【タレンタイム】 (Malaysia,2009)

Indian Movies / インド映画の話

※東京国際映画祭2009でも上映です!
アジアの風部門
【タレンタイム】Talentime (Malaysia,2009,129min.)
10/17 10:50 – 12:59 (開場10:30)
六本木会場 [TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen2]
10/21 17:00 – 19:49 (開場16:40)
六本木会場 [TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen2]

(アジアフォーカス福岡国際映画祭2009鑑賞旅行の続き)

東京からのアジアフォーカス福岡国際映画祭への4回目の遠征旅行のラストを飾る鑑賞映画は、マレーシアの【タレンタイム】(TALENTIME)。

インド系の男の子が主人公の一人だというので興味があった、というのはあるけれども、インド系はインド系でも、タミル系の男の子だということを福岡に行く直前に知りました。

マレー人女性監督がインド人を登場人物にしたときに、いったいどんな描写をするんだろう、というのが関心のひとつでもありましたが、なんとその監督のヤスミン・アフマドが、この作品の日本上映が正式に決まった頃であるこの7月に急逝。アジア映画に関するサイトのあちこちで彼女を惜しむ声を目にしました。
この【タレンタイム】が遺作ということで、さらに注目が高まっていたようですが、まだ彼女の作品を1本も観たことがなかったので、その辺は感傷的になるわけでもなく、鑑賞しました。

Talentime

小さな町の高校で、音楽の才能を競い合う”タレンタイム”が開かれることに。最終選考の一人に選ばれたマレー系の女子生徒メルーは、インド系男子生徒のマヘシュと恋に落ちる。しかしマヘシュの母親は、民族や宗教が異なるメルーとの交際を認めず、会うことさえ禁じてしまう。
多国籍国家マレーシアで、文化、風習、宗教の違いを認めながら、ともに暮らすことの大切さとむずかしさを、女性監督ヤスミン・アフマドが、若者の恋や友情、家族との関係を通して温かく描く。(映画祭公式ガイドブックより)

いやー、やられました!
すばらしい。
あらすじだけ読むと、高校生の恋愛を軸としているので、あー若者の恋愛ものねー、ってつい青春ものを観る優先度は後ろにしがちな、高校時代から20年以上の日々が経過してしまった私なのですが。

監督はこれが遺作になるなんて思いもよらずに制作していたに決まっているけど、何か集大成のような映画です。
ビートルズでいうなら、実質的ラストアルバムの【Abbey Road】みたいな、何か張りつめた空気の先にある、神懸かりというか清廉な雰囲気。

素晴らしいところがありすぎて、何がいいとかあげてる場合じゃないくらい。
午前中に【ようこそサッジャンプルへ】を観て、気分が盛り上がってきて午後もこの調子で映画を観るぞ!と【タレンタイム】を観たんですが、午前中で満足して午後は観光だけ、なんてしなくてよかった。
スクリーンでこの映画を観られたことが、今回のこの映画祭の最大の収穫というか、ほんとに福岡に行けてよかったです。

一番驚いたのは、インド系ではなくマレー系の監督が、タミルのコミュニティに生きる人々をかくもリアリティとあたたかい目線を持って映画に登場させていること。

インド人がインド人を描くものしかほとんど観たことがないわたしとしては、
インド系じゃないけど同じ国に住む他の人種の人がこんな風に描くことができるなんて!と身震いしました。
(【スラムドッグ$ミリオネア】もイギリス人監督がインドを描いてはいるのだけど、そこに一緒に生きる者としての描写ではありえないので。)

タミル系男子生徒のマヘシュが「発話障害者」で、手話で話が進んだり、ちょっと一昔前の日本のドラマみたいだな、と思うところはある。
でも、このおかげでまくしたてるような会話で映画が進行することはなく、しっとりとした雰囲気を盛り上げている。

マヘシュに恋するメルーが、マヘシュを最初に観たときに「アーミル・カーンに似てかっこいいわね」と思うところが、マレー人でもインド映画を観たりするんだなということをさりげなく表している。
異人種でも同じ学校に通うし、友情も成立する。でもそれが恋となると途端にハードルが高くなる。

マヘシュのおじさんのエピソードが、心につきささる。同じ人種であっても、ヒンドゥーとムスリムの超えがたい壁。

お母さんを脳梗塞で亡くしてしまう、マレー人のハフィズが哀しみをこらえてステージにあがる場面が、展開としては分かっちゃうけどグッとくる。

華人とマレー人の壁の描写もでてくる。
映画では美化してしまってる部分もありそうだけど、でもこの映画の中で描かれる世界は、ありうることだと思う。

あんまり台詞も説明もない映画だけれども、ゆっくりと描写していくなかで、自分のセピア色になりすぎてぼけてしまった青春(笑)時代の甘酸っぱい気分だとか、恋心も大事だけど同級生より自分が秀でたいと思うライバル心だとか、でもライバル心があっても本当は分かり合って手を取り合いたいんだ、という複雑な気持ちだとか、いろいろな感情を一気に思い出しましたよ。

わたしは感情を揺り動かされるような映画、が大好きです。
そして、その国でないと作れない映画、が大好きです。
【タレンタイム】はまさに、そんな映画でした!

※「アーミル・カーン」は、ハフィズの母親役を演じた方がファンだったことにより台詞に登場したそうです。

(2009年9月27日 アジアフォーカス福岡国際映画祭で初鑑賞)

旧MTブログ時代のコメント

CHOO 2010年12月11日 23:36
こんちわ

ヤスミン監督のファンです。
今年2010年3月に、大阪アジア映画祭で遺作「タレンタイム」をみました。
むんむんさん同様、”来るな~”と分かっていながらハンカチ握りしめてました。
前前作の「ムクシン」でヤスミン監督にハマったのですが、
本当にみずみずしい情景描写とクスッと笑えるユーモア、民族間の違いを
理解し乗り越えようとするテーマなどなど、もっともっと作品を見たかった。
早すぎる急死に悼まれます。

実は大阪で、2011年1月22日に再上映されます。
劇中のピートテオの音楽も最高♪ http://www.peteteo.com/
私はマレーシア友人からVCDを入手してるけれど、
スクリーンでもう一回逢いたい作品です!


むんむんからCHOOへの返信 2010年12月13日 23:30
こんばんは。コメントありがとうございます。
監督ファンの方からのコメント、うれしいです♪

8月に東京で再上映されて、また涙しちゃいましたが、何回見ても傑作だと思います。
ムクシンは未見なんですが、日本でヤスミン監督DVD全集とか出ようものなら、即買います!
(普段、インド映画を見てることが多いので、マレーシア映画まで手が回らなかったりしてますが。。。)

大阪でも再上映ですかー。
ロードショーもされたらいいのに、ですね!

コメント

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