Title : Porkaalam (ポルカーラム 愛のたからもの) (1997年 Tamil 160分)
Director : Cheran(チェーラン)
Music : Deva(デーヴァー)
Starring : Murali(ムラーリ), Meena(ミーナ), Sangavi(サンガヴィ), Rajeswari(ラージェシュワリ)
社会派で芸術的な映画を撮ることで評価の高い、チェーラン監督の2作目。
小さな村でハンディキャップを持つ妹と暮らす陶器職人の主人公。妹想いの彼に想いを寄せる娘が二人。
障害者への差別・偏見問題に切り込んだ傑作。日本では考えられない、インド社会ならではの物語。
ミーナの神憑りな美しさや凛とした佇まいの演技と、時にコミカル・時にシリアスなヴァディヴェールの名演技も大必見。
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出演者
Murali … Manikkam
Manivannan … Ramaiah(マニカムの父。飲んだくれ)
Rajeswari … Panchavarnam (マニカムの妹。聾唖者)
Vadivelu … (マニカムの家の使用人。カースト外(?)であるが、パンチャヴァルナムのよき理解者)
Sangavi … Muthamma (ラマイアの妹の娘。マニカムのいとこ。マニカムにぞっこん)
Meena … Maragatham (機織職人の家の娘。マニカムに惹かれている)
Delhi Ganesh … (マラガダムの父)
… C.R. Saraswathi
Song
♪Chinna Kanang
♪Karuvela
♪Oonam Oonam
♪Singucha
♪Thanjavuru
Note
Bhimsinghの傑作【Paasamalar】から一部ヒントを得て制作。
カナダでの上映時間は150分、とIMdbに記載。(10分カット?)
妹役・ラージェシュワリ
新人の彼女は、【Chinna Thaai】という映画で、Padmashreeという芸名でデビューしたが、話題にならずに終わった。
チェーラン監督がムラーリのハンディキャップを持った妹役を探していることを知り、面接を受けた。. チェーラン監督とプロデューサーのKaja Moidheenは一目で彼女を気に入り、テストで伝統的な村娘のような化粧を施した。(原文: they did put her through a grueling make-up test where her face, hands and legs were kari pooshi-fied and her hair drenched in oil to give the traditional village girl look.) テストは合格、妹役を獲得した。
チェーラン監督は、彼女の運が良いほうに変わるよう願い、芸名をパドマーシュリーからラージェシュワリに変更させた。
【ポルカーラム】はチェンナイや各地で大成功し、ラージェシュワリはたちまちたくさんのオファーを受け、全て妹の役ではあるが8本ものタミル映画の契約にサインした。(indolinkの1997-98デビューの新人特集ページより)
作品の現地での評価等
◆ディナカラン紙映画賞1997 でチェーラン監督が最優秀監督賞を受賞。
◆タミルナードゥ州政府映画賞1997 でミーナが最優秀女優賞を受賞。最優秀映画賞では次点。
◆【Sivakasi】(2005)制作時のペーララス監督のインタビュー。どんな映画を作りたいですか?との問いに対して(rediff 2005.10.31)
I have lots of such emotional love stories with me, which can be made into commercial films. Producers want only commercial ventures. Even today, I love Mani Ratnam’s Mouna Raagam, Antha Ezhu Naalkal, Cheran’s Porkalam and Thankar Bachan’s Azhagi.
あらすじ
マニカム(ムラーリ)は土で陶器や馬の置物などを作る職人。彼はばくち打ちで飲んだくれな父ラマイア(マニヴァンナン)と聾唖者だが元気で素朴なパンチャヴァルナム(ラージェシュワリ)という妹と3人で暮らしている。
マニカムはパンチャヴァルナムをとても愛しく思っている。
兄として、ハンディキャップを持とうと、妹にいい男性を見つけて嫁がせたいと願っている。
が、父ラマイアは障害者である彼女に何かとつらくあたる。そのたびにマニカムは妹をかばう。
また、好奇の目をした村の人々がパンチャヴァルナムについて時々心ない言葉を発したりすると、マニカムは激昂しすぐに彼らを打ちのめすのであった。
マニカムの家には、とても陽気な使用人(ヴァディヴェール)がいる。
マニカムは妹の縁談を決めることはとても困難であるが必ず成し遂げるとヴァディヴェールとよく会話し、ヴァディヴェールも応援していた。
近所に住む、マニカムの従妹ムッタンマ(サンガヴィ)は、マニカムへの恋心をいつもストレートにぶつけてくるが、マニカムは取り合わない。
マニカムは、機織職人の家の娘マラガダム(ミーナ)に恋心を抱き、口にはしないが彼女の織る機織機の音を聞いては想いを馳せていた。そしてマラガダムも口にはしないが同じ気持ちだった。
ムッタンマは、振り向いてくれないマニカムとどうしても結婚したいあまり、母親を説得し、マニカムがムッタンマと結婚してくれたら、ドゥバイに住むムッタンマの兄とパンチャヴァルナムの縁談も進めるとマニカムの家にもちかける。
やがてドゥバイの兄から、縁談を承諾したとの報を受け、喜ぶパンチャヴァルナム。
それを見てうれしく思うマニカムだったが、その反面、その縁談の成就は、自分とマラガダムの恋が終わることでもある。
マニカム、そしてマラガダムも苦しい想いの日々が続いていた。
やがて兄ラース(?)がドゥバイで事業を成功させ、村に戻ってきた。
兄は、パンチャバルナムと対面するや否や、結婚を承諾していたが障害者の娘だとは聞いていない、と縁談を破談にしてしまう。
ショックにうちひしがれるパンチャヴァルナム。
マニカムは、パンチャヴァルナムに絶対にラースよりもっといい人を見つけてやる!とやっきになった。
そして、マラガダムと想いをお互いに打ち明けたものの、妹を嫁がせるまでは自分は結婚しない、と言う。
しかし、マニカムが意固地なまでに妹の結婚を決めようと駆け回るが、状況は空回り、のんだくれの父にも裏切られる。
マラガダムはマニカムとの結婚を待ち続けているが、とまどいを隠せずにいる。
そして、ずっとマニカムもパンチャヴァルナムも見守っていた使用人ヴァディヴェールは、マニカムにあることを訴える。
“oor onnum odhungaladaa… othukkaravangaLa nee dhaan odhukki vechirukka… un thangichikku raasaa maadiri mappillai vaeNumnu ninaichiyae thavira, ennai maadiri asingama irundhaalum paravaa illainnu thoNichaa… indha maadiri thangachi irukkira un manasuliyae oonam irukkumbodhu mathavangaLa solli ennadaa prayOjanam…”(※後日分かれば訳します。)
一方で、失意の兄を見ていた妹は、「自分さえいなければ…」
コメント
★初めて観たときの日記(2006.1.29)
1999年頃の、某インド映画の配給権問題のごたごたの中で恐らくは、日本ロードショーが現実になる手前でストップしてしまった作品。
巷では「インド映画は必ずハッピーエンドになる」と解説されていましたが、この映画が予定どおりに公開されていれば、世間のインド映画に対するステレオタイプな評価はもっと違うものになっていたのではないかと思います。
マサラムービーながら社会派、障害者への偏見を捉えた作品で、日本公開されたものとしては、マニラトナム監督の【アンジャリ】あたりと同じカテゴリーに属すのでしょうか?
【アンジャリ】は、知恵遅れ気味で虚弱体質の子供・アンジャリが笑顔で周りを変えていけたけれど、この【ポルカーラム】での口のきけない妹は、本人はとても健気に生きているのに、徹底的に浮かばれません。
美しいインドの村の情景が画面いっぱいに広がるのに、ちょっと幸せを感じては、次には絶望、といった連続。
妹の幸せを願うばかりに、世間とどんどん隔絶しかけていく主人公。
なぜそんな考え方をするのか、なかなか日本人の私には理解できず、違和感があったのだけど、最後の30分でそれはガラッと変わります。
それは、なんといっても、今回の映画での最功労者・ヴァディヴェールの演技です。
本当にこの人は、コミカルな演技もシリアスな演技も、そしてダンスもうまい!
暗い主題の映画ですが、彼の明るさで娯楽作品としての見応え感を引っ張っています。
また、ミーナ!
【ムトゥ 踊るマハラジャ】の2年後の作品になりますが、美しさに更に磨きがかかり、それでいてかわいいだけじゃない存在感と、クライマックスの凛とした佇まいの演技は最高です。
また、ダンスがバリバリにマサラムービーで、セクシーです。
サンガヴィもとってもいいし、ラージェシュワリもいい。
主演のムラーリも意固地な演技がいじらしい。
あまり手元に資料がないため、詳しい言及ができないのですが、もしシナリオ集とか出ていたら、ヴァディヴェールの台詞とかタミル語でちゃんと読んでみたいです。
他の役の人の台詞も、それぞれにとても印象的なものがたくさんありました。
観終わって、日本じゃ考えられない思想の結末ではあったけれど、だからこそこの映画を観られてよかったと思いました。
まだ一度しか観ていないので、分からない部分だらけですが、日本に紹介された現代もの(1990年代あたり~)のマサラムービーの中では私の中では間違いなくベスト5に入る傑作。
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