Indian Movies / インド映画の話

【Mersal】(メルサル)

2017/11/12

「イライヤタラパティ」(若大将)・ヴィジャイから、正真正銘の「タラパティ」(大将)・ヴィジャイへ。
スター映画の究極のカタチ、2017年版。

新生・「タラパティ」(Thalapathy)ヴィジャイお披露目記念祝祭大作

インド映画における「スターのためのスター映画」な「歌って・踊って・ファイトする」マサラムービーで、シャンカル監督作・ラジニカーント主演【ボス その男シヴァージ】(Sivaji the boss)以来の大傑作じゃないかと思う!
ヴィジャイ出演作品のほとんどはマサラムービーであるけれど、こんどのメルサルはその中でもテンションが尋常ではない!
(2017年11月2日現在、210カロール超の興収で大ヒット中。 大ヒットな分、医療システムに異議申すな場面に、政治業界や医療業界が反応、「該当シーンをカットしろ」「検閲通過を取り消せ」要求も勃発、日本にまでAFPニュース等で報じられるほど、メルサルストーム全開中。)

2010年代の南インド・タミル映画を代表する作品のひとつにもなるかも。

先日の上映会の反応を中心とした、日本のメルサルに関するtwitterのまとめ

ヴィジャイのために作られた、ヴィジャイの映画。
ヴィジャイの祭り。

今迄、愛称が「イライヤタラパティ」(若大将)だったのが、今回「若い」の形容詞を取り、「タラパティ」(大将)のクレジットに変更。
貫禄と圧倒的なカリスマ性やオーラをまとって、盛大なお披露目の祝祭的作品。
お祭りにふさわしい、全編に渡るカラフルな画面。
ヴィジャイや共演者の、エモーションの洪水。
ヴィジャイに3役もやらせて、映画が全編に渡ってヴィジャイだらけ、でもコテコテでもしつこくない(笑)。

いかにヴィジャイをかっこよく撮るか、魅せるかに徹底的にこだわっている制作陣。

こんな祝祭映画の公開を、インドのお祭りディワーリ(ディーパーヴァリ)にぶつけてくる。
世界中のヴィジャイファンが、タミル映画ファンが狂わないはずがありませんな〜。

昔の日本映画にもあった「スター映画」は、インド映画でもそれが今でも主流ではあるものの、リアリズム路線や新潮流の作品が増え、年々減って来ているのも事実。
が、それが何だと言うのだ!と言わんばかりのマサラムービーっぷりなのが本作品。
そして、せっかくたくさんの観客に観てもらえるならば、インドの社会問題も本気で伝えようという心意気。
(今回、それがBJP幹部の目にとまって、一部シーンをカットせよ!と発言し、インド全国的に報じられるほど物議を醸し出した模様。 でもそのことでその医療問題に、インドのみなさんがはっきりと意識し、変えていこうと声をあげることが大切なんだと思う。)
ヴィジャイが通常のヴィジャイよりも倍以上のアクションシーンで、じゃんじゃん悪を倒す!

ま、ヴィジャイファンじゃない人は、単純にインド映画の王道の底力みたいなものを感じて、楽しめると思います。

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アトリ監督ってば、どんだけ、ヴィジャイが大好きで大好きでたまらないのよ〜!
師匠・シャンカル監督がラジニカーントと初タッグを組めた時に、嬉しくて嬉しくてラジニをいじり倒した(?)ような楽しさが、今回のメルサルにも見え隠れします。

アトリって30代になったばかりの若者。 ヴィジャイにこの映画で腰布:ドーティ(ウェスティ)を着せまくってます。 年配の監督でなく、若い監督が敢えてドーティでヴィジャイにキメさせるというのも、興味深いところ。

アクションシーンが銃を使わず多彩に展開し、ヴィジャイの、歌舞伎でいう「見得」なキマリ方も多彩でてんこもり。
(中でも火事のシーンとか、萌えずにいられん。)

映画の概要

チェンナイで、ある病院の医療従事者が次々に誘拐されるという事件が起こる。
チェンナイの下町・トリプリケーンの診療所で全ての患者を「5ルピー」で診察し、世間に尊敬されるお医者さんのヴィジャイ(マーラン)と、天才的マジシャンのヴィジャイ(ヴェットリ)が前半で登場。 
マーランがこの誘拐事件の容疑者として逮捕される。
その関係とは? 後半でその謎が明かされ...

というふうに、ヴィジャイが3役。映画の根底に流れる重要なテーマは「インドの医療システム」。
ヴィジャイが3人いるので、3人、相手役のヒロインがいます。(カージャル・アガルワール、サマンター、ニティヤー・メーネン)

(初めて観る方は、この程度だけ知っとけば充分というか、映画を観て圧倒されてほしいと思います。)

映画のポイント/キーワード

ヴィジャイのドーティ姿
ヴィジャイのサンダル履き、ドーティからチラ見えの足首の麗しさ
ヴィジャイのマジシャンっぷり(最後の最後まで目が離せない)
マジックでもアクションは成立する
お医者さんヴィジャイ・ドーティ姿でパリへ行く(そして空港で不審者として捕まる。釈放されたときも「シャールクカーンやカマルハーサンだって捕まったんだからね、仕方ないよ」というニクイ台詞を言う!)
パリの空港でドーティ姿で華麗な跳躍ぶり・医療従事ぶり
恋の始まりは、ローズ・ミルク
MGRがたどったタミルの大スターの道を、たのもしく歩いていくヴィジャイ
舞台にパンジャーブ地方まで登場して、豪華

悪役の医者、S.J.スーリヤのクレイジーっぷり
【バーフバリ】のカッタッパ役・サティヤラージのシニカルな(そして情にもろい)警官っぷり
ヴァディヴェール、銀幕復活おめでとう!しかもかなり重要な役回り
【テリ〜スパーク〜】でヴィジャイの相棒役がよっぽど評判がよかったのか、つるつる頭がトレードマークのラージェンドランがちょい役で特別出演!? しかも「厚生大臣」。 ちょっと前まで悪役軍団のひとりだったのがすごいね

マサラムービーしていながら、「インドの医療システム」に対する痛烈な批判(これ、日本の医療問題にも相通じる部分もある〜)

(医療の話は、映画ネタバレになるので後記。)

Nothing personal, just "SERVICE"

音楽やダンス

音楽監督:A.R.ラフマーン 作詞:ヴィヴェーク 振付:ショービ
タミル出身の世界的作曲家 A.R.ラフマーン、ヴィジャイ映画を担当するのは何と10年ぶり。 ラジニ級の映画を担当するときは、彼のイメージを大切にしないといけないから、実は他のタミル映画に較べるとあまり冒険ができない、と語っていたことのあるラフマーン。
たぶん、今のヴィジャイにも、そういう面があるような気がする。 逆に、ラフマーンだからこそできる、「タミルの!」を連呼する、ローカルなスターのローカルな詞の世界でありながら伸びやかでスケールの大きい曲、というものもあるのだと思いました。

Maacho
Mersal Arasan
Neethanae
Aaalaporaan Thamizhan

きっと自分がタミル人だったら、「タミル人であるというアイデンティティを誇れ」なんてこんなに仰々しく力強く歌うこの「Aalaporaan Thamizhan」という曲は、ほんとに泣ける...

そして、この映画で「第3のタラパティ・ヴィジャイ登場」を飾るこの曲のヴィジャイのパフォーマンス。
この10年ぐらいのヴィジャイ映画でも、正しくベスト中のベスト。

「Mersal Arasan」(魅惑の王、とでも訳せばいいのかな)もタイトル通り、ヴィジャイが「タラパティ」だと連呼しているような曲で、そんなこっぱずかしいタイトル負けしたりしない、今のヴィジャイの力強さがみなぎってます。
(歌は、ラフマーンの甥っ子で【テリ〜スパーク〜】の音楽監督も務めた、G.V.プラカーシュクマール!)

いやー、ヴィジャイ、久々に本気中の本気モードでめちゃくちゃいっぱい踊ってるね。
でも実は映画全体では4曲で、(5〜6曲入れてくることが多い)ヴィジャイ映画としては、実は少ないんだけど、1曲1曲に凝縮されているエモーションだとかがすごすぎるので、大満足!!!
振りつけたショービさん、大出世だな、これ。 2013年に【Theeya Velai Seyyanum Kumaru】の曲で富山ロケがあったときに見学に行って、そのとき振りつけてたのがショービだったよ! (サインもらっとけばよかった)

医療問題をまじえた、あらすじ補足(ネタバレあり。既に観た人向け。)

※1回観ても展開が早すぎて分からなかったけどすごく面白かった、という感想も聞きます。でもせっかくなので、面白いだけではなく、この映画の社会的メッセージは日本人にも少しでも関心をもっていただきたいので、ここであらすじを補足しておきます。ネタバレなので、未見の方はご注意ください。
3回英語字幕つきで見た記憶により書いていますが、間違いはご容赦を〜。建設的に修正するためのご意見は大歓迎です。

【前半】
ラージェンドラン演じる厚生大臣が、パリから帰って来て有名になったマーランのところに駆けつけ、「ウチの政党に入って立候補してくれればすぐ当選だ!」と勧誘。(医療やヘルスケアの政策うんぬんはそっちのけで、票集めの政治ばなしをしているあたり、かなり皮肉めいた台詞をしゃべっている)

お医者さんのマーランが、前半のテレビ討論番組シーンで語っていることの概要(映画のテーマの最重要な部分や伏線)
「インドの平均月収は1570ルピー。だとすると一日あたり50ルピーが使える金額。皆に等しく医療を受けてもらうには、5ルピーが妥当じゃないかと思って。(フリーが最高だけどね)」
「公立病院の人たちがダメだと言ってるわけじゃない。多くは志の高い尊敬に値する医師たちばかりだ。だが医療システムを悪用する人が一部にいる。それを正していきたい。」
「私は、5歳のときに頭に大ケガをして、それ以前の記憶が全くないんです」←ココ重要な伏線。

交通事故にあった12歳の登校中の少女(父は、まさしく日銭が50ルピー前後かもしれない、リキシャードライバー)
救急車のドライバー、行き先の救急病院を指示する管理者、病院の救急の窓口担当者、救急の施術を行う医者が、皆グルになっている。
その病院のトップが、S.J.スーリヤ演じるダニエル・アロキアラージ。

事故遭遇後、救急車が途中で公立病院を通り、父親が「なぜ急いでるのにここに行かないのですか!?」と訴えるも、ドライバーは「事故の書類だの聞き取りだのなんだので公立病院ではケアしてもらえるのは早くても半日後だ。すぐ処置してもらえる私立病院に行ったほうがいい」と強引に遠くの私立病院にまで運ぶ。 ←公立病院の関係者たちが、「公立病院従事者を批判している」と反発したと思われる部分 しかも途中でコミッションがアップするまた別の私立病院に行き先を変える有様。
到着してみれば、医者は「あと10分早く到着していれば、この子は助けられた。もう手術をしても無駄だ」と匙を投げる。 しかし窓口担当者は「手術してるフリをすればいい。死んでも、処置をしたということをもってカネが取れる」 

【後半】

38年前。1979年。

マドゥライから20数キロの村で暮らすヴェットリマーラン(ヴィジャイ)。 大火事でやけどを負った子供二人を車で(村に病院がないため)マドゥライの病院まで運んだが、「あと10分早ければ助けられた」と医師に告げられる。
そこで、子供たちの鎮魂や二度と惨事が起こらないよう祈る寺院を建てようと村の者たちは言うが、ヴェットリマーランは「寺が治療で人を救えるか。 今ここで必要なのは、寺じゃない。建てるべきは病院だ」 ←BJPのトップが、ヴィジャイ自身はクリスチャンでヒンドゥー教徒じゃないからこんなことを言えるのだと批判、炎上案件に。
そして、ヴェットリマーランたちの尽力で病院が完成、ダニエル・アロキアラージとアルジュンが医師として迎えられた。
誰でもフリーで診察してもらえる病院として、遠くのディンディガル方面からも患者が訪れるほどの評判の病院になった。

ヴェットリマーランの妻アイシュワリヤー(愛称:アイス。ニティヤー・メーネン)が、二人目の子供で産気づいたとき、この病院に駆け込んだ。
アルジュンが「全く問題ありません。30分くらいで正常に分娩できます」とダニエルに報告したところ、ダニエルは驚愕の指示を出す。
「正常分娩では、産んだらすぐ終わりでカネが取れない。帝王切開(カイザー)にすれば10日位入院してカネが取れる。緊急だからと理由をつければヴェットリマーランだって納得するさ」
「でも彼の家族にそれをするのはリスクでは?」
「村のリーダーなあいつだからやるんだ。あいつの家が帝王切開を受ければ、今後他の家も帝王切開を受け入れる。そうすれば病院はどんどん儲かる。30年後には、普通分娩なんて怖い・帝王切開じゃなきゃ、となっているかもしれないぜ」(と不敵に笑う)

アルジュンが「麻酔専門医が今いませんが?」
ダニエル「おまえがやれ」

ヴェットリマーランたちには、赤子の首にへその緒が巻き付いて大変危険な状態だから、帝王切開すると医師はウソの説明をする。
しかし、帝王切開手術自体は成功したが、赤子は死産、母親のアイスは、麻酔に対するアナフィラキシー・ショックで痙攣を起こして死んでしまう。(麻酔医以外の者があわてて全身麻酔を行ってしまったことなどが原因による医療ミス)

怒りのヴェットリマーランにダニエルが言う言葉
お前と俺は似た者同士で気に入っている。病院を建てたいという意思は同じだからな。
だがお前は皆のために、「サービス」のために病院を建てた。俺は違う。「ビジネス」のためだ。
俺はそのために火事も起こしたんだ。全ては俺の手の内だ。

手錠をかけられたヴェットリのスピーチ

シンガポールの国民は7%の物品サービス税(GST)を納め、無料で医療を受けている。インド政府は国民から28%のGSTを取っているのに、なぜ無料で医療を提供できないのか? ←これをモディ首相の批判だとBJPトップや党員の一部がツイートし、炎上。 

↓コチラもどうぞ(日本の上映会で3日連続で観た【メルサル】感想。)

日本ヴィジャイ・メルサル祭り3日間終了。

(2017年10月20日(金)20時〜 イオンシネマ市川妙典で初鑑賞。)

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