【Rickshawkaran】(タミル,1971)

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Cast: MG Ramachandran, Manjula, Padmini Music: MS Viswanathan Lyrics: Vaalee Director: M Krishnan Nair Producer : Sathya Movies Release: 29 May 1971

ソングシーンやいくつかのシーンはちら見していたけど通して見るのは実は初めてな、MGRの【Rickshawkaran】(リキシャーカーラン)!

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まめ知識的に補足するなら、2007年のラジニカーントSivaji the boss】の中でラジニとシュリーヤー・サランがコスプレして物真似するシーンで取り上げられていたのが、この映画の中の「Azhagiya Thamizh Mahal」という曲。
そして、同じ年、ヴィジャイが秋にリリースした【Azhagiya Thamizh Mahan】は、この曲をもじってつけられたタイトル。

名作だかどうかは分かりませんが、リリースして35年以上たつこの映画が、タミルの人たちに忘れ去られず、今でも取り上げられるほどの価値や意味がどこかにあるのでしょう。

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Ulagam Sutrum Valiban】の2年前のリリース、ということになるMGR主演作品。
でも、 Ulagam~が1970年の大阪万博でロケしていることを考えると、そんなに大きく撮影時期は違ってないという気がするんだけど、こっちのMGRは、ものすごく動いてて自転車に乗りながらカラリパヤットをアレンジしたようなアクションとか、(本人がスタントをこなしたとするなら)かなりすごい。
CGがない時代でこれだけ動いてたらすごい!
しかもこのときだって50歳位でしょ。なら余計にすごい!
(ま、つっこみどころが満載なのは言うまでもないところですが。)

映画全体でみると、ストーリーとかをそんなに語るべきところはない感じ。
しかし!
ラジニの【バーシャ!踊る夕陽のビッグボス】が大好きなわたしとしては、いろいろ【バーシャ】にリンクして考えさせられること、この映画前半でのMGRのメッセージは、すごく感銘を受けました!

【バーシャ】は、ヒンディーでアミターブ・バッチャン主演でラジニも出演した【Hum】をタミルリメイクしたもの、と言われていますが、この【Rickshawkaran】のMGRの設定だとかに相当影響を受けているというかリスペクトを捧げていることに気づきました。

バーシャでラジニが演ずるマニカムは、リキシャーワーラー(オートリキシャーの運転手)です。
これはタミル語だと「Autokaran」(Autokaaran)。

MGR演ずるのは「Rickshawkaran」。すなわち、MGRの時代はまだオートリキシャーではなくその前身の自転車で走る「人力車」こと、「サイクルリキシャー」の運転手なのです。ラジニは自分の時代に合わせて、MGRと同じような、労働者を演じたってことがわかります。

そして、MGRはB.A.まで終了(大学卒業に相当)していて、英語も話せるのにリキシャーカーランをやっていて、それを知ったヒロインが「なぜ、英語ができて、B.A.もとっててこの仕事をやっているの!?」と驚くんですねえ。
バーシャのマニカムだって、(学のない)ただのリキシャーワーラーじゃなかったでしょ。

【バーシャ!】でナグマ扮するプリヤーが、マニカムへの恋心に気づいて、妄想して歌うシーンの曲は「アラフ」。
【リキシャーカーラン】でマンジュラ扮するヒロインがMGR扮するセルヴァムへの恋心に気づいて妄想する歌が、「アラヒヤ・タミル・マハル」。
(アラフが「美」の名詞、アラヒヤが「美」の形容詞。)
【バーシャ!】が、【リキシャーカーラン】からちょこちょこと引用してひねってることが分かって、とても楽しくなってしまった。

どこかでネットや本を斜め読みして拾ってきた知識ではなく、自分で気づいて腑に落ちる、っていうのはなかなかないけど、そういう瞬間ってたまらんね(笑)

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【バーシャ!】とオーバーラップするところに気づくだけでも相当楽しいのだけど、MGR映画のメッセージ性が、やっぱり何といっても素晴らしい!
ある意味説教くさいのに、MGRが語ると全てはフォトジェニックにさわやかにきまってしまうところが、脱帽だあね。

前、インド旅行のことで話していたら、「リキシャー乗るときは、対等に話していると運ちゃんがつけあがるから、厳しく命令する」という考えの人がいた。
喧嘩寸前のような乗り方。
インドには(実質的には今でも)カーストがあるかもしれないけれど、職業に貴賤はないし、人間は平等だってことから考えをスタートさせなきゃいけないと思うわけで。
なんだか違和感を覚えたものでした。

それが、この映画の前半で、ヒロインが乱暴にリキシャーを呼んでルールを守らずに乗ろうとするところを、おしゃれなリキシャーカーラン・MGRが毅然としてたしなめるのさ。
「リキシャーだからと、見下すのはどうかな?」と。

そうだよ、そのとおりなんだよ!
MGRが言ってくれたよ、すっきりしたよ!

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あと、マリーナ・ビーチ沿いの長い道路を、MGRがサイクルリキシャーで風を切って駆け抜けるシーンが多かった。
なんか、ただそれだけでも妙に素敵なシーンで、うっとりしてしまった。

マリーナ・ビーチの中でも、今、MGR記念館がある場所のあたりがよく映るんです。
うわー、この辺は21世紀になっても、そんなに雰囲気は変わってないのかも。
(浜辺だしね!)

なんか、ぐっとくる映画だったあ。

次にチェンナイ行けたときには、自転車借りてあそこを走ってみたいな。
MGRのように、赤いスカーフを巻いて、ね!

旧ブログ時代のコメント

とみクマ

さいくるリクシャってなんかいいですな。人力ということで、労力はたいへんなものがあるし、あまり遠くまではいけそうもないんだけど、エコロジーだし、風情みたいなもんがある。
MGRの服装がまたいいね。帽子といいスカーフといい、格好いい。カーキ一色の今のオートリクシャーの人たちの服はもうちっとなんとかならんもんんかな。
返信

むんむん

▼とみクマさん

カーキ色のあの制服も、ラジニがなんだかんだいってかっこよく着こなしてたからそれなりに好きだけど、確かにMGRのような服装の方が運転手のみなさんの気分ももっとノリノリになって見栄えもよいかもしれないですね。

サイクルリキシャー、まだ少しだけ今でもチェンナイで見かけるけど、今度乗ってみる?
マリーナビーチまでどう?って営業してるおじさんとかいたよね。
MGRの真似したら、盛り上がるかも!

コメント

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