Raavan (ラーヴァン) | マニラトナム インド映画

Indian Movies / インド映画の話

Raavan TIFF

東京国際映画祭(TIFF)の【ラーヴァン】を観てきました。
TIFFでは、シャー・ルク・カーンが出てないマサラムービーを上映するのは、ちょっと久しぶりかも?
(昨年の【チャンスをつかめ!】でさえ、SRKはゲスト出演してましたもんね)

で、マニ・ラトナム監督作品がアジアフォーカス福岡映画祭ではなく、東京のTIFFに来た、というのもちょっと新鮮。
だけど、9月はじめに、ヴェネチア国際映画祭で「監督ばんざい!賞」をマニ・ラトナムが受賞したし、受賞予定であることは、5月末に既に報じられてたから、もしかすると【ラーヴァン】(&タミル版【ラーヴァナン】)が今年は東京の映画祭にも来るかも?とは想像してましたけど。

でもさー、マニ・ラトナム監督はインド全域や世界での配給を意識してる方とはいえ、タミル映画を本拠地とする監督さんなのよ。何故【ラーヴァナン】も上映しないのだ!とタミル映画ファンとしてはちょっと憤りなんですが(笑)
でも、ヴィクラムが出演する映画が日本初上陸ですからね~、アビシェーク・バッチャンはほんとはそんなに興味ないけど、ヴィクラムが出てるんだから行っちゃうんだもんね!

(とはいえ、【デリー6】の翌日に【ラーヴァン】を観たので、結局は、両映画でのアビシェークの演技の違いとかを観るのも楽しみにもなってきましたよ。)

「ラーマーヤナ」の現代版翻案だ、ということで、前日まで山下博司先生の【ヒンドゥー教 インドという謎 】で「ラーマーヤナ」のあらすじとか読んでました。どういう翻案だ?というのも注目。

●●●

で、感想。

ヒンディー映画とはいえ、マニ・ラトナム監督が作ってるので、私がボリウッドをやや苦手とする理由となる、ヒンディーならではのコメディやキャラクター設定などでのイヤな感じが全くなくって、観やすかった。
(ワタシ、9月に観た【3バカに乾杯!】の冒頭のマーダヴァンが飛行機を止めるコメディでさえ、どうも受け付けなかったのだ!)

そして、舞台がインド、ってのもいいねえ。
へんな外国かぶれがなくって、いいですよ、私好みだよ(笑)

それから、全世界で活躍しつつあるとはいえ、撮影監督も南インドなサントーシュ・シヴァン
昨年も【タハーン ロバと少年】で美しすぎる映像を見せつけてくれたばっかりだけど、【ラーヴァン】もめちゃくちゃ美しい!

アイシュワリヤー・ラーイの極限の状態に置かれた中でのすっぴん(ちょっとはメイクしてそうだけど)の撮り方とか、流石♪
アイシュの演技も大したもんです。
私の目下、マニ・ラトナム監督作品の中で一番好きな映画【ザ・デュオ】(Iruvar)でアイシュはデビューしているけれども、あのときのお人形さんなだけのような存在感から、よくここまで成長したなあ、最初に演技力がなくても、本人の努力次第でここまできちゃうもんなのね、と結構感激しました。

ヴィクラムも、かっこよかったよ!
アイシュとの夫婦役、似合ってたよ。

アビシェークも、変な若者というところで、熱演していたと思う。

●●●

まあ全体的には、私好み。

でも、やっぱり、良くも悪くも、マニ・ラトナムなんだなあ。

インドが舞台で、外国かぶれしてないようでいて、結局海外に評価してもらいたいマニ・ラトナムさんは、どんどん観客を突き放して行っちゃうんだ。
そして、途中まではよくても、どんどん自分の世界に酔っていっちゃう。

(この辺が、同じタミル映画界で、マニラトナム監督と並ぶ名声を得ているシャンカル監督との決定的な違いだと、今回も思った!)

もう、ラストがいただけないよ。
(以下、ちょっとネタばれね)

【ラーマーヤナ】をそのままなぞるなら、ヴィクラムに疑われたアイシュはシーターとして、自分の身の潔白を証明するために身を投じるに準ずることをするはず。

ところが、アイシュは「列車を止めて降りて」、アビシェークのもとに。
(てっきり、列車が走る鉄橋の上あたりから身を投げるシーンでもあるものと思っていた!)

まあ、【ラーマーヤナ】に着想を得ているというだけだから、【ラーマーヤナ】と違ってもいいんだけどさ、それはそれとして。

でもそれが、ラーマ王子に相当するヴィクラムの仕掛けた罠だったとは!
(もし自分の不実を疑われた妻が、とっさに列車から身投げしてしまったら、元も子もないではないか。)

ラストの、とっくに致命傷を負っているアビシェークを更にがつがつ撃ち続ける野蛮なインドの警察!そのうえ、そのまま崖から落としちゃうとは!

警察が罪人を捕らえるのは当たり前だけど、現代において、問答無用で(相手が抵抗していないのに)射殺するなんて、野蛮すぎる。

しかも、妻の目の前で、妻の至近距離で。(妻にも弾が当たったらどうする?)

その前にも、穏便に交渉しようとして山を降りてきたアビシェークの仲間も警察が問答無用に撃ち殺してるし、マニ・ラトナム監督は世界に、自分の国の警察は野蛮だと知らしめたいとでもいうのだろうか?

このラストでは、きっとその後のヴィクラム&アイシュの夫婦関係は破綻するんだろうなあ。【ラーマーヤナ】と結末が違っちゃうじゃん、完全に。
違う結末だって、爽快感だとか充実感が残ればいいけど、そうじゃないんだもの。

●●●

古典叙事詩・ラーマーヤナの悪役である魔王・ラーヴァンを主役に据え、元の主役であるラーマ王子を悪役に解釈するという、大胆な翻案。
途中までは本当におもしろかったんだけどなあ。
ビーラーの妹役のプリヤーマニ(【ヤマドンガ】以来でプリヤーマニを観たけど、出番は少ないけど存在感あって、彼女の演技もすごくよかった!)のエピソードあたりまでは本当におもしろく見てたんだけど。
(前日の【デリー6】より、見入ってましたよ。)

でも、自分に酔ってしまった監督さんは、結局何を表現したかったんでしょう?
後味は悪いし、心も揺さぶられなかったです。

この映画での、A.R.ラフマーンの音楽も、仰々しくてちょっと煩い感じがしたなあ。
(音楽は【デリー6】の方が好みかな)

●●●

最後に、アビシェークが演じたビーラー。
タミル版では、これをヴィクラムが演じてるということですが。

アビシェークが登場して10分ほど観た時点で、この役は【Pithamagan】と【Bheema】でヴィクラムが演じた役を足して2で割ったようなキャラクターのような気がした。

だとすると、このビーラー役は芸達者なヴィクラムならもう、軽々と演じちゃうに決まってる。
たぶんアビシェークより、魔王ラーヴァンをもっと深みのある人物像に構築しているだろう。
それどころか、ヴィクラムのために用意された役だと言いかえてもいいかもしれない。
(比較されちゃうアビシェークも気の毒だけれども。。。)

まだタミル版を観てないれども、たぶん、タミル版の方が数段おもしろいんじゃないかと想像。。。

でも、【Pithamagan】も【Bheema】も、救いのない話だからね(笑)。
タミル版【ラーヴァナン】を観終わった後、どう感じるんだろうか???

コメント

タイトルとURLをコピーしました