Mississippi Masala (ミシシッピー・マサラ) | ミーラー・ナーイル デンゼル・ワシントン

Indian Movies / インド映画の話

ミシシッピー・マサラ
ハリウッドの黒人オスカー俳優・デンゼル・ワシントンが「アフリカ(ウガンダ)に住んでいたのを追い出されて」アメリカに移り住んだ「インド人」と恋に落ちるお話…と言われたら、がぜん興味が出てくるってものでしょう! 一筋縄ではいかない、NRIの星・ミーラー・ナーイル監督が放つ、社会派だけど瑞々しいラブストーリー…な1991年アメリカ映画。 

監督:Mira Nair (ミーラー・ナーイル)
音楽:L. Subramaniam (L.スブラマニアム)
出演者:Denzel Washington – Demetrius Williams, Sarita Choudhury – Mina, Sahira Nair – Young Mina,
Roshan Seth – Jay, Sharmila Tagore – Kinnu, Ranjit Chowdhry – Anil
日本公開:1992年12月14日 岩波ホール
ベネチア国際映画祭最優秀脚本賞受賞作 118分

あらすじ

1972年。ウガンダでアミン将軍は、原住民であるブラックアフリカンを差し置いて裕福にウガンダで暮らすアジア人(=ほとんどはインド人)を追放する政策を打ち出した。ウガンダ鉄道建設のために英国植民地時代にインドから父が移り住み、ウガンダで生まれ育ったジェイ(ロシャン・セス)。 自分の故郷はウガンダで、インド人ではなくウガンダ人だと信じていたが妻・キヌと5歳の娘・ミーナ(サリタ・チョードリー)と共に、ウガンダを追われることになった。

1990年。ジェイ一家はロンドンで暮らした後、2年前からモーテルを経営する親戚を頼り、アメリカ・ミシシッピー州に移り住んでいた。アメリカの中でも人種差別の風習が色濃く残るこの町で、24歳の美しい女性に成長したミーナは窮屈な思いをしながらモーテルの清掃を手伝っていた。
イライラしながら運転していた車でミーナは、黒人差別を受けて苦労しながらも会社を立ち上げてカーペットクリーニング業を営むデメトリアス(デンゼル・ワシントン)の車に当ててしまった。 祖国のアフリカを知らないアフリカ系アメリカ人と、祖国のインドを知らないがアフリカに住んでいたことのあるインド人。不思議なシンパシーで若い二人は急速に惹かれあっていく。

ジェイは、ウガンダにいた頃は、ブラックアフリカンたちの人権を守るために奔走していた弁護士だった。それなのにウガンダを追われたという精神的ショックが大きく、アミン政権時代に不当に没収された財産の返還を求める手紙をウガンダに書き送るだけの日々を送っていた。

ついに、ウガンダからジェイのもとに、財産返還のために口頭弁論を行うのでウガンダの裁判所へ出廷を促す通知が届いた。ちょうどその頃、ミーナとデメトリアスの恋がそれぞれのコミュニティで明るみになり、それぞれが激しい反対に遭う。
アフリカに未練が残ったままでいたジェイさえも、娘の伴侶になるのがアフリカンであることを許すことはできず…。

むんむん’s コメント

「アメリカ映画」のクレジットなせいか、日本のインド映画業界の話題でほとんど名前が挙がったことがなかったこの映画。 ミーラー・ナーイル監督ものは、日本に結構紹介されているので、【モンスーン・ウェディング】【カーマ・スートラ】【その名にちなんで】等、日本で紹介されているものは割と見てはいたんだけれども、実はそんなに好みではなく;;; 長いことVHSテープでしか発売されていなかった(すなわち廃盤)作品が借りることも入手することもできないことをいいことに見ていなかったんですけど、この2年ほどで風向きが変わりました。
そのVHSの1本、ミーラー・ナーイルの代表作【サラーム・ボンベイ!】をついに入手できて観てみたら、今まで自分が監督に対してもっていた先入観を覆す面白さだったんです。こ、これはその次の作品の【ミシシッピー・マサラ】も見なくてはっ!と探すこと1年。その間に、【しあわせへのまわり道】が公開。その映画に出てきた主人公のタクシードライバーに嫁ぐ年増のおばさんを演じていたのが、【ミシシッピー・マサラ】のヒロインのサリタ・チョードリー。これはますます見なくては!と探しているうちに、ゲットできましたー!

手に取ってみて、おおお、相手役はデンゼル・ワシントンという超メジャーな方ではないか! ウガンダにインド人が住んでた? アジア人追放政策? 世界のインド人街を調べるのが趣味でもあるわたくしとしては、後から後から興味を引くキーワード。 もっと早く入手に走ればよかったね。

そして、実際、映画も非常に面白かった。はにかんだ感じでお堅いラブシーンを演じるデンゼル・ワシントンもレアでよかったけども、サリタ・チョードリーが映画で登場したばかりの頃はイライラした気の短いお姉さんだったのが、デンゼルと心を通わすうちに、ルックスも身のこなしもどんどんキレイになっていくのがすごく印象的。
(逆に、【しあわせへのまわり道】での老けっぷりも、女優としての演技の徹底ぶりだったのかしら?と感心してしまう~)

そして、異文化間の若者の前途多難な恋を描いているけど実は真の主役は、ウガンダに未練たらたらで時間を浪費しているパパだったりするのでは!?という風情で、後半のロシャン・セスの「心の旅」が、なんとも胸を打ち、抒情的なクライマックスへ。
(このお方、【タイガー 伝説のスパイ】にも出てたようです。そ、そうだったのか!)

みんな心に傷を持っているんだけれど、未来に向かって顔を上げていく。

いやー後味のとてもいい映画でした。 なんでこれ、DVD化されないの?
リマスターしてブルーレイ発売していただきたいものです!

(レーザーディスクの中古品も発売されていたので、安く出回ったら、買っちゃうかも…)

インド映画ファンとしては、ラージ・カプールやシュリーデーヴィ(シュリデヴィ)がチラッと登場するのも、ほっこりさせられます。特にラージ・カプールの歌が流れてくるシーンは、登場人物たちの心情とオーバーラップしていて、グッとくるものがありました!(それに対する、ウガンダ側の反応も…)

インド映画とかくくらず、インドや世界情勢に興味のある方には、誰にでもおススメしたい秀作!
機会があったら、ぜひ!

(2016年、日本版VHSで鑑賞。)

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