Iruvar (ザ・デュオ) | マニラトナム

Indian Movies / インド映画の話

IruvarTitle : Iruvar (ザ・デュオ)  (1997年 Tamil 165分)
Director : Maniratnam (マニ・ラトナム)
Music : A.R.Rahman (A.R.ラフマーン)
Starring : Mohanlal, Prakashraj, Aishwarya Rai, Gautami, Tabu, Revathy

ある俳優と詩人(兼脚本家)の熱い友情が、政界進出・出世と絡み破綻していく。この二人をモーハンラールとプラカーシュラージが熱演。MGRとカルナーニディがモデル。アイシュワリヤー・ラーイの映画デビュー作でもあり、音楽、ダンス、映像、どれをとっても素晴らしい。
政治と密接な関係にあるタミル映画界ならではの傑作。

出演者

Mohanlal …Anandhan アーナンダン役 舞台出身の俳優。 MGRがモデル。
Prakashraj …Tamilselvam セルヴァム役 詩人。カルナーニディがモデル。
Aishwarya Rai …Pushpa/Kalpana アーナンダンの最初の妻・プシュパ / アーナンダンの愛人・カルパナ 2役。 カルパナはジャヤラリターがモデル。 ※声の吹き替えは、ローヒニ
Gautami …Ramani ラマニ役。アーナンダンの2番目の妻。元女優。ジャーナキがモデル?
Revathy …Maragatham マラガダム役。セルヴァムの妻。
Tabu …Senthamarai センダマライ役。セルヴァムの愛人。
Nassar …Ayya Veluthambi ヴェルタンビ役。 政党のボス。 アンナードゥライがモデル?
Rajesh …Madhivanan
Delhi Ganesh …Nambi ナンビ役。アーナンダンのマネージャー。
Madhubala …1曲目のダンスシーンに出演。

スタッフ

※マニラトナムのプロダクション・Madras Talkiesサイト内のIruvar紹介ページ

Cinematography – Santhosh Sivan
Music – A.R.Rahman
Choreography – Raghuram, Saroj Khan, Farah Khan, Brinda
Art – Sameer Chanda
Editing – Suresh Urs
Lyrics – Vairamuthu
Dialogue – Suhasini
Producers – Mani Ratnam, G. Srinivasan
Story, Direction – Mani Ratnam
Release Date:14 January 1997

Songs

Kannai Katti (5:56) – Hariharan
Hello Mister Edirkatchi (4:12) – Harini
Narumugaye (6:20) – Unnikrishnan & Bombay Jayashree
Venilla Venilla (4:59) – Asha Bhosle
Ayirathil Naan Oruvan (5:51) – Mano
Poo Kudiyil Punnagai (5:31) – Sandhya

あらすじ

アーナンダン(モーハンラール)は駆け出しの映画俳優。コネがあるわけでもなく、地道に映画関係者に映画出演直訴し続けているが、エキストラ同然の役から抜け出すことがなかなかできない。

ある日、アーナンダンは詩人のセルヴァム(プラカーシュラージ)と偶然出会う。
弱者である市民の正義を訴える詩を書くセルヴァムのファンであり、セルヴァムの脚本で演じたいとアーナンダン。
二人は固い友情で結ばれるようになる。

アーナンダンはようやく主役の座をつかむ。しかし撮影途中で制作が頓挫してしまう。
さらには離れて暮らしていた最愛の妻・プシュパ(アイシュワリヤー・ラーイ)が病死してしまった。

紆余曲折はあったが、アーナンダンは演技を認められ、やがてスター街道を驀進するようになり、共演女優のラマニ(ゴウタミ)と再婚した。
そして、アーナンダンはセルヴァムを脚本家として推薦し、セルヴァムも脚本家の傍ら、正義の実現のため政党活動も意欲的にこなすようになった。アーナンダンはそれを支援する。

しかし、アーナンダンも同じ政党に入ったことから、二人の歯車が狂いはじめる。
アーナンダンの俳優としての人気は政党への人気にも繋がったのだが、アーナンダンの輝くばかりのスター性に、セルヴァムの影が薄くなってしまうようなこともあった。
アーナンダンは盟友と一緒に正義の実現をしたい気持ちだったが、セルヴァムが自分の保身に徐々に傾くようになるのだった。

やがて政党のトップ、ヴェルタンビ(ナーサル)が引退した。セルヴァムが後を継ぎ、さらにはタミルナードゥ州首相に就任した。アーナンダンも大臣に就任するかと周囲は期待したが、セルヴァムは彼を外した。

アーナンダンは共演した新人女優のカルパナ(アイシュワリヤー・ラーイ)が、前妻のプシュパに瓜二つのため目を疑う。
アーナンダンとカルパナの共演作は当たり、次々と共演を重ね、ついに妻のいる身でありながら二人は恋に落ちてしまった。
カルパナは、友が州首相になったのだからあなたもなったら?と挑発することも。

大臣たちの不正を見てみぬふりをするようになったセルヴァム陣営に、アーナンダンは批判を口にした。
ついにアーナンダンは政党を追われた。

アーナンダンは俳優を続けつつ、新たな政党を立ち上げた。
アーナンダンの政党は、セルヴァム陣営に打ち勝ち選挙で大勝、今度はアーナンダンが州首相に就任した。

しかし、アーナンダンの心は晴れなかった。

カルパナは弟二夫人として結婚を望んでいたが、州首相になろうとするアーナンダンの周囲は許さず、傷心のカルパナはアーナンダンの元を去り…。

むんむん’s コメント

初めて観たときの日記(2006.1.3
2回目に観たときの日記(1 2 3 4

「本作は架空の物語である」と映画冒頭でテロップが出ますが、MGRとカルナーニディの実際にあったエピソードが下敷きになっているシーンが随所で現れます。
映画撮影中にアーナンダンが銃撃されて重傷を負うシーンなど、びっくりします。
(MGRはこの古傷のために生命を縮めた、とも言われているんですよね)

(モデルの実際の人生を全部模倣しているわけではないです。例えばMGRは3度結婚してますが【Iruvar】でのアーナンダンの結婚は2度。)

MGRとカルナーニディの対立関係に興味がある人にはたまらない映画かと。
タミル映画界と政界が切っても切れない関係なのを理解するには格好の映像資料にもなりますか。
(映画よりも現実の方がもっともっとドロドロしていたわけですけど。)

しかし、そんなことに興味のない方でも、インドの政治の世界に進んだ男二人の友情の物語として、見応えのある映画じゃないでしょうか。
長い年月の物語を3時間弱に圧縮してしまっている分、恋愛のエピソード部分がちょっと駆け足っぽくなってしまっている(しかも主人公の二人とも、妻の他に愛人も登場するのだから!)のが少々残念だけれども、それでも一つ一つのシーンが非常に味わい深いもので、(インド映画でよくある)無駄だと思うシーンはほとんどないです。

ダンスシーンも全て、映画業界を描く本筋と密接に絡みあっていて、ダンスを飛ばして観るなんて、もったいないです。(アメリカなどインド国外ではかなり短縮版だったようです、もったいなさすぎ!)

アイシュワリヤー・ラーイのダンスが素晴らしいというレビューが多いけれども、他に見所がないというのではなく、他の女優さんのダンスシーンも非常に叙情的で美しいし、モーハンラールも(太ってはいるけど)溌剌としてます。
ヴァイラムットゥの詞も素敵、サントーシュ・シヴァンのトーン抑え目の映像美も絶品。
多くのインド映画の監督がソングシーンはダンスマスターに任せっぱなしなのに比べると、マニ・ラトナム監督はダンスシーンにとてもこだわりがあるといいますが、その特徴がよく表れていると思います。

俳優さんの演技については、初めて観たときの日記(2006.1.3)にも書いていますが、なんといってもプラカーシュラージの熱演(怪演?)が光っているかな。
最初、正義感に満ちた青年だったセルヴァムが年を経るごとに、どんどん脂ギッシュな胡散臭い顔つきになっていく様はアッパレです。

それに比べるとモーハンラールは地味だなと1回目観たときは思いましたが、2回目のときには彼も名演だと思いました。欲を言えば、MGRの突き抜けた天真爛漫さの部分の演技をもっと見てみたかったかな?

政党のボスを演じたナーサルも、ものすごい変装というか、パッと見で彼だとは分からなかったけど、出番は少ないがものすごく味のあるいい演技をしてました。
ボスが欲をかくことなく、自分がまだ元気で州首相になれるというのに後進に道を譲ったのにもかかわらず、後継者争いが起こってしまう、という皮肉な事態がナーサルの演技で際立ってます。

妻・愛人を演じた女優さん(レーヴァティ、タブー、ゴウタミ、アイシュワリヤー・ラーイ)は、皆立場は違うけれどそれぞれに恋人の愛情を独り占めにはできないことを我慢しないといけない役どころで、これについて女同士の修羅場のシーンなどはないのだけど、何気ないところで哀しみが感じられていてよかったです。

アイシュワリヤー・ラーイはこれがデビュー作で、演技的にはまだそんなにパッとはしていないのだけど、監督がうまく演出している(声も南インド映画界で定評あるローヒニが吹き替えているから、台詞が棒読みとかいうのは全くない、というのにも助けられてますね。)し、とにかく華があるし、女優がインド映画では添え物のイメージが強い中、とても重要な役どころで、いやーいい作品をデビュー作に選んだねえ、という感じです。

(アイシュは当時、ヒンディー映画でもたくさんのオファーを受けていたけれど納得いく役ではなかったようで、地方映画のタミル映画でありながらこの作品をデビュー作に選んだといいます)

この映画はあまりヒットしなかったということですが、合点がいきます。
何しろ、モデルになった人間がまだ生きているという、大きな時間軸で捉えればまだほんの少し前の出来事がいろいろ映画のエピソードになっているんですから。
カルナーニディのファンやDMK支持者が観たらむかつくことこのうえないでしょうし、MGR側だってMGRが亡き後も後継者争いだったり後継者がカルナーニディと今でも争い続けているんですから。

この映画がフロップだったからといって、それをもってこの映画を観るのを後回しにしてしまうのは惜しいです。見所はアイシュワリヤー・ラーイのデビュー作だ、というだけではなく、見所だらけなんですから。

マニ・ラトナムと奥様のスハーシニは、(ライバルを排他的にして)自分の好きな政治家やスターを熱狂的に応援する傾向のあるタミルナードゥの民衆に即座に支持してもらえるタイプの話ではない、とてもデリケートな題材を、勇気をもって扱ってこの傑作を作り上げましたね。

もっと長い年月が経ってからこのテーマを扱ってもよかったのでしょうが、MGR没後まだ10年しか経過していない1997年に敢えてこの映画を公開したということに、感慨を覚えるし、敬意を表したいです。
(2回目の日記4もよろしければお読みください。)

今のところ、私の見たマニ・ラトナム監督作品の中ではこの作品が1番手を争うお気に入り。

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ところで最後に。

アイシュのモデルは、つい最近までタミルナードゥ州首相だった女傑・ジャヤラリターです(現首相はカルナーニディ)が、現在のものすごい貫禄のついたジャヤ様しか見たことのない方には、アイシュとのあまりのイメージの違いにのけぞるでしょう。

でも、ジャヤ様がMGRと共演していた全盛期は、恐らくその当時他の追随を許さないほどの圧倒的なダンスを彼女は踊っていたし、美しかったんですよ。MGRが惚れるのも当たり前だろう!って。
そういう意味では、ダンスが上手くて美しいアイシュにその役が回ってきたというのは納得です。
(私も、初めてこの映画を見たときは、のけぞったのですが、その後ジャヤ様映画を観て考えを改めました。)

この映画が気に入った方は、ぜひ、MGRとジャヤラリターの共演映画も観てみてくださいね♪

(2006.1.3 Pyramid社DVDにて初鑑賞。)

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