一昨年、昨年につづいて、映画祭だけど日本で、ヴィジャイの映画が上映されるんですよ。嬉しいですね。
今年は、【Bigil】ですって。邦題は、「ビギル 勝利のホイッスル」とのこと。
🎞 映画大国インドから 🇮🇳
日本初公開10作品を上映する#インディアンムービーウィーク 2020キネカ大森 9/11 (金)~10/8(木)
新宿ピカデリーほか全国 9/25(金)〜(終了日未定)
刈谷日劇 10/2(金)〜
シネ・リーブル梅田 10/9(金)~10/22 (木)https://t.co/IykVJiWOLC#IMW #インド映画 #ボリウッド pic.twitter.com/fN3lZlISey— インディアンムービーウィーク(Indian Movie Week Japan) (@ImwJapan) September 4, 2020
ビギルは、こんな映画
Movie – Bigil
Music – A.R. Rahman
Starring – Vijay, Nayanthara, Jackie Shroff, Vivek, Kathir, Rohini, Yogi Babu, Anantharaj, Dheena, Varsha Bollamma, Reba Monica John, Amritha Aiyer, Indhuja Ravichandran, Arjan Bajwa, Daniel Balaji
Directed by Atlee
ヴィジャイの、アトリ監督とのタッグ第3作。 ヴィジャイが好きすぎて、ヴィジャイを俺の手でかっこよくかわいく映画にしたい!という情熱だったらもう誰にも負けないアトリ監督、今度はヴィジャイをいったいどうしちゃう?
ヴィジャイの、サッカーにかける青春と、ヤクザのドンパチと、父と息子の絆と、第2の人生と女子サッカーを通しての「女性のエンパワーメント」がこれでもかとてんこ盛りに展開する、マサラムービーです。
※女性のエンパワーメントとは:
女性が自分自身の生活と人生を決定する権利と能力を持ち、さまざまなレベルの意思決定過程に参画し、社会的・経済的・政治的な状況を変えていく力をもつこと
千葉県柏市のホームページより
女性のエンパワーメント!映画なんて、日本ではそんな映画ができるのか?って位、何というか恥ずかしい気がする(フェミニズムやフェミニストというのが、微妙にとっつきにくいですしね…)ところ、それを男性の立場から声を上げていくという、ありそうでなかった、で、ものすごい熱量の映画です。
こんなこと書いても、見てない人にはさっぱり「???」ってところだと思いますけど、まあまず見てくださいよ。
さて、今日はこのページで、女性!!!ってことで、ヒロインのナヤンターラーのことをまず語りたい。
ナヤンターラーに、Verithanam(ヴェリタナム。人の意見などは聞き入れないほど没頭している様子、狂信的なこと。)!
※Vetithanamのことは、【Bigil】輸入盤DVDの、なんどり販売版おまけライナーノーツ「インド映画のしおり」にも書いています。お持ちの方は確認してみてください。
★こちらは、2019年に映画館で観たときの備忘録です。
「レディ・スーパースター」ナヤンターラー
ナヤンターラー。ヴィジャイとの初共演は2005年。10月のディーパーヴァリ祭向けに公開された【Sivakasi】で、女優の本人役として1曲登場。マラヤーラム映画でデビュー後、2005年にタミル映画に進出したばかりながら、4月のタミルニューイヤー公開作【チャンドラムキ 踊る!アメリカ帰りのゴーストバスター】でラジニカーントのヒロインに抜擢。その後チャンドラムキの超特大ヒット(チェンナイのシャンティ劇場では800日上映を達成)により、タミル映画にデビューしたてで数か月で一気にトップ女優に躍り出た直後のことでした。
「私はスーパースターとも共演したのよ」と歌い踊り、「だから私もレディ・スーパースターよ」と言わんばかりのジェスチャー。なかなかにふてぶてしいというか若さは向こう見ずというか、な当時弱冠20歳だった彼女。でもその初々しい突っ張りぶりが、まあヴィジャイと踊っててかわいいことかわいいこと!
3年後、化粧の仕方も変わり、グッとオトナっぽい(ちょっとケバい)ルックスになって、2009年1月ポンガル公開作、【Villu】でヴィジャイのヒロインとして初共演。
私は、この【Villu】のカップル、とっても好きだったな。(ヴィジャイともだけど、ナヤンターラーのヴァディヴェールとのコメディぶりが、体張っててテンポよくてよかった)
でもこの【Villu】は残念ながら世間ではフロップ、ということになってしまったし、この映画で監督だったプラブデーヴァーとナヤンターラーが、この映画がキッカケで恋に落ちたらしく、映画の話題よりもその後の不倫ゴシップニュースの方が話題になってしまったような記憶がある。(二人で堂々と公に登場していた時期もありましたし。)
その後、ヴィジャイとナヤンターラーとの共演が長らくない状態に。
SNS上で「ヴィジャイの最高の相手役は誰?」的なことがファンの間で話題になるときも、サマンター、カージャル、ニティヤー、ちょっと昔でシムランとかの名前が挙がることはあっても、ナヤンターラーを目にすることは、ほとんどなかった。
その一方で、ナヤンターラーの「レディ・スーパースター」度は、2005年の頃はまだハッタリな感じだったけども、どんどん、どんどん、本物になっていった感じ。
大バッシングを受けて人気も一時低迷、引退か…とも噂されようと、4年弱のプラブデーヴァーとの関係を終了させた後は、鬼気迫るような快進撃。
男優ではなく、女優のナヤンターラーを軸に映画が作られることも増え、「レディ・スーパースター」はナヤンターラーだけ、という評価を確立。(PBもヒンディー映画界での監督を含めて全国区で成功。関係解消後の二人、何気にすごいのだ)
それでいて、2019年3月には、【サルカール 1票の革命】に出てたレンドゥおじさん(またの名を、ムトゥのアンバラ様)こと、ラーダーラヴィからは、映画宣伝イベントの壇上でのスピーチでもろに女性蔑視ともとれる発言を浴び、後日毅然と反論文を発表したり話題に。
※「最近、ナヤンターラーはホラー映画に出たようだが、もし幽霊が彼女に会ったら、幽霊の方が逃げ出すさ」などと発言したと。(IndiaToday 2020.3.24記事)
このラーダーラヴィの発言は、映画のプロモーションイベントに出席しないナヤンターラーを揶揄した発言がエスカレートした、ということだそうですが、ひどいもんです。(アジットクマールとナヤンターラーはそういうイベントに頑として出ないポリシーのようです。ナヤンターラーは【Bigil】のオーディオ・ローンチにも出てません。)
その後の、【ビギル】でのヒロインがナヤンターラーだという発表。14年ぶりの共演ということも嬉しかったけど、2005年当時から今までヒロインを張ってるタミル映画の俳優さんは他にほんの数人しかいないし、浮き沈みしながら生き残ったどころかランクを上げていることに感心しました。
映画界の男尊女卑な世界を生き抜いて、大物になった今でも女性のくせに、というような発言を浴びたりしている、そんな彼女が、女性を勇気づける女子サッカー映画に出て、どんなメッセージを表現するのか。
ヴィジャイは、ナヤンターラーが不在だった【Bigil】のオーディオ・ローンチでスピーチしましたが、次のように彼女のことを語りました。
困難の末、勝利を手にした女性たちがいて、あらゆる困難を乗り越えて今の地位を勝ち取ったナヤンターラーがいます。私は彼女と共演することを誇りに思います。
アトリの監督デビュー作はアーリヤ&ナヤンターラー主演の【Raja Rani】。 それぞれ恋人を失った男女が心のキズが癒えぬままお見合い結婚をして、その後お互いのトラウマを乗り越えて真の夫婦になれるか、という内容の映画でしたが、ナヤンはその時は少々エキセントリックな役で。
アトリがナヤンターラーを今度はどういう役柄にするのかも、興味ぶかいところです。
とっても楽しみでしたよ~。
(【ビギル】の後には、ラジニカーントとも【Darbar】で12年ぶりの共演が発表されて、ナヤンターラーにまた風が吹いて来たぞ~!って感じでしたネ。)
※ちなみに、ヴィジャイと久々の共演といえば他にも、ヴィヴェークが【Kuruvi】(2008年)以来、アーナンダラージがナヤンターラーと同じく【Villu】(2009年)以来。この二人のヴィジャイ映画出演も感慨深いのだけど、それはまた別の項で。
露出度が低い!露出度が低い!こんなに露出度が低いナヤンターラー、見たことない。美しい。露出なんかなくても、「レディ・スーパースター」になったんだね。
で、ビギルのナヤン。
とにかく全体的に衝撃を受けたのは、今回、彼女、おへそ出したり、膝上もほとんど見せないんですよ。サリー姿で脇腹が見えるのが数シーンあるくらいで。
でも彼女のお召し物、全部素敵で似合ってて、いろんなアップの表情がまあ何しろキレイ、うつくしい!
特に登場シーンの白いサリーのウェディング姿。。。めちゃくちゃ幻想的にキレイだったし(こういうドレスで結婚式もするんだと新鮮)、その後港にビリヤニを差し入れにくるシーンの、「あなたのこと、分かってるわよ、フッ」みたいな、お姉さんな笑顔が同性からみてもしびれた。かっこいい。マイケル(ヴィジャイ)がたじたじになるのも分かる。
台詞的には詳しく語られないんだけど、ナヤンターラー演じる「エンジェル」は、マイケル以外と結婚したくない、と7年間他の人との結婚式をぶち壊しながら待っている。そんな彼女のキャラクターも正に、Verithanam。
ヴィジャイとの共演作【Villu】、私がナヤンターラーの露出度にビビりまくったヴィシャールとの【Sathyam】(←この感想記事には、当時の私の彼女への驚きがいっぱい書いてある。今読み返しても、時代を思い出して面白い。)みたいなのを含め、以前は相当見せまくっていたので、かなり驚いた。
でも、全編に渡って、まるで露出がなくて、でも美しくって、凛としてて、ああ、「女性の尊厳」「女性への敬意」を表現するのに露出なんかいらないなあ、素晴らしいなあ、と心の中で涙を流しながら拍手を送っていた。
また、監督含め、映画制作側も女優お色気系サービスシーンを入れなければ!というのがない作りに徹しているのもよかった。(ヴィジャイ映画だろうと、お色気&女性を消費する系の演出があると、すごく苦手なんで。。。)
ナヤンターラーがマイケルに助け舟を出すようなセリフで、すごく印象的なのもある。(ガヤトリのお宅に伺うシーンとか)
もっとナヤンターラーの独壇場みたいなシーンも見たかったな、と思うくらいよくできてた。(ヴィジャイ映画は、ヴィジャイにフォーカスがあたりすぎる故、ヒロインの存在意義がぼやける出来になることも割と多いので、【Bigil】はそういう意味でも大変よくできてる)
レディ・スーパースターとして大切に扱われているね!
(彼女の過去の出演作、【Naanum Rowdy Dhaan】や【Kolamavu Kokila】が引用されていたのは分かりました。他にもあるのかな? 分かる方、教えてください♪)
お声が、低めでクールですてきだね。(はっ。本人の声なのか?誰かが吹替えてるのか?)
ということで、ナヤンターラーの台詞がもっと聞きたかったなあと思ったわけですけど、声も低めでドスが効いてることもあり、クールでよいんです。
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ん? そういえば、ナヤンターラーって自分の声で出演しているの?
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ああ、こればかりは残念。吹替えでした。その美声は、Deepa Venkat(ディーパー・ヴェンカト)でした。【Viswasam】や【Darbar】でも、彼女がナヤンターラーを吹き替えてるし、他の女優さんも結構ディーパーが声を提供していて、今吹替アーティストとして超売れっ子。だから安定感ある台詞回しなのか、とも思うし、この選択は鉄板なのかな。
でも、マラヤーリーだけど、タミル語もちゃんと話せるナヤンターラー。イベントスピーチでもタミル語で発言しているしそのお声はステキだし、数少ないけど、タミル映画でも自分の声で数作(【Naanum Rowdy Dhaan】【Iru Mugan】【Kolamavu Kokila】など)は出演している。
タミル語が話せないから他の方が吹き替えるというのは十分に分かることだけど、タミル語が話せるのに吹き替えるというのは、「もっといい声の人に吹き替えてもらおう」みたいな映画制作(多勢が男性)側の事情であったりするんじゃないでしょうか。1990年代の頃は、ヒロインが掛け持ちする本数が多すぎて、アフレコに出る時間がなく吹き替えられることがある、という事情もあったらしい(ミーナとかはそうだったらしいというお話を以前聞きました)ですが、今はそんなことはないでしょう。
こういう流れは、本当は俳優さんにとっては屈辱だったりするんじゃないかと、ずっと思っているんですが。
(だって、ヴィジャイだって、10年位前のインタビューで「自分の声が吹き替えられるのは嫌だから、タミル映画以外に出るのはあまり関心がない」と語っていた位ですよ?)
【Bigil】が女性のことを大切にしていて女性(やマイノリティや出自に自信を持てない人たち)を応援している映画であることが、本当によく感じられていい映画だったので、声もナヤンターラー本人のものだったら、もっとよかったな、と思う次第です。
でも、ディーパーの声自体は、とてもよいです。映画館で、あの低音の響きをまた堪能したい。
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ということで、ナヤンターラーの項はおしまいです。近いうちにビギルの違う面から語りたいです。IMWでたくさんの人がビギルを見て、いろんな人のビギルの感想が読めるのもとっても楽しみにしています♪
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