古来からある、インド古典舞踊や、インドのフォークダンスはもちろん、ジャズやポップスやブレイクダンスやラップやヒップホップ...、ありとあらゆるものがミックスされて踊られます。

今はインドもテレビやインターネットで世界と繋がっていますので、日本で流行るような欧米の音楽やダンスは、インドの人もかなり観ています。なので、インド映画が制作される時期により、海外のトレンドみたいなものも反映されていることが多いです。

でも、日本の若者のダンスとインドムービーダンスが決定的に違うと感じるのは、
ジャズやヒップホップだろうと、インドのフィルターを通して踊られていること。
それがフォークダンスであったり、古典のリズムが途中に挿入された古典っぽいフュージョンだったり。
おもしろいと思えば他人のアイディアをどんどん(無断?)借用する。(←いつか世界的に問題になりそうですが...)
また、群舞で揃って踊るというよりも、個人個人が(好き勝手に)のびのびと踊っていて、(→踊りが揃っていない!)それでいて、踊っている人の数がめちゃくちゃ多い。
老若男女関係なく、腰を振っている。
そして、不必要なくらいの笑顔のオンパレード。
欧米の完成度の基準には、おおよそ当てはまらない。でも何か圧倒される。元気になる。


インドムービーダンスに現れる古典舞踊

 ⇒ もう少し詳しい、インド古典舞踊のページ

古典舞踊を題材にしたインド映画や、古典舞踊がミックスされたダンスのあるインド映画はたくさんあります。
ただし、いわゆるマサラムービーの場合は、実際にその古典のスタイルにのっとってきっちり踊られているわけではありません。
「なんちゃって古典」であることがほとんどです。衣裳も古典での制限にしばられず、映画の内容にあわせてダンスマスターが古典をベースにしながらも自由にアレンジしています。
また、撮影の仕方や編集で魅せる側面もあります。

(例えば2006年に日本でもロードショーされて評判だった【チャンドラムキ 踊る!アメリカ帰りのゴーストバスター】のラストの踊り子のダンスも、「古典っぽく」魅せるあくまで「ムービー用のオリジナル」な振り付けです。映画での設定の150年前の踊り子が踊っていたはずの「バラタナティヤム」あるいは「クチプディ」には似ても似つかなかったりします。足さばきが若干、クチプディっぽいですが。)

また、古典とまではいえなくても、インドのヒンドゥー教徒のみなさんはインドの神様が大好きです。
いかにも現代的なダンスの中で、神様を象徴する古典舞踊のポーズや手の型が、さらりと引用されたりすることはよくあります。(ヴィジャイのダンスは、その辺が観ていてカッコよくてたまらんです〜♪)

もちろん、北インドの映画と南インドの映画では、引用される音楽や舞踊の傾向が違ってきます。
ものすごく大雑把ですが、以下のような傾向があると思います。

ヒンディー映画 〜 ヒンドゥスターニー音楽がベース。古典系の振り付けが入る場合は、カタックをアレンジしたもの(長いスカートを広げてくるくる回るタイプのもの)が多い。
(カタックが出てくる素敵な映画については、みやびカタックダンスアカデミーさんのサイトに解説が載っていて参考になります。)

タミル映画 〜 カルナータカ音楽がベース。古典系の振り付けが入る場合は、バラタナティアムまたはクチプディに着想を得ているものが多い。 
特に、昔の映画の時代は、古典舞踊だけで生活ができなくなったクチプディ舞踊家の多くが映画界の振付師に転向した、という事情もあったらしく、クチプディがベースの振り付けが多かったようです。
(タミル映画の古典舞踊を視点にしたおススメは、後日改めて別のページで。)


インドのフォークダンス


例えば、右の動画のように、鮮やかな衣裳をまとった女性たちが棒を持って踊るダンス、インド映画の中で時々見かけます。
衣裳や楽しそうな雰囲気がすごく絵になってます。
これは北インド(ラージャスターン州など)のフォークダンスのひとつらしいです。
(動画は、2007年6月に千葉県で見たステージ。どこの州のダンスかは失念しました...。)

日本でもっとも有名なインドのフォークダンスは、「バングラ」かな?
バングラミュージックは世界のクラブシーンでも認知度が高く、ダレル・メヘンディなど有名なアーティストもたくさんいますしね。
映画でもバングラダンス的なアプローチは北・南を問わず多いと思います。。


しかし他にも、日本ではおおよそ信じられず不思議に思うような、ストレンジな民族舞踊がたくさんインドにあります。
トラの格好をして踊るもの、トリの被り物をして踊るもの、孔雀のように羽を広げて踊るもの(ピーコック・ダンス)...

← ウッタルプラデーシュ州のチャルクラ舞踊(ブラジ地方のクリシュナ神話を基にしたフォークダンス。ピーコックダンスともいえるのでは!)
 ※写真は、2005年来日時 

インドムービーダンスの中でもこれはギャグか?と思ってみていたダンスが、実はインドに実在するフォークダンスだったりするのです。
ちょっとその辺を意識してダンスを観てみると、新たな発見があるかもしれませんヨ。


動画のあるページ

※舞台で踊られたもの。撮影OKのときだけ撮影しています。

インドムービーダンス

2006年12月末にインド・チェンナイで観たインドムービーダンス
その1 その2 その3

タミル人のダンスマスター・バラさんが日本で踊ったものについては、バラさん紹介ページにも動画紹介があります。ぜひ、ご覧ください♪

バラタナティヤム

2006年12月29日にチェンナイのカッチェリで観たバラタナティヤム
その1
2007年5月に品川のお寺で観たバラタナティヤム
その1 その2
2007年6月に新浦安のホールで観たバラタナティヤム
その1 その2
2007年11月に杉並の体育館で観たバラタナティヤム
Ganapathi Rayan (体育館)

その他民族舞踊

2007年のスリランカ・フェスティバルで観た民族舞踊


当面動画のページの紹介のみですが、徐々にダンスごとの特徴や、特にどの映画で特徴的なダンスが見られる、ということや、大好きなダンスシーンのご紹介などもしていきたいと思います。

それでは、わなっかん!