Sankarabharanam (シャンカラーバラナム ~魅惑のメロディ) story

Movies / 映画の話

(字幕なし、または英語字幕鑑賞の手助け用として、ネタバレで最後まで書いております。)

3月10日に、山田桂子先生がこの映画について語ります!
2月10日分は今からでもアーカイブ配信でご覧いただけますのでどうぞ。(2月10日分をチェックしてから映画を観ると、理解が格段に上がりますのでお勧めです!)

2月23日20時~ Youtube同時再生会も予定されています。

Story

トゥルシは幼い息子を連れて、10年ぶりに帰郷した。
舟から降り、河辺で一夜を明かした翌朝、懐かしい男性の姿を見かけた。

トゥルシは、その彼のかつての栄光の姿を回想する。

この町には、高名な声楽家シャンカラ・シャーストリがいた。
コンサート(カッチェーリ)で彼の有名な「シャンカラーバラナム」を聴いたトゥルシは、彼の歌に合わせて踊ることを夢見ていた。

実はトゥルシは娼婦の娘で、母は娘を高く売るために古典舞踊や歌を習わせていたが、トゥルシの古典芸能への傾倒は純粋なものであった。

身分的にシャンカラとトゥルシが共演する、ということはありえないことであった。
しかし、ある日河辺で水浴びをしながら娘のシャーラダに歌を教えているシャンカラを見かけた折、トゥルシは思わず目の前で踊り出してしまった。その踊りを見て驚いたシャンカラはトゥルシを拒絶することなく接するのだった。

家に帰ったトゥルシは、地主にトゥルシーを水揚げすることに決めたと、母親から一方的に告げられる。
トゥルシは家を抜け出し、汽車に飛び乗った。するとそこには隣の州に招聘されていたシャンカラも乗り合わせていた。

シャンカラはそのままトゥルシを連れて列車を降りた。怪訝そうな表情を向ける伴奏者や関係者を意に介さず、シャンカラは彼女を旅先で連れて歩いた。
ソサエティから栄誉ある「銀の足輪」(シャンカラーバラナム)を贈られた時も、トゥルシは舞台袖で見守っていた。

トゥルシがシャンカラについて回っている噂は、地元にも伝わることとなり、母とおじが駆け付け、トゥルシを連れ戻した。
家に戻っても、部屋にシャンカラの写真を飾り、シャンカラのレコード盤に針を落とし、シャンカラに合わせて歌うトゥルシ。

しかしそこに地主が現れ、無理やりトゥルシを手籠めにした。その上、「事は終わったから、この男の所へ行きたければ行っていいぞ」と暴言を吐き、シャンカラの写真立てを蹴りとばした。
シャンカラへの侮辱にトゥルシは思わず、写真立ての割れたガラスの破片で、地主の背中を刺していた。

助けを求めシャンカラの元に飛び込んだトゥルシ。シャンカラは友人の弁護士をたて、トゥルシの無罪を勝ち取らせると、母親を売春罪で投獄させた。
シャンカラはトゥルシを自分の家に連れ帰った。
娼婦の娘を家に入れるとは!とシャンカラ邸の使用人は暇をとり去ってしまう。
カーストなど関係ない、と言い切るシャンカラに、尊敬の意が高まるトゥルシ。

しかし寺院でシャンカラが歌を奉納する際、トゥルシがタンブーラの位置につくと、伴奏者をはじめ皆が次々と席を立ってしまった。
一人きりで毅然と歌い上げるシャンカラ。

柱の隅でそれを聴くトゥルシは、自分のせいで師の地位や栄光を貶めていることを痛感し、この家を去る決心をする。

舟で異郷の地に辿り着いたトゥルシは、身籠っていることに気付く。
病院を後にして乗ろうとした馬車の壁に、シャンカラのポスターを見つけたトゥルシ。

師の回想から我に返ったトゥルシは、シャンカラの沐浴後に残した足跡に祈りを捧げた。
この10年の間に世間は現代的な音楽にあふれ、インド古典音楽は押されていた。
頑固に昔のままの姿勢を貫いているシャンカラの生活は困窮していた。

トゥルシは何とかして、恩師シャンカラを助けたいと、息子を孤児と偽らせてシャンカラ邸に行かせる。
師にちなんで「シャンカラ」と名付けた息子は美声の持ち主で、シャーラダの関心を引く。やがてシャンカラも弟子と認め、小さな弟子と共に古典音楽への熱意を新たにしていく。
その息子の歌に師へ思いを馳せながら踊るトゥルシ。

かつてトゥルシを無罪にした弁護士夫妻がシャーラダを寺院詣でに誘った。
寺院の階段でシャーラダは祖母と来ていた青年教師と出会い、お互いに魅かれるものを感じる。

トゥルシは買い物をしていた折、シャンカラが隣の雑貨屋で借金を申し込んでいるところを聞いてしまい、彼の生活のひっ迫ぶりを改めて知る。
シャンカラは帰り道、ムリダンガム奏者のゴーパーラムが音を間違えているところに通りかかり、声をかける。現代音楽におされ、カッチェーリの機会も減りお呼びがかからず生活が苦しいとこぼすゴーパーラムに、先ほど雑貨屋で受け取ったお金の一部を渡すのだった。

偶然弁護士に会ったトゥルシは、母が亡くなりその遺産が残されていることを知るが、「私は遺産は要りません。自分の力でも稼いでいるし。自分のせいでシャンカラ様があんなことになったのに」と言う。弁護士は「ならばなぜその遺産を善いことのために使わないのか?」とある提案をする。

弁護士はシャーラダの縁談を強引に決め、相手を連れてきた。その相手はなんと、寺院で会った青年教師だった。
顔合わせで歌を披露するシャーラダだったが、喜びで高揚するあまり、歌い方を誤り、シャンカラの怒りを買う。シャンカラはフォローしようとする青年をも、音楽への冒涜だとののしり、追い返してしまう。
弁護士はこれでは娘が嫁ぐことができなくなってしまう、とたしなめる。

数日後、寺院で神に祈りを捧げ歌う青年をみかけたシャンカラは、二人のことを認めることにした。

結婚式のために金策に向かうシャンカラより一足先に雑貨屋に出向いたトゥルシはシャンカラの借金を返済し、さらに余分にお金を店主に託し、彼に絶対に私のことを言わないでと告げた。
直後に来店したシャンカラは借金の質に「銀の足輪」を差し出そうとするが、店主は断るのだった。

結婚式の日、トゥルシの寄付で音楽ホールも建立され、こけら落としでシャンカラが歌うことになる。
「このホールを贈ってくださった、匿名の音楽愛好家の方に、心から御礼を申し上げる。西洋音楽におされたインド古典音楽だが、この芸術は滅びることはない」と壇上でのシャンカラの言葉に、隠れてひっそりと見守っているトゥルシは涙する。弁護士は彼女にそっと目配せをする。

歌い出したシャンカラを突然心臓発作が襲う。一度は演奏が止まった中、トゥルシの息子シャンカラが飛び出し、美しい声で続きを歌い出す。その息子の向こうに佇むトゥルシの姿が目に入ると、シャンカラは全てを悟る。
壇上にかけつけようとする医師たちをシャンカラは手振りで制すると、その歌声を穏やかな表情で聞き入るのだった。

歌い終わった息子に、シャンカラは自分の銀の足輪を着けてこれからの古典音楽の未来を託すと、そのまま倒れた。
壇上にかけつけたトゥルシも、シャンカラの足元で息絶えるのだった。

【参照】

「インド映画スーパーバザール 春」(1985年) パンフレット
「インド映画祭2003」 パンフレット

原題
「シャンカラ」+「アーバラナム」。
「シャンカラ」はシヴァ神の別名、「アーバラナム」は首飾りなどのジュエリー。
●いつもシヴァ神(シャンカラ)の首に巻き付いているヘビ~いつもシャンカラに献身するしもべのトゥルシー のことを指す。
●映画で出てくる「銀の足輪」のことも指す。
●インド古典音楽のラーガ(旋律を構築する規則)のひとつ。

歌に関するNote
2020年にコロナで逝去した国民的歌手S.P.バーラスブラマニアムの歌唱。
【’96】でヒロインが敬愛しているS.ジャーナキも歌っている。

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