Alaudin (アラーウディン/アラジン)プラブデーヴァー ラグヴァラン

Allauddin Indian Movies / インド映画の話
劇場前に掲示されていたバナー

インドのマイケル・ジャクソン、インドのダンスの神様こと、プラブデーヴァーの2003年主演作。スラム街の住民全員の子供として育てられた孤児・アラーウディンの奮闘記。ヒンドゥー、ムスリム、クリスチャン、あらゆる信者たちが団結して育てたアラーウディンはどの宗教にもリスペクトを持ちつつ、スラムの貧困から皆を救いたいと願う青年に。
この人物設定、冒頭に人々が鑑賞していた映画【アラジンと魔法のランプ】(Allaudinum Arputha Vilakkum、1979年 タミル/マラヤーラム映画)の、物語の伏線としての使われ方がお見事! 2003年の映画ながら、2020年の今にも通じる「異教徒同士の共存」というテーマがプラブデーヴァーの高速ダンスやアクションとともにくりだされるマサラムービー。 また、2008年に逝去したラグヴァランの悪役としてのブチ切れっぷりや冴えが、晩年のキャリアの中でも最高潮の部類でヨイです。

Allauddin

Chennaiの壁に貼られていたポスター(2003 Aug.)プラブデーヴァー流血バージョン

作品データ

アラーウディン(アラジン)
Release:2003/08/15
Tamil
監督・脚本:Ravi Chakravarthi
音楽:Mani Sharma
出演:Prabhudeva,Ashima,Raghuvaran,Charlie, Dhamu, Vaiyapuri, Manivannan
振付:Sudhirkumar
編集:B.Lenin-V.T.Vijayan
撮影:Ramnath Reddy
DVD:PYD (ジャケットには字幕ありとされていますが入ってません;)
挿入歌)
♪ Uganda (Shankar Mahadevan) lyrics:Varman
♪ Yaaro (Chithra) lyrics:Yugabharathi
♪ Ukku (Shankar Mahadevan) lyrics:Varman
♪ Yendi (Kavita, Ranjith) lyrics:Vijay P
♪ Jeeboomba (Shreya Koushal, Kalpana, Karthik) lyrics:Yugabharathi ←「アラジン」をモチーフにしたアラビアちっくなすごくカッコいい曲!
♪ Goyakka (Mahalakshmi, Karthik) lyrics:Arivumathi

スラムの困窮・悲劇を嘆くシーン

あらすじ

1970年代後半のとある年の大晦日。ラジニカーント&カマルハーサンの【アラジンと魔法のランプ】を映画館で鑑賞して出てきたスラム街の大人たちは、捨て子を見つける。
彼らは捨て子を映画にちなんで「アラーウディン」と名付けて、町の皆で育てようと決めた。
アラーウディン(プラブデーヴァー)は、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教など宗教がバラバラのたくさんの両親の愛を受けて育ち、スラム街で頼りにされる若者に成長した。
そんな彼を、ミス・チェンナイにも選ばれたお金持ちの大学生プリーティ(アーシマー)は、育った環境の違いに戸惑いながらも愛するようになった。

アラーウディンは貧困から抜け出すために、金持ちの家で盗みを働いては、金品をスラムの人たちに分け与えるようになる。 人々も、【アラジンと魔法のランプ】のように、アラーウディンが自分たちを助けてくれる、と慕っていた。

ある日アラーウディンは、その日の金持ちターゲットである、悪徳権力者ガンガダル(ラグヴァラン)の邸宅に忍び込むと、ガンガダルが口論の末に相手を殺害する現場に遭遇してしまう。

このことが引き金となり、アラーウディンやスラムの人々は命を狙われ…。

▼本作での【アラジンと魔法のランプ】の引用については、掲示板過去ログも参照。
▼制作開始から公開まで、長期に渡ってしまい、プラブデーヴァーの久々の主演作だが、話題性がなくなってしまった模様。→フロップ。しかし、レビュー記事は概ね好意的なものが多い。
▼レビュー Sify [Web]

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むんむん’s コメント

2003年の8月28日。ラグヴァランのお宅で最近の出演作はどんなのがあるかをうかがっていた時、ご本人の方から、「この映画はいいぞ。演じていて充実していたよ。」と言われました。公開されて2週間前後経過していた時期ながら、チェンナイ現地でもさほど話題になっておらず、教えてもらわなければ気付かなかったタイトルでした。
彼は出演作は多いものの、滅多にどの作品が出てよかった、といったことを語る人ではなかったので(2002年頃のインタビューでも、1999年の【Mudhalvan】以降、納得できる役のオファーを受けていない、と苦言めいたことを話していました)、逆に彼から紹介した映画は相当面白いのではないかと即座に期待が膨らんだのです。(この時、もう一本、今制作中でこれはいい映画だ、とオススメされたのが、ヴィジャイの【Thirumalai】!)

そこで、その日の新聞から映画館情報・広告が載っているページを広げ、「イーガー劇場でやってるぞ」とわざわざ映画館の行き方も教えてもらって、「それでは今から観に行きます!」とお暇後、リキシャーに乗って観に行きました。

いやー、ラグのキレっぷりが爽快で、かつカッコよくて、それだけでも、大満足(笑)。
殺害シーンで、誤って自分の右手親指まで切断してしまったことに気がついたラグのリアクションぶりが、もう最高!!!

観た翌日、ラグに「観ましたよアラーウディン! 今、親指、ありますか?」と聞いたら、「あるよあるよ」と笑ってました。「あの切れて落ちた指は、プラスティックでできてたんだ。よくできてただろう?」とノリノリで教えてくれました。
(…確かによくできてたけど、不自然なほど長い親指でしたよ。笑)

主人公のアラーウディンは、スラムの住民のみんなに育てられ、どの宗教にも敬意を払う若者。異教徒同士の対立等が問題となっているインドにおいて、アラーウディンのようにどの宗教も受け入れる、というのは理想であると思うし、そういう人物設定って今までの映画で案外少ない。
だから、この着眼点は大変素晴らしいと思うし、この複数の宗教の信者である、ということが主人公の身を助けることになるシーンが出てきて、大変興味深かったです。

映画全体の出来も気に入ったので、その後もう一度、帰りのトランジット先のシンガポールの映画館で観ちゃいました。 

2018年6月、ラジニカーントが【Kaala】を公開しました。主人公のカーラーは仏教徒ですが、1曲目のスラムのラップソングシーンで、モスクの中で異教徒となるムスリムたちと共に祈りをささげるカットがあり、このアラーウディンという映画を即座に思い出しました。

プラブデーヴァー単体の映画ポスター

この2003年当時、プラブデーヴァーは単独主演ものとしては近年ヒット作に恵まれていない、という状態でした。 久々の作品だった、制作期間が長引いたということもあるのか、残念ながらあまり話題にならず、フロップ扱い。(実際私も、ラグに話を聞くまで、この映画に期待していなかった。)
主人公は「スラム」の若者なので、プラブデーヴァーのようなスリムな役者がすごくマッチしていたし、彼自身もとても好感のもてる演技をしていたと思います。(もうちょっと、表情が豊かだともっとよかった、かな。)

とはいえ、俳優としては窮地かと思われたプラブデーヴァーは2005年、シッダールタ主演【Nuvvostanante Nenoddantana】というテルグ映画で監督に初挑戦(プラブデーヴァーの後年のインタビューでは、監督を志したのではなく、これを監督してみないか、というオファーだったらしい)、それが大評判に。
さらに2007年1月公開のヴィジャイ主演【Pokkiri】(テルグ映画【Pokiri】リメイク)も監督して特大ヒット。その手腕を買われ、2009年にはそのまま【Pokkiri】のヒンディー版【Wanted】も監督することになり、それがサルマーン・カーン主演でまた大ヒット、監督として南北インドで大ブレイクしてしまうのです。
そしてその後も、監督したり、振付したり、見せ場のある重要な脇役を演じたり、主役も演じたり、タミルでもヒンディーでもマルチに活躍。
…ということは、いつかこの【Alaudin】という映画も、再評価されるのでは、と思っている訳です。
いや、再評価されてほしい!!! 
何ならリマスターもしてちょーだい!

派手な映画ではないけれど、観て損はない、いい映画だと思います。こういう映画が話題にされずに消えていくのは、もったいないよ!

※ただし、アラーウディンはいつも黒い人民帽(?)をかぶっている。チェンナイでこの設定は暑苦しい感じがするし、何故、「人民帽」なんだ? 公開後10数年を経た今も、はてなマークが頭の中で飛んでます(笑)

Allauddin

劇場前に掲示されていたバナー

ラグの役

悪徳権力者Gangadhar役。ラグが久々?にハイテンションで血も涙もない人を演じている。途中、右手親指を切断して失い、更に執拗な人物に。が、ラストで意外な真実を知り…という役柄。 本作の翌年以降は出演数も落ちてしまったので、【バーシャ!踊る夕陽のビッグボス】のマーク・アントニー役みたくイッちゃってる悪役としては、これが生前でほとんど最後の方なのではないかな。(悪役じゃないほうでは、後年でもまだまだ見るべき映画はあります!)

2003/08/28、チェンナイのアヌ・イーガー劇場で初鑑賞。2004/02/19初稿。

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