【Theri】(2017年・南インド映画祭邦題:テリ~スパーク~、今度別の映画祭で、「炎」という邦題で上映されるそうです)で、ヴィジャイがゴロツキどもに即席授業をするシーンがあるんですが、
「インドでロケットの製造地は?」とヴィジャイが質問するくだりがありました。
ゴロツキの答えは、「シヴァカーシ?」(2005年のヴィジャイの【Sivakasi】から持ってきていることは一目瞭然。自主上映時の時など、タミル人観客がどっと沸いていた場面でもあります。)
で、当たり前だけど大間違いで、ヴィジャイにお仕置きされるんですけどね。
南インド映画祭用に日本語字幕を作っていた際、正解を言う台詞はなかったし、ロケットの製造地と言ってるけどそれが宇宙開発センターだとか研究所のことを指すのかも訳しているときはよく分からず、ネットで検索しても確信のもてる答えを見つけられなかったんだけども。
正解はどこなんだろー?と漠然と、ずっと思っていたんですよ。
2021年1月8日から日本公開のこのロケット打ち上げ映画のおかげで、正解は「ベンガルール」(バンガロール)だとはっきり認識しました!
もう、それだけで見てよかったよ!
そうか、南インドだったんだ!
っていうか、火星に探査機を送り込むことにインドが成功した、というニュースがあったことを、2017年に字幕翻訳した当時気付いてなかったなんてなあ、と悔しいです(笑)。
※ちなみに、【Sivakasi】は、花火や爆竹、クラッカーといったもののインド屈指の大産地です。
【ミッション・マンガル】、観てきました。新年の始めに見るにふさわしい、希望がある映画でした! 9歳の息子にこの主役の人は誰?と聞かれたので「【ロボット 2.0 】で、スマホのオバケだった人だよ」と答えたら、「分からなかった…」とショックを受けていました(アッキーの芸幅広くて素敵です☆)
— Noriko(むんむん) (@munmun_t) January 10, 2021
(以下、自分の感想ツイートを転載、加筆。)
アクシャイ・クマールが、タミル人科学者でインド大統領になったアブドゥル・カラームに電話したふりをする場面でのタミル語、痺れました。こういうハリウッドっぽいインド映画で、英語じゃなくてタミル語を使ったの、脚本家たちが敢えてそう演出したのかな。リスペクトのあるシーンですね。
(でもさ、【ロボット2.0】であんなに素敵な悪役を演じたということを、ミッション・マンガルの日本公式サイトなどはちっとも触れないというのは、2.0のあの役は隠しておきたい事項なのだろうか… 私は2.0でやっとアッキーファンになった位なのに~。)
ヴィディヤー・バーラン、彼女の安定感ぶりが大変すばらしかった。彼女がプーリ(南インドでポピュラーな揚げパン)をじゃんじゃん揚げるってだけでも気分が上がるというか。
ソーナークシー・シンハーも孤児から宇宙開発チームに受かるまで、闘志を秘めてのし上がって来たんだろうな、と説得力のあるカッコよさがあって、よかった。
ニティヤー・メーネン、ミッション・マンガルでついに日本の全国劇場公開作品に初登場、ですよね。以前日本に来た時に、出演作だとか自分の映画界での立ち位置や有り方についてこだわりのあることを熱弁していたっけ。今回、女性としてとても共感できるいい役だったと思うし、とても嬉しい。
火星プロジェクトに配属されたことに失望して、今仕事が忙しくないから、とニティヤー夫婦が体外受精をして妊娠するシーンがありました。
あっという間に、さらっと描かれていたけど、たぶんあれ、義母に子どもを作れと圧力を受けていたけど、なかなか授からなくって(不妊症)悩んでいたんだよね。
それでいて女性だけど宇宙開発に携わりたいから、妊活に専念すると閑職に追いやられるんじゃないかという不安との闘いもずっと続いていたってことなんだよね。
子どもは欲しかったけど、火星プロジェクト配属の後に思い切って体外受精を受けるというのは、本当に本人的にはガッカリしたから体外受精を受けた、ってこともあるんだろうな。
自分もなかなか子ども授からない中、長年会社に行きながら通院していたから、なんかその頃の行き詰まり感がブワっと思い出されて胸が詰まりましたです。
【ミッション・マンガル】、女性が活躍して爽快だったとはいえ、(閑職の)火星チームに集められたのが女性ばかりだったのは、それは「女性」だからという面もあったのかな。そう思うと心が痛い。逆に火星ミッションが成功して、その後インドの宇宙開発で女性は躍進したんだろうか。
ということで、ニティヤとローヒニが、インド映画界で消費されがちな女性が、生き残っていくために自分たちが心がけていることなどを熱く語った6年前の神戸の会を思い出してます。
【インド映画における女性性の表象】シンポジウム備忘録 https://t.co/RdFntL2fP2— Noriko(むんむん) (@munmun_t) January 10, 2021
↑ の、シンポジウムで、ニティヤーたちが「自分のスペースを作ること」を熱く語っていて、それは裏を返せばすごく苦労が伴っているのが透けて見えていた。「もともと女優になることを希望していなかったから、あまり主演女優を張ることに執着していない」というニュアンスのことも話していて、負け惜しみ?な解釈もできるような気もしていた。きっと本当はこれでいいのか、と迷ったりしながら、去勢を張ることもあったりしながら、俳優のキャリアを積んでいるんだな、と。
そんなこんなを語っていた数年後、ニティヤーは主演じゃないけど重要な役で、ミッション・マンガルに出たんだな。
本題のロケット打ち上げ話にかかるエピソードなども非常に面白くて、インドに興味なくてもぜひいろいろな人に見てもらえるといいなあと思える秀作でした。若い人にもじゃんじゃん見てほしい。
でも、女性が活躍する映画で勇気づけられる、とか、単純には思えないひねくれものなのだ。わたしは。
(「感動をありがとう」とか「勇気をもらった」とかいう類のフレーズが、そもそも大嫌い、だしね!)
男尊女卑な場面に遭遇とか、女性としてキャリアだとかいろいろ行き詰まるとか、お母さんになるとお母さんの幸せはあるが「●●くんママ」と呼ばれて自分の名前が呼ばれなくなって自分という個人が無くなっていくような喪失感だとか、映画を観たついでに、自分に照らし合わせて忘れかけていたことも思い出しまくったり。
そして、うらやましかったり胸がいたかったり、理想をかかげるのと現実のギャップだとか、ネガティブなところもグサッグサッと刺さったというか、結構つらかったです。
なんだそりゃ、という感じですが。
でも、そういう自分の内面を思い起こさせて感情を揺すぶれるというのは、それだけ力がある作品だ、とも思います。
観られてよかったです!
アッキーみたいに女性を活かせる人が、もっともっと世の中にふえていくといいな。
火星チーム最長老のあの、おじいちゃん(H・G・ダッタトレーヤ)のように、ハイカーストでも他の宗教やカースト違いの人にも優しい目線があって、女性を見守ってくれる人がふえていくといいな。
男性諸君、よろしく。
(配信だかDVDを出すときには、踊るシーンの歌詞にも、ぜひ日本語字幕をつけてほしいな☆)
(おじいちゃんの役名も、南インド的な発音で字幕に表記を直して、ほしいなあ。Ananth Iyengarって、アーナンド・アイヤンガルとか言うんじゃないのかな。なんか違う表記で違和感が続いたよ)
【参考】
↑ ヴィディヤー・バーラン、シャルマン・ジョシの前の日本公開作は2015年だったんだな、ということで。
コメント