【パダヤッパ】サウンドトラックCD

Music / 音楽の話

jpncd.jpgラジニカーント主演で2001年に日本公開された映画【パダヤッパ いつでも俺はマジだぜ】の日本盤サントラCDの紹介、及び楽曲・ダンスシーンに関するページです。

作曲:A.R.Rahman (A.R.ラフマーン
作詞:Vairamuthu (ヴァイラムットゥ)
監督:K.S.Ravikumar (K.S.ラヴィクマール)
主演:Rajnikanth (ラジニカーント), Ramya Krishnan (ラミヤー・クリシュナン), Soundarya (サウンダリヤー)
公開:1999年4月(日本公開2001年3月)

Padayappa ACD Japan

日本盤サントラレーベル:ムジカテック
日本語訳詞、ライナーノーツ付き。
発売当時の価格:2,000円 (現在廃盤)

2001年春、【パダヤッパ いつでも俺はマジだぜ】のロードショー中、劇場のグッズ売り場に積まれていました。
しかし、映画を観た後買っていくお客さんが多いとみえて、一時品切れになっているときもありました。

【ムトゥ 踊るマハラジャ】(1995年)のA.R.ラフマーンは、インド音楽にテクノを取り入れる大胆な実験をしている最中、という感じでしたが、4年後の【パダヤッパ】では、ラジニがタミルでの大御所度・たれいばる度(民衆のリーダー度)を増したのに比例して、南インド度・タミル度がかなり増している感があります。

1999年当時のA.R.ラフマーンといえば、ヒンディー映画でも大活躍していましたが、タミル映画でも意欲的に傑作を連発しています。
この頃の彼の担当した、【Sangamam】や【Mudhalvan】は、本当に素晴らしい出来で、それに比べると【パダヤッパ】は若干、ラフマーンの歴史の中では埋もれてしまう傾向があるような気がします。
(実際、わたしも【Sangamam】のサントラの方がもっと、お気に入りです…。)
当時、ラフマーンはラジニ映画では手抜きしている、という厳しい批評もあったようです。

が、ラジニ映画って、他のインドやタミル映画と違って、「ラジニ映画」というジャンルなんですよね。
ラジニ映画って、「ラジニに合わせて」作曲される度合いが、他の俳優のために作曲するのよりも遥かに強いらしく、そういう意味ではラフマーン側の冒険がしにくかったりするみたいです。

【ムトゥ】の時は、とくにスケール感にこだわったんだ。観客は誰が主演なのか知っているから、スーパースターにふさわしい誇張が求められた。
だから壮大になるように気をつかった。それに比べて今回は、物語のイメージに沿うように心がけた。音楽的な実験は控えめにし、かつタミルの風土の匂いが漂うような感じを目指したんだ。
(日本版CDライナーノーツ内の、ラフマーンのインタビューから引用。)

ラフマーンは「ラジニ映画」というジャンルにのっとって、スーパースター・ラジニを最大限に盛り上げるべく、【パダヤッパ】を作曲していたわけですから、単純に同時期の他の作品とは比較できない気がします。

でも、なんだかんだいって、お気に入りなんですよ!
2001年の日本公開から5年以上経って、わたしは南インドの古典芸能のバラタナティヤムやカルナティクを少しかじりました。(本当に少しだけ、ですが!)
さらにタミルのフォークダンスやバックの楽器演奏を日本で観る機会にも恵まれたので、多少なりとも、このサントラの音楽のバックボーンの理解が進んできた今、聴くたびに発見が多々あります。

1998年に【ムトゥ】が日本公開された頃の、日本のメディアに対するインタビューでも、「自分としてはタミルの伝統的なスタイルを取り入れて、歌を作っていきたいと思っている」(SWITCH1998年7月号)とタミルナードゥ州・チェンナイ育ちのA.R.ラフマーンは話しています。

ぜひ、タミルなラフマーンを、1999年の【パダヤッパ】で楽しんでほしいです。
(現在では、【スラムドッグ$ミリオネア】などで、知名度や受ける仕事がワールドワイドになりすぎて、ローカルでタミルっぽいラフマーンの新曲をあまり聴くことができないのが、ちょっぴりさみしいです。)

中古盤ならば、今でもAmazonのマーケットプレイスなどで購入可能です。
海外盤であれば、今でも現地で普通に買えますので、インドやインド人街を旅行することがあれば、ぜひ探してみてください。

各楽曲とミュージカルシーンについて

Padayappa (S.P.Balasubramaniam) パダヤッパ 5’23”

En Peer Padayappa ラジニ登場を大々的に盛り上げる、最初の曲。
 上記のラフマーンのコメントどおり、タミルの土着的な雰囲気がぷんぷんで、しかもスーパースター・ラジニに似合う壮大さも持ち合わせています。
 S.P.バーラスブラマニアムの歌声の力強さも、スーパースターを盛り上げまくってます。 

 この曲の楽器も、タヴィルウルミというタミルの打楽器、ナーダスワラムというタミルでポピュラーなラッパがメインになっています。
 タヴィルとナーダスワラムは、結婚式やお寺での演奏でよく見かける、タミルの人にとって非常に身近な楽器です。 
 (※タヴィルとナーダスワラムは、古典音楽でも民俗音楽でも両方で演奏されます。)

 映像的にも、村の結婚式が出てきますが、そのときにタヴィルとナーダスワラム楽隊が列になっているところを新郎新婦が通りぬけていきます。

 曲のクライマックスに向かう前の間奏部分で、赤パン豹柄ダンサーズを従えて、ラジニの友だち役であるセンディルがナーダスワラムを吹き、ラメシュ・カンナがタヴィルを叩いてます。
 (その前方をラジニが宙返りしていくんですね~。かっちょええ!)

 また、強烈なコスプレなダンサーがたくさん登場しますが、ほとんどがタミル、または南インドで実在するフォークダンスをモチーフにしているようです。
 (壺のような飾りを頭に載せて踊る「カラガーッタム」や、虎・豹の格好で踊る「プーリアーッタム」など。)
 ロードショー当時は、そういうことに全く気がつかなかったので、なんじゃこりゃ~!(大笑い)状態だったのですが、タミルのフォークダンスだとか楽器について多少理解が進むと、感じ方がまた違ってきました。
 タミルへの熱烈なオマージュが感じられる1曲だし、こういうタイプ(クットゥ・ソング)が似合うスターって、実はそんなに多くはないです、というか、今だったらラジニカーントヴィジャイが1番似合ってると思いますが、いかがでしょう?

Minsara Poovea (Srinivas, Nithyasree, Sriram) 花のような乙女よ 6’17”

Minsara Poove 1曲目とはガラリと雰囲気が変わります。
 1曲目はタミルのフォークソング系の雰囲気が濃厚でしたが、この2曲目は、ラミヤー・クリシュナンが南インド古典舞踊系(タミルのバラタナティヤムとテルグのクチプディから着想を得ている)なダンスを踊り、音楽も南インド古典音楽(カルナーティク)をモチーフにしています。(途中打ち込み音やイマドキの楽器やフレーズを混ぜてるので、もちろん、純然たる古典音楽ではありませんが。)

 女性ムリダンガム隊(打楽器:向かって左側)+ヴィーナ隊(弦楽器:右側)の大集団(!)を後ろに、ラジニが「タキタタカディミ♪」とショルカットゥ(口唱歌)で歌いだします。
 (ラストでラメシュ・カンナも、ムリダンガムを激しく叩いてます!)

 2001年当時は、「タキタタカディミ」という歌い方に接したのが初めてで、それが古典音楽で普通に歌われてるものだと露知らず、でした。
 なんだろ~、「竹がどーたら」みたいなフレーズがいっぱい出てきてヘンな曲。おもしろーい、って感じでしたが。
 (※タキタタカディミうんぬん、というショルカットゥは詞ではなく、掛け声の一種みたいなもので、それ自体に意味は全くありません。ご興味のある方は、ぜひ、カルナティク音楽に関して検索してみてください。)

 映像的には、ラミヤー・クリシュナンの踊りがとにかくすごい!です。ラジニの「タキタタカディミ」etc.のショルカットゥに合わせて、どんどんスピードをあげて(ファーストスピード→セカンドスピード→サードスピード…と進むさまは、カルナーティクやバラタナティヤムの様式にあわせてると思われます)踊り、曲のクライマックスに達する過程は、圧巻です。
 現代もののタミル映画で、ここまで古典系(フィルミーダンスには違いありませんが)でスリル感のあるダンスシーンはあまりお目にかからないと思います。

 ラジニは踊りでは完全に喰われちゃってますが、白いクルタに赤のデュパタを肩にかけたいでたちがたまらんです。そして表情がオトナでステキです。
 途中で、洋服姿で二人で馬小屋で踊るシーンとか、二人とも色っぽくてすてきー!
 (このシーンで、ヴィーナの音が、ラミヤー・クリシュナンがラジニにモーションかけるところにシンクロして、すごーく印象的です。)
 また、時々挿入される、わずかに首を揺らして遠くから見つめているサウンダリヤーも、すごくキレイ。
 ラブレターを渡そうとして失敗するシーンも挿入されたり、映画のストーリーの流れにとてもマッチしているし(DVDのソングチャプターでこの曲だけを見るのではなく、ぜひその前からご覧いただきたい!)、名ミュージカルシーンのひとつだと思いますっ!

Vettrikkodi (Malaysia Vasudevan) 勝利の旗を高く揚げろ 4’39”

 ダンスシーンではありませんが、パダヤッパの家族たちが働いて働いて、名誉を回復していく様をこの音楽をバックにテンポよく見せていきます。
 
Suthi Suthi (S.P.Balasubramaniam, Harini) 振付:Brinda あなたに触れられると 6’25”

Sutthi Sutthi この映画の中で、一番かわいらしい曲。ラフマーン・ファンで、大好きな曲にこれをあげる方も多いんではないでしょうか?

 サウンダリヤーがサリーを少し短めにして元気に踊ってるところが、わたしには特に印象的。
 残念ながら、この曲でのラジニはイマイチ精彩がないと思うのだけど、サウンダリヤーのキュートさにひっぱられて、他のダンサーよりテンポがコンマ数秒遅れながらも、頑張って踊ってます。
 (かわいいサウンダリヤーと比べ、その後ろの女性ダンサーたちの顔に怖い人が多いのが、ちょいとツッコミどころか? 笑)

Kickku (Mano, Febi) 気分がいいぜ 5’27”

 パーティで酔っ払ったラジニが、陽気に踊る曲。
 飲酒シーンは、教育上よろしくないとかで、インドではこの曲や前後がばっさりカットされて上映されていた所もあるんだとか。
 (わたしが初めてインドで観たときも、たぶんこの曲のあたりのどこかが飛ばされてました。)
 酔っ払いの踊りなので、スローだから真似して踊りやすいです(笑)
 (下記のライナーノーツ内の白黒写真がこの曲。)

♪ Suthi Suthi (Instrumental) 2’32”

 ラジニがハーモニカを吹きながら歩くシーンなどで使われていた曲。

 サントラには入ってないですが、ラミヤー・クリシュナンが中盤、父の死後に黄色のパンジャビを着て怒り狂って踊るシーンもあります。 (Rudra Tandava ルドラ・タンダヴァ;インド古典舞踊で有名な、シヴァ神が怒って踊るもの。)
 個人的には、このシーンの曲も収録してほしかった!

パダヤッパ

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