日本の映画祭公式サイト上では、【ミスター&ミセス・アイヤル】日本初上映時にコーンコーナー(コンコナ)・セーンシャルマーが来日してどんなコメントを残したかのアーカイブが現在見受けられないので、ここに記録しておきます。
アジア・フォーカス福岡映画祭2003 公式サイトに当時掲載されていた来日ゲストのページより、コンコナ・セーンシャルマーのコメント
この映画を代表して初めて日本に来られたことを大変嬉しく思います。そして日本の観客のみなさんの反応を楽しみにしています。作品が海外でどのように受けとめられるのか、自分の国のように予想ができないので興味がありますから。
これは市民暴動を背景にしたラブ・ストーリーです。既婚の若いヒンズー教徒の女性とイスラム教徒の男性が宗教、人種、性別の違いを乗り越えて、あくまでもひとりとひとりの人間として心を通わせていくさまを描いています。また、インドは多言語国家でさまざまな文化が存在するところであり、調和を保ちながら共存していくことをさらに難しくしていることも伝えています。
現在でもグジャラート州では爆音が絶えませんし、国内のあちこちでも暴力行為が起こっています。これは非常にデリケートな問題なのです。この作品はふたつのシーンがカットされてしまったものの、大きな議論もなく検閲を通ったのは大変に幸運でした。事実、撮影中はいつ中止を申し渡されるかとひやひやしていました。
宗教や人種の違いから起こる暴力や問題が絶えない中で、この映画が異文化間の融和を図る運動に一役買ったのか、そしてどのように受け止められたかについてのご質問をいただきました。驚いたことに、この作品はヒットしました。インドでヒットする映画はメインストリームと呼ばれる商業映画で、歌や踊りの入った、スターが競演するヒンディー語映画が常ですから、違うジャンルで、そのうえ英語映画が4つの主要都市で3カ月も上映されたのは珍しいことです。しかし、果たして映画が異文化衝突を解決しようとする運動の一環になっているでしょうか。現在、製作される映画はカーストや宗教問題を避けたものばかりで、もしそのような問題が描かれている作品があっても、それをテーマに据えたもので、悪い意味でないのですが説教じみてきます。もちろん例外はありますが、人気の映画にはカーストを語らず、実体のない、ほとんど特徴もない登場人物が出てくるだけで、とくに裕福な人々が好んで描かれるのが現状です。
まだまだ新人で商業映画の経験もありませんが、「Mr.& Mrs.アイヤル」のような種類の映画にこれからも参加したいと強く思っています。
アジア・フォーカス福岡映画祭2003 当時のメールマガジンで速報された、コンコナ・センシャルマーのコメント
□□□Interview
□■■演ずることは、自分の文化を表現すること
□□□コンコナ・センシャルマー-母であるアパルナ・セン監督の作品「Mr.&Mrs.アイヤル」に主演。
-母語のベンガル語ではなく、初めて英語で演じた。次作ではアメリカ英語を
-使うため、近く渡米して勉強する予定だ。『福岡の町を歩いて日本食を食べ
-歩きました。肉がのっているドンブリ大好き!』何事にも好奇心旺盛な
-彼女は、初めての福岡も果敢に探求したようだ。母が非常に人気のある女優でしたから、その母と共演した「Indira」が私の映画初出演です。4歳でした。本当は男の子を捜していたのですが見つからず、私が髪を切って少年役を演じました(笑)。それから、9歳のときに母が監督した作品「Picnic」、16歳では祖父チダーナンダ・ダスグプタの監督作品「Amodini」にも出ました。母は『女優になりなさい』といっていましたが、私は考えてもいませんでしたね……。これまでに3本の作品に主役で出演しましたが、本当に女優をやろうと思ったのは「Mr.&Mrs.アイヤル」を演じてからです。インド国内の演技賞を受賞して勇気づけられましたから。今まで演じた中で、アイヤルのキャラクターがベストだったと思います。様々な経験をして、人間として大きく成長していく姿に魅力を感じました。脚本を読んだとき感動して涙が出たほどです。母親が監督でしたから、やりにくかったのではないかとよく聞かれますが、確かにたくさん叱られましたけれど、撮影は楽しくて一緒にやってよかったと思います。
実はこの映画のタイトルは、私のアイデアでつけました。リサーチのために主人公の出身地である南インドに滞在したのですが、その集落の名前がアイヤルでした。私はその村の女性として、そこの生活に2週間ほどどっぷり浸ったのですが、どこに行っても“アイヤル”という言葉を聞きました。それでひらめいたのです!(笑)。
ご存知のようにインドにはたくさんの言語があります。映画の中の主人公と相手の男性は、出身地が違うため言葉も違います。ですから、ふたりは英語でしか会話ができません。しかも、同じ英語でも私の話す英語とはまた違います。そのためどうしても言葉の勉強が必要でした。私はもともとはベンガル語です。インドの公用語はヒンディー語ですが、大都会では英語で生活できます。多くの人が2、3カ国語を話すなかで、たったひとつの言語でしか演じられないのは非現実的です。映画のストーリーが成り立つように、場合に応じて言葉を変えていかなくてはなりません。そういう意味で勉強は大切ですね。
私は女優としての正式な訓練を受けていませんから、演じるときは監督や共演者とよく話し合い、リハーサルを丁寧にするよう心がけています。そしてやはり、演技は自分の文化や習慣に因るものですから、それをきちんと理解することが大切だと思います。そのために必要なのは、心を開いてものごとを丁寧に見ることでしょうか。
この2、3年でやっと始まったばかりですから、これからどうしようかなどとは考えていませんが、旅行が好きで知らない国や映画を見たいから、すべての国際映画祭に参加したいですね(笑)。そのためにも意味のある映画、20年経っても自分がまた見てみたいと思う映画に出演したいと思います。今後、出演予定の作品が3本ありますが、今度もまた言葉が違います。ヒンディー語と英語を組み合わせた、トレンドのヒングリッシュやアメリカに住んでいたインド人が話すアメリカアクセントの英語……。また勉強です!
(2003.9.16 ソラリア西鉄ホテルにて)——————————————————————-
コンコナ・センシャルマー
女優でもある母アパルナ・センの監督作「Mr. & Mrs. アイヤル」(02)で、アイヤル夫人役を演じ、第50回インド・ナショナルアワード最優秀女優賞に輝く。
スクリーン・デビューは4歳の時。子役を経て、シュブラト・セン監督の「娘」(00)が初の主演作。その後、リトゥポルノ・ゴーシュ監督の「最初のモンスーンの日」(02)で母と共演。次回作はソナリ・ボース監督の「Ammu」で、アメリカで暮らすインドの娘役を演じる予定。この他、ホラー映画「Raat Akeli Hai」、NGOのメンバーを演じる社会派作品「Imaandaar」と企画が目白押し。「Mr. & Mrs. アイヤル」(02)
長距離バスの乗客を襲ったヒンズー教過激派から守るために、自分の夫だと偽り、写真家ラジャの命を救ったアイヤル夫人だったが‥‥。宗教による対立紛争を背景に、イスラム教徒とヒンズー教徒の男女の恋愛を描いた話題作。
(作品HPよりhttp://mrandmrsiyer.indiatimes.com/)
上映終了後、サインと記念撮影に気さくに応じてくれたコンコナちゃん。
「それであなたは、この映画気に入った?」(英語)と聞かれ、舞い上がっちゃって「いえすいえすいえすー!」ぐらいしか言えなかった自分が、今でも超クヤシイ(笑)
上映日前日にふと思い立って飛行機の予約を入れて東京から福岡に飛びました。監督や出演者に思い入れがあったからとかそういうわけでもなく、むしろ全然知らないのに突然観に行って、心を揺さぶられまくって、大号泣して。
当時インド映画鑑賞歴5年足らずながら、今まで観てきたインド映画の中の知識がいろいろと役に立ち、ちょっとしたシーンにいちいち共感しまくったりして。
そして、これを書いてる2016年の今でも、間違いなくこの映画は私のインド映画人生の中でベスト20とか10の中に入る、想い出深い作品に。
上映終了後のティーチインで、この映画は、とても社会性を帯びているのでいつ横槍やら爆破騒動になるか分からないので撮影が終わるまで一切内容等は秘密裏でいた、ということを話していました。
ちょうど、日本でもマニラトナム監督が【ボンベイ】を作ったことで、監督宅に爆弾が仕掛けられる騒動があったエピソードなども伝わっていたので、すごく腑に落ちたのと、そんな命がけでこの【Mr. & Mrs. アイヤル】を作ってたんだと衝撃を受けた(日本で今どき、こういう命がけ、って聞かないし…)のと、それを若い女優さんが淡々と話すのがこれまたびっくりでした。
それから印象的だったのは、「私はまだ俳優としてスタートしたばかりで下っ端だから、映画についてあれこれ言う資格もないし、来るオファーにえり好みしている場合ではないんです」と前置きして、いろいろとにかく今はいただいた仕事をひとつひとつ丁寧に取り組んでいきたい、という趣旨のことを話していたこと。ナショナルアワード受賞でもボリウッドに出て知名度が上がった、ということでもないしね、というふうに。
でも数年後、【Page 3】やら【チャンスをつかめ!】やら【Life in a… Metro】やら、いろいろとヒンディー映画に出てきたじゃないですか。
まああああー! コンコナちゃん、大出世だわ。すごいわあ!
…とおばちゃんは、細い目をさらに細めて、2003年秋に出会ったかわいい女優さんの成長を喜んだワケですよ(笑)
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2015年には、大阪のみんぱくでも上映されて、この映画が再評価されてきた感じですね。
この調子で、いつか、日本盤DVDになることを、のんびり待っています☆
それから、もうひとりの主演、ラーフル・ボースの映画、その後他の作品が日本の映画祭に上陸して、彼のこともすごく好きになっちゃったので、来日祈願してまーす。
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