【アーン】(Aan 1952 Hindi)

10/13、NFCのインド映画特集で、【アーン】を観てきました。

日本で初めて上映されたインド映画で、インド初のテクニカラー映画です。
俳優も監督も誰も知らないけど、上記の理由だけでまず観てみる理由があると思いました。
インド映画の話に限らず、いろんな分野で「最初に」行われた挑戦というのは、気合だとか勢いだとかが感じられる場合が多いから。
今回の上映は、日本で1954年にロードショーされた時と同じ88分の短縮版。(オリジナルは161分)
できることならノーカット版の方が見たいけど、1954年の日本でどんな形で上映されたのか追体験するのも悪くはないかな、と。

実は、最初の20分ぐらいうつらうつらしてしまったのだけど、だんだん盛り上がってきて、見終わっての感触としては、見てよかった、おもしろかったです!

館内に、日本ロードショー時のポスターが展示してありました。
撮影禁止だったのでここに紹介できませんが、当時の配給会社の方が心を砕いて初めてのインド映画を紹介しようとする意気込みが見て取れました。
(【ムトゥ踊るマハラジャ】が紹介されたときのような、丁寧さが感じられました)

近年インド映画が紹介されるとき、B級映画的な書かれ方をすることが多くて何かイヤなものを感じることがあるけれど、(【ラジュー出世する】のビデオパッケージのコピーとか、あまり自分には心地好いものではなかった)この【アーン】の紹介のされ方は、B級映画な扱いではなく、正攻法なものだと思います。
ポスターを見たら、これから観るその映画に、わくわくしてきました。

さて、日本公開版【アーン】を観て。これは観た人によりたぶん評価は大幅に変わると思います。

・現存のプリントの状態があまりよくなく、日本語字幕が見にくい部分が多い(最初、これで気が遠くなってしまった!)
・やはり、161分のオリジナルを大胆に88分にまで短縮しているので、明らかに話が飛んでしまっているところが多くて分かりにくい

以上の2点がとにかくガンですね。これをもって、つまらなかったと感じてしまう人もいるのではないかと。

でも、「日本で初めて上映されたインド映画で、インド初のテクニカラー映画」だということを意識して、
その1954年当時に、自分が観ていたらどうだろう?と想像しつつ見てみたなら?

それまで白黒でしか表現できなかった映画を、自分の作品でインドで初めてカラーで制作できるとしたら、まず何を表現したいと監督たちは思うだろう?

ダンスシーンがカタックをベースにしてるものが多いですが、そのくるくる回ってひらひらとなびく衣裳の色が素敵!
それを目いっぱい見せようとしているのか、群舞もたくさんいて、群舞のみなさんの衣裳も色がきれいで(振り付けのひとつひとつは簡単かもしれないけれど)かなり激しく踊っていて衣裳がみんなひらひらしているんです。
1950年代の映画はあまり観たことがないですが、50年以上前にも、こんなにダンスするインド映画があったんですね。
目から鱗でした。
グル・ダット映画とか観ている限りは激しいダンスって、ほとんどなかったように思うんで。
(ソロでものすごいダンスを踊るようなものはあっても、群舞も一緒に、というのが。もっとも、白黒映画で大群舞で激しく踊られても、目がついていかないし…)

衣裳がキレイ、ってことだけでなく、ダンスシーンにとにかく見応えがありました。
もうこれだけで、素晴らしい!と心の中で大喝采です。
その時代にこれを観ていたら、初めての体験で衝撃ですよね、こういうの。

色鮮やかな花もたくさん映ります。
ちょっと西部劇が入った、乗馬シーンもダイナミック。
ものすごい数のラクダが登場するシーンも圧巻。

せっかくカラーで撮るんだから、何でも頑張っちゃえ!みたいなのが全編に渡って感じられました。

また、ヒロインの姫君が主人公のジェイ(農夫)にさらわれて、今まで触ったことのない石臼を回したり、チャパティを見よう見真似で作ってみるところ、作りながらちょっと「エヘン!」って感じの表情を見せたりするところとか、インドごはんマニアとしては見逃せませんでした。
(さらわれたんだけど、ジェイに惹かれていて彼らの生活に順応しようとするお嬢様のいじらしい気持ちがこういったシーンで表現されているところがまた心ニクイ。)

冒頭を寝てしまったのと、話のはしょられ方に頭がついていかず、どんな話か紹介できないのが残念ですが、とてもおもしろかったです。
国は王様のものではなく、国民のもの!となるラストも、その時代を反映しているんでしょうが、力強くていい終わり方でした。

また観てみたいし、ノーカットのオリジナル版も観てみたいです。
いやー素晴らしかった。

10/31(水) 3:00pm、11/16(金) 7:00pm にも再上映されます。
ご都合が合うようなら、ぜひみなさんもご覧になってみてください。

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