NFC「インド映画の輝き」特集感想

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わなっかん。

京橋のフィルムセンター(NFC)の1ヶ月以上に渡る、インド映画大特集上映
残すところあと1週間になりました。

NFC インド映画の輝き

私はスケジュール的にたぶん、昨日の映画で最後の鑑賞になりそうです。
そこで、ざっと観た映画と、自分的な「好き度」などをまとめておこうと思います。


私、基本的に、どんな映画でも多かれ少なかれ必ず素晴らしい部分や興味深いこと、知らない文化を目の当たりにしてなるほど!と思うことがあるので、「この映画は1回観たらもういいや」「わたし的には駄作かな」という映画はあっても、「観なくてよかった」とか思うことはほとんどありません。
そして、映画館で見たときとビデオで見たときでは同じ作品でも感じ方がまるで違うことも多く、「この映画はビデオで見れば充分」なんてことも思いません。


今回のNFCの上映、予算不足も予算不足で、当初の「新作も上映予定」という告知だったのが結局以前にも日本上映されたことのある1980年代までの旧作品ばかり、しかもマサラムービーよりはアート系作品ばかりの上映でしたが、逆に言えば、ある程度名作と評価を受けているインド映画をこれだけの本数をまとめて見せてくれるのは、インド映画の歴史だとか、制作年代の頃にインドでは何が問題になっていたのかだとかを知る上では、ものすごく有意義な体験でした。

インドの独立した頃の前後あたりまでを描いた作品ならばともかく、1980年代に制作した映画でさえ、アメリカではマイケル・ジャクソンの「スリラー」が出たころだというのに、インドではまだ現代の問題としてこんなことを題材に映画にしないといけないほどだったのか?と胸が痛むものも多かったです。
かと思うと占領されていた国の文化にかぶれているお金持ちのインド人たちの生活ぶりにびっくりしたり。

題材としては胸が痛むのだけど、インドごはん好きの私としては、ほぼどの映画でも食事シーンだとかが出てくるので、それぞれの映画で興奮しました。

それから、今回のラインナップの中では数少ないタミル映画!3本ともマサラムービーながら社会派なもので、ハッピーエンドとはいえない部類の作品でしたが、どれも心に残る秀作でした。
昔の映画の監督って、今よりも志しが高かったんじゃないか、そんな気がしますね。。。


むんむん的好き度の目安
★★★★★ 素晴らしい!
★★★★  かなりよかった
★★★   楽しかった!または映画を観たという充足感があった
★★    充分興味ぶかく拝見できた
★     観られてよかった   


【アーン】 Aan 10/13鑑賞 1952年・ヒンディー

オリジナル版を半分近くにカットしてしまった日本ロードショー版だったので、話が飛びすぎて分からないところも多々あれど、たぶんダンス部分はほぼノーカットだったのではないかな。
だから、日本で初めてロードショーされたインド映画であるこの作品、日本の配給関係者はミュージカルに感銘を受けたというか、ダンスを紹介したかったんじゃなかろうか。 
そういう背景などを想像すると、ますますわくわくした。実際、1950年代でもこんな豪華な群舞ダンスシーンがあったことにも驚いたしね。
また、日本語字幕が時代を感じてよかったです。「そなたは」とか言葉使いが格調高くて。
映画そのものも、インドの独立時の頃の作品なので、高揚感がみなぎっていて、とても力強くて観た後の充足感が爽快で気持ちよかったです。

★★★★


【ミュージカル女優】 Bhumika 10/18鑑賞  1976年・ヒンディー

1940〜60年代に実際に活躍した女優さんの自伝に基づく話で、女優でなくひとりの女性としての自分を受け入れてくれる男性や居場所を求めて遍歴を重ねるというストーリー。よく言えば真実の愛を求めていた女性の葛藤の話だけど、悪く言えば、やさしい言葉をかける男性が次々に現れてそれに流されているだけ、結局自分の居場所を探しているつもりが、「自分」が無くなっててもの悲しいラストにつながってるんだな。
退廃的な話。
わたし的にはこれだけではつまらない話なのだけど、これがインド映画女優の話なので、映画界の内部が描かれ、特にミュージカルシーンの撮影をするシーンがたくさん入り、ダンスマスターが振り付けを指導しているところとか、興味しんしんな場面がとても多い。
インド映画界の舞台裏的なものに興味があれば、必見といってもいいと思う。

また、ボンベイ近郊と思われる町出身のヒロインが幼少時に食べていた自宅の食事が、現代の南インド料理の特徴としてよく紹介される、「バナナの葉」の上にごはんとカレーをのせたスタイルだったのがびっくり!南インドじゃなくても、バナナの葉が使われていたということか?

★★


【ゴアの恋歌】 Trikal 10/25鑑賞  1985年・ヒンディー

1950年代、まだポルトガル領だった頃のゴアでの話。インド人でありながら、すっかりポルトガル文化にそまっているお金持ちたちが、インドに解放される直前、これからの自分たちの身の置き所を不安に感じている心情はとても理解できる。
が、1950年代にインドでここまで西洋かぶれしている場所があったのね、とぽかーんとしてしまった。
牛肉だとか、何かの丸焼きを食べてるし、カレーを食べてるシーンがないし。主要な登場人物は誰もインド服着てないし召使もメイド服着てるし。
それから、何なの、この不純異性交遊状態の若者たちは。
それでいて、みんなキリスト教信者らしいのに、「あなたのカーストとは結婚させられない」とかいうセリフが出てくる。インド人じゃないようで、インド人。。。

インドって、ほんとに枠にはめられない、多様性な国だなあ、と頭を殴られたような気分になりました。

★★


【炎】 Sholay 10/26鑑賞  1975年・ヒンディー

アミターブ・バッチャンを語る上で、必ずといっていいほど出てくるこの映画【Sholay】。
確かに、もうそれはそれは、アミターブの魅力大全開。長身にあの血眼で、西部劇は似合いすぎ。
見所の連続で眠くなる暇もなかった。
インド映画でもここまで作れるんだ!みたいな映画としてのまとまりもあって、数あるインド映画の中でもこれが代表作として紹介されるのも納得。

が、見所多すぎでひとつひとつのシーンが長く、観てて疲れた(笑)
「オールスター映画」と呼ばれるやつで、主役級の大スターが何人も出てるから、ひとりひとりの見せ所が、それぞれに見応えはありまくりなんだけどとにかく長い。

この映画の元ネタの元ネタ・日本の【七人の侍】の方がその辺もっと緊迫感があって、侍たちは貧民たちの社会正義のために立ち向かうのだが、【炎】では個人の怨恨や復讐のために敵に立ち向かうのだ。
そういう意味では、個人の復讐の欲望の達成のために、こんなにも周りの人が死ななければならない話の展開は、ちょっとだけ嫌な気分になった。

★★★


【遠い道】 Sadgati 10/30鑑賞  1981年・ヒンディー

寺院の「僧侶」が、アウトカーストの農民をこき使い死に至らしめてしまう話。
これが、現代の問題として、サタジット・レイ監督がとりあげているカラー作品の、1980年代の映画なのだ。
神の前では人は平等、なんて叫ぶのもむなしいくらいの気持ちにさせられる、監督のやるせなさみたいなものが、オチがあるんだかないんだかわからないラストを観ていて余計に感じられた。
農民が死に向かって一直線!というように労働させられているシーンは緊迫感があって、涙。

★★★


【音楽ホール】 Jalsaghar 10/30鑑賞  1958年・ベンガル

【遠い道】の終映後、間髪入れずにこの映画が始まった。【遠い道】でずずーんと気持ちが落ち込んでるうちに始まってしまい、すぐに気持ちの入れ替えをすることができず、こちらの映画の冒頭数十分は入り込めず、疲れも出てきて寝てしまった。
(NFCさん、2本立てのサービスはうれしいけれど、休憩を数分入れるとかしてほしいです)

しかし、はっと目が覚めたら、後は物語が没落の悲劇に向かって一直線、目が離せない展開。
寝て見逃した部分が本当に残念。
1920年代の古臭い話の映画だけど、この映画観て、サタジット・レイ監督ものはこの日が初体験でしたが、他の彼の作品もぜひ観てみたいと思いました。

古典音楽と舞踊が大好きなザミンダール(地主)が、時代の流れで勢力がなくなりつつあるところ、新興の成金のお金持ちに見栄で張り合い、土地をどんどん手放し、身の破滅を早めてしまう話。
クライマックスの、お金がもう底をついているのに、全財産をはたいて最高のカダックダンサーと演奏家を呼んで音楽会を催すところが、とにかく圧巻。
踊られるダンスもものすごいし、観てる側もおひねりを渡す順番を争ったり、それで(全財産を使い果たしたのに)相手に勝った、と安堵する狂気。
そして音楽会が終わった後、次々に消えていく音楽ホールのランプのろうそくの光。
もう次のろうそくなどなく、消えていくだけ。

昔の古典音楽や舞踊は、こうしたお金持ちたちがパトロンとしてついていたことによって成り立っていた、というのは、華やかでもあり切なくもあり。古典音楽や文化に多少でも興味のある方は必見かも。

★★★★★


【雲のかげ星宿る】 Meghe Dhaka Tara 11/3鑑賞  1960年・ベンガル

健気で家族や恋人に自分を顧みずに尽くすヒロインが、家族や周囲の無理解や裏切りでとにかくいいことがなく心も体も消耗しボロボロになって、ラストのラストでやっと自分の本当の意思を叫ぶけれど時は既に遅し。。。という、まったく救いのない作品。
だけれど、ここまでセンチメンタルに流されず、現実にあるある、というシチュエーションを重ねて不幸を描ききると、気持ちいいというか。
ヒロインの気持ちも分かるけれど、裏切ってしまった周囲の気持ちも分からないでもない。でも家族なのにヒロインに散々おんぶにだっこしておいてその行動はないだろ、でも人間ってこういう汚い部分をたくさんもっているんだよね、みたいな。

今回の特集上映の中で、一番大泣きして、しばらく放心状態だった映画。
リッティク・ゴトク監督、覚えておこう。東京フィルメックスでの監督特集も見なきゃ。

★★★★★


【第一の敬意】 Mudhal Mariyadhai 11/4鑑賞  1985年・タミル

主人公のシヴァージ・ガネーシャンが太りすぎで、上映開始からしばらくはどうも感情移入ができなかった。ミュージカルシーンも、あまり大きい動きもなかったし、地味だなあ〜、というか。
(遺作の【パダヤッパ】の頃だと、だいぶスッキリしてるしなあ。)
でも、やっぱり、タミルの名優中の名優。表情だとかがほんとに魅力的で、コミカルな部分・シリアスな部分どちらも華があって、どんどん引き込まれました。

インドごはん好きとしては、ミーン・コロンブ(魚カレー)をシヴァージが食べるシーンが、食べ方も興味しんしんだし、笑いをとるシーンでもあるし、主人公とヒロインの信頼関係が強くなるひとつのエピソードとして、大喝采ものでした。
(もし、私が「インド映画の中の食事」なんてテーマに論文とか書いちゃったりしたら、絶対この映画を挙げるな!)

サティヤラージのチョイ役ぶり、しかも最初の登場が遺体で、というのにかなり笑えた。
(というか、サティヤラージも既に日本のスクリーンで紹介されていたのか、ということにも驚いた〜)
ヴァディヴッカラシ(【アルナーチャラム】で、怖いおばあちゃん役だった方)が、若い頃もこんなおっかないヒステリーな役をこなしていたというのにも唖然。
ジャナカラージがまだすっきりスマート(ヤなチクリ魔おやぢ役)で、でも存在感があって若いころも味があったのねえ、という感じ。タミル映画好きには、あの人の昔は、という観点で萌えポイント多かった。

バーラティラージャー監督ものは初めて観た。都会ではなく地方の牧歌的な風景の中で展開する社会的なドラマ。この監督も映画への志しがとても高いみたいね。
でも、せっかく志しが高いのに、ほんのちょっと観客に媚を売ったような安直な部分や、監督自身がスクリーンへの出たがり病が、せっかくのこの作品の格調高さをぶちこわしているような?
(でも、それがこの監督らしい、愛らしさなのだとも聞きました。)
いや〜、いい映画を見せていただきました。
話はそれますが、シヴァージ・ガネーシャンもサティヤラージも日本に紹介されているのだから、MGRの映画も日本にぜひ紹介してほしい〜。

★★★★


【三日月】 Moondram Pirai 11/7鑑賞  1982年・タミル
 
ほぼ文句なし。大傑作のひとつだと思う。
カマルハーサンの演技と身体能力の高さがとにかく圧巻。カマル最高。
シュリーデーヴィの幼児化した演技もすごい。かわいい。
1980年代ごろの南インドのセックス・シンボルだったシルク・シュミターのあからさまな妖艶すぎる演技もステキ。
シルク・シュミターが森の中で散歩してるときにヘッドフォン・ステレオで聴いていたのがビートルズの(しかもポールがヴォーカルの)【ミッシェル】というのも、ハートを鷲づかみ。(笑)
(楽曲使用許可は得てるんだろうか。。。?ビートルズの曲って昔CMなどのイメージソング使用や引用がものすごく厳しかった記憶があるけれど!)

インドごはん好きとしても、カマルがシュリーデーヴィにラッサムをライス(ライスを「サーダム」と発音していたことを聞き取れて、個人的にまたうれしかった)にかけて食べさせ、シュリーデーヴィが真似してカマルに食べさせ返す場面など、ググっときた。

滑稽で哀しいラストだけど、それがまたよかった。
(なんでシュリーデーヴィの両親は、彼女を助けた青年にお礼の挨拶もせずに連れ帰ろうとしたのか、という部分は理解に苦しむけれど。)
シュリーデーヴィとは哀しい別れだったけど、きっといつかまた違ういい出逢いがあるよ、カマル!と声をかけたくなる、いい話でした。

★★★★★


【お水よお水】 Thaneer Thaneer 11/9鑑賞  1981年・タミル

K.バーラチャンダル監督もの。彼がプロデュースしている作品は結構見たことあるけど、監督している作品はこれでまだ2本目。
KBって、商業映画監督でありながら、ものすごくものすごく志しの高い映画を撮る方だったのね、うう〜、すごい!
役人のたらい回し、責任回避の嫌らしさ、マスコミの売れることしか記事にしない体制、政治家の公約破り、世間はインドの村の問題よりも、今日はこのスターは何色のサリーを着ていたということのほうが関心がある。。。
視点も素晴らしいのだけど、何かあるごとに、この映画の舞台となる村の人々(特に子供)は踊る。
雨を請い、踊る。公約破りの政治家を追い返すことに成功して喜び、踊る…。
インド映画が、「踊る」ことを外せないほど、インドの人々の生活に踊りが密着しているんだなあとこの映画を観ていて思った。

ラーダーラヴィ(【ムトゥ踊るマハラジャ】のアンバラ様役だった方)が、ものすごく若くて、やっぱりヤな人・警官役を演じているのにも興奮しました!

インドごはん好きとしては、字幕に「おやつがあるの」と出ていた食べ物が「カンジ」(水粥)だったのが、興味しんしん。カンジって、おやつだったのか。。。(おやつは誤訳で「食事」のことだったのかも???)

あと、冒頭の、気持ちが悪くなるほどカラカラに干からびた土地で水を運ぶ少年が、拾ったピンナップに気をとられてせっかくの遠くから運んだ壺をひっくりかえしてしまうシーン、ピンナップのスターは(KBの秘蔵っ子としてデビューした)ラジニ...かな?

★★★★★


NFCの上映、あと1週間です。
これからお出かけになる方も、ぜひ楽しんできてくださいね。
いい映画ばっかりですよ。
(唄って踊ってハッピーエンド!な作品ではないかもしれませんが。)